NASCARレースのマシン製作現場に潜入!空力性能を追究しコースごとにボディ形状が違う

NASCARレースのマシン製作現場に潜入!空力性能を追究しコースごとにボディ形状が違う

唯一の日本人オーナーのファクトリーを取材

 アメリカでもっとも人気のあるストックカーレース「NASCAR(ナスカー)」。服部茂章監督&オーナーである「HRE(HATTORI RACING ENTERPRISES)」は、ナスカーで唯一の日本人オーナーチームだ。さらに昨シーズンは、日本人チームとしてはナスカー史上初のシリーズチャンピオンを獲得。そのようなHREのファクトリーの内部を見せてもらうことに成功した。

 アメリカ・ノース・キャロライナ州のシャーロットという街は、リーマンショック後のバンク・オブ・アメリカの進出を機に、マンハッタンに次ぐアメリカ東海岸第2の金融都市として生まれ変わっている。

 しかし、昔から変わらないのは、NASCAR(ナスカー)の街である。そこにはNASCARの本部が置かれ、シャーロットの街の周辺にはレースに参戦するほとんどのチームが居を構える。街はずれにはシャーロット・モーター・スピードウェイ(1周1.5マイルのオーバルコースやロードコース、ドラッグコースを持ち合わせる)があり、そこでは1990年に公開となった映画「デイズ・オブ・サンダー」の撮影も行われた。

ナスカーに参戦するHREのファクトリーを取材 シャーロット北にはノーマン湖があり、これにほど近いムーアズビルという街にも多くのナスカーチームが居を構えている。その一つに2008年に服部茂章氏が立ち上げた「Hattori Racing Enterprises(HRE)」がある。

ナスカーに参戦するHREのファクトリーを取材 その住所はムーアズビルのノブヒル・ロード161番地。実はこの住所にも服部代表のこだわりがあり、わざわざこの番地の変更をして登録しているのだという。その理由は、MLBで日本人として初めて成功した野茂英雄選手の背番号「16」にあやかって付けている、という。

 それゆえ服部代表がナスカーのトラックシリーズに参戦するトヨタ・タンドラで使用するゼッケンが16であり、先日デイトナ・インターナショナル・スピードウェイでの「Coca-Cola Firecracker 250」に挑戦したスープラは61号車だ。

 

スペアも含めると10台のマシンが必要

 そのワークショップは、国内のGTワークスチーム並みの広さだ。建物内に入るとこれまで獲得してきた数々のトロフィが並ぶ待合室、さらに服部代表の執務室など様々な部屋が並ぶゾーンがある。そして多くのクルマが並ぶワークスペースのゾーンがある。

ナスカーに参戦するHREのファクトリーを取材 ちょっとした体育館のような広さのスペースには、ラッピングをはがされたNASCARタンドラが並ぶ。現在、HREでは10台のタンドラ、そしてK&N Pro Series East用の2台のトヨタ・カムリ、さらにスープラを1台所有しているという。

ナスカーに参戦するHREのファクトリーを取材 これだけの車両が並ぶのは壮観だが、なぜにそんな台数が必要なのか? と考える向きも多いだろう。その秘密は、ボディワークを見ればわかる。

ナスカーに参戦するHREのファクトリーを取材 ナスカーで使用するサーキットは、ロードコース、ショートオーバル、インターミディ・オーバル、そしてスーパースピードウェイ。ロードコースは、いわゆる日本人の多くが想像するくねくねと曲がっている、いわゆるサーキットのコース。そのほかの3つはオーバルという楕円形のコース。日本でいえばツインリンクもてぎにあるスーパースピードウェイ(現在はオーバルコースとして使用されることはないが…)のようなコースだ。スーパースピードウェイとは1周1.5マイル(2.414km)以上の大きなコース。一方のショートオーバルはハーフマイル(1周1kmに満たない)と非常に小さなコースである。

ナスカーに参戦するHREのファクトリーを取材 このオーバルの長さの異なるコースによってボディワークも異なるのだ。ボディタイプで4種類あり、それに対して予備のマシンをそろえるだけで計8台。さらに予備のマシンを入れれば、10台というのは決して多くはないという。

ナスカーに参戦するHREのファクトリーを取材 ボディワークの特徴をボディサイドを見るとわかりやすい。まず、スーパースピードウェイ用で使用するマシンのボディサイドはまっ平らに近い。それに対し、ショートオーバル用は、ボディサイドがえぐれている。これは、サイドの空気の流し方が非常に重要となるからだ。さらにボディ左右でその曲面は異なる。左回りのオーバルでは、タイヤだけでなくボディもより左側へ入っていけるようにボディメイクから変える必要があるというのだ。ボディ側面以外にもルーフであったり、さまざまなところで見妙な微調整が行われているのだ。もちろん、これはナスカーの規定内で各チームが施している微妙な調整の範囲の中にある。

ナスカーに参戦するHREのファクトリーを取材 数多く並んでいる車両を見てわかる通り、車両の特徴となるフロントフェイスおよびバックパネル、そしてボンネットは、TRD-USA製だが、ボディはチームが鉄板から作り上げている。NASCARが定める規定サイズで車両を製作しているが、その範疇でさまざまな細かなところの磨き上げが行われている。それらの細かな積み重ねによって強い、勝てるマシンが仕上げられるのだ。そして、このHREはチャンピオンを獲れるマシンを仕上げられる強いチーム、なのである。


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