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新車価格の10倍も! 昭和時代の国産“お宝”バイクが人気再燃で大高騰

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TEXT: 宮田健一  PHOTO: 宮田健一

ホンダ・CB1100R(RD)には700万円の中古車も存在

 CB1100Rも今やプレミアムなバイクです。1970年代後半に、ワークスマシンRCB1000を擁しヨーロッパの耐久レースを席巻し、「無敵艦隊」と異名を取ったホンダが、その技術をフィードバックして1978年に発売した公道用市販車がCB900F。

 CB1100Rは、それをベースに、ヨーロッパなどで盛んだった、市販車を改造して出場するプロダクションレース用に作られたマシンです。初代のB型が1981年に発売、写真の最終D型が発売されたのは1983年のことです。

 CB1100Rは“公道を走ることができる車両”として、ヨーロッパなどの海外専売車として発売されましたが、これは「市販車をベースに限られた改造範囲で」という、現地のレース・レギュレーションに合わせるため。ですが、新車のときから中身にはレース用パーツをふんだんにつぎ込んでいて、実質的にレーシングマシンといっていい内容のオートバイだったのです。

 そのため、新車で約250万円という高価格が設定されたのですが、これが予想外の大人気に。生産台数も市販車として認められる1000台をちょっと超える1050台と限られていたのもコレクター魂に火を点けてしまいました。当時の日本にも少量が逆輸入されましたが、わずかな台数だったようです。

 B型のヒットを受けて、翌82年にカウル形状を大きく改めたC型、83年に最終型のD型が作られましたが、やはり各1500台ずつの限定生産。「新車当時から生粋のプレミアムバイク」、それがCB1100Rだったわけです。

レースに勝つためコストは度外視

 当時としてはまだ珍しい、クリップオンのセパレートハンドルを装備したコクピットまわりは「非常にレーシー」と大好評。油温計も装備していました。カウルはFRP+カーボン製でタンクはアルミ製と、現在で見ても非常にコストのかかる作りとなっていましたが、これは本気でレースで勝つことを考えていたマシンであることの証でもあります。

 エンジンは、CB900Fの空冷直列4気筒をベースに、「勝てる」仕様にするためにチューンナップされています。排気量は1062ccに上げられ、強化コンロッドやクランクシャフトなどが組み込まれていました。

 初期型では115psだった最高出力はC型から120psにアップし、最高速は220km/hから245km/hへと一気に伸びました。CB1100Rは1台ずつエンジニアが手で組み立てたという、これまた贅沢な生産方法を取っていたのも有名です。

最もお宝なのは最終D型

 そんなCB1100Rですが、旧車市場で最もお宝とされているのは最終型のD型。勝つために生まれたレース用マシンという生い立ち上、その熟成された完成形態という位置づけになっているからです。もっとも新車当時から本当にレースに使うオーナーは限られていたそうです。

 お宝なので、大事に乗りたいという人が多かったのです。現在の相場価格に関しては、もう「ASK」の一言。700万円という値段になることもあります。

 ちなみに、C型とD型はぱっと見でそっくりですが、見分けるポイントはふたつあります。ひとつめはカウルとフロントホイールのアクスルシャフトとの位置関係。D型はカウル先端がアクスルシャフトより後方となっています。C型では前に出ていました。これはレースレギュレーションの変更に合わせたものです。

 ふたつめは、スイングアームの形状。D型は現代のようなボックスタイプ、C型以前は丸パイプとなっています。ただ、B型からD型まですべて生産数が少ないため流通台数もわずか。欲しい人が入手したらそうそう手放すことはないですし、まさに夢のマシンと呼べるのがCB1100Rなのです。

 

ホンダ・CBX400Fは新車価格の4倍

 ヨンフォアことCB400Fを1977年に生産終了させたホンダは、しばらく「中型クラスには4気筒より2気筒が適している」と唱え、ホークシリーズを展開していました。

 しかし、1979年にカワサキがZ400FXを発売するや市場では4気筒ブームが到来。これを受けてホンダも、再び並列4気筒マシンを投入することになります。それが1981年に登場したCBX400Fでした。

リア1本サスでスポーティさを強調

 リヤ2本サス仕様のZ400FXは、70年代にカワサキが海外で主力とした1015ccのZ1000Mk-IIから続く1970年代的スタイルでした。

 それに対しCBX400Fは、スポーティなヨーロピアンスタイルで、レーシーなどで採用されたリヤ1本サス、アルミ製スイングアームなどを装備し、1980年代にふさわしい“新しさ”を持っていました。

 ホンダ中型4気筒の復活を待ち望んでいたライダーたちをはじめ、多くの若者たちがCBX400Fに熱狂。普段の足からツーリング、そして当時流行したサーキット走行やレース参戦に至るまで、大いに青春を共にしました。

 当時のホンダの広報リリースを見ると、販売計画に月間5000台という数字が踊り、製造終了までの約3年間で6万台以上が生産されたというから驚きです。

 それだけに、当時を懐かしむライダーを中心に今もCBX400Fは大人気です。旧車市場では、お宝バイクを代表する1台に数えられることとなっています。

 新車価格が単色で47万円、ツートンが48万5000円(共にI型)だったのに対し、現在の中古相場価格はなんと200万円以上! 6万台以上が作られたCBX400Fですが、もう約40年も前のバイクですし、中型バイクという性格から乗り潰されてしまい、程度のいい車両の現存数はそんなに多くはないからです。

 現在でも、あまりに人気のためバイク泥棒に狙われやすく、盗難保険に入れないバイクとして報道されたこともあるほどですが、ショップによっては加入することもできるので事前にしっかり確認しておきたいところです。

80年代を意識させる進化

 CBX400Fのエンジンは、排気量399ccの空冷並列4気筒。逆回転クランクやオイルクーラーといった当時新しかった装備を持つエンジンは1万回転以上回り、48psを1万1000rpmで発揮。Z400FXの43ps/9500rpm以上の高性能を誇っていました。

 また、車重でもZ400FXより10kg以上軽く、80年代にふさわしい進化ぶりを見せていたのが特徴です。マフラーのエキゾーストパイプは1・2・3番と4番がクロスする独特の取り回しとなっていました。

 足まわりも新しさが光っていました。ホイールには、当時ホンダ車の多くに採用された軽量・高剛性のブーメランコムスター、前輪にはインボードディスクブレーキも組み合わされていました。

 特に、ブレーキは独特で、制動力は強力だがサビやすい鋳鉄ブレーキディスクをカバーで覆い、雨などで濡れることを極力低減するといった機構でした。また、カバーには冷却用のエアダクトも設けられ、高い制動力と耐久性の両立が図られました。

 さらにフロントフォークにはブレーキング時のノーズダイブを抑える「TRAC」機構、リヤにはレースなどからフィードバックされたプロリンク式モノサス(1本式ダンパーをリンク式マウントで車体に取り付ける方法)など、最新機構を随所に盛り込んでいたのでした。

人気のために異例の再生産も

 1983年末に後継のCBR400FにバトンタッチすることとなったCBX400Fですが、その後も人気が衰えることがなく、ホンダは1984年に異例の再生産を行いました。通称II型と呼ばれるモデルがそれにあたります。

 旧車市場ではII型の方が重宝されていますが、その理由は搭載エンジンが後継モデルCBRで改良されたタイプがベースで、熟成が進んでいるためです。

 また年式が高いため、それだけ状態が良いということもあります。加えて、再生産は1年間のみで、I型と比べたら生産台数が圧倒的に少なく希少性が高いことも人気の秘密のようです。

 I型とII型は外見でも微妙に異なっており、2か所で見分けることが可能。ひとつめはメーターハウジングの厚みで、II型の方が少々厚くなっています。もうひとつはシリンダーヘッドの後部で、II型にはボルトの下にちょっとした出っ張りがあります。「II型はCBR400Fエンジンをベースにしている」といわれる所以はここです。

 CBR400Fでは、エンジン回転数に応じて2バルブ→4バルブに切り替える新機構=REVをこの箇所に装備していました。CBX400Fは4バルブ固定で、REVの採用はなし。ということで、II型用エンジンは、再生産をするときにREV装着箇所を埋めた跡が残っています。

 

 なお、熟成されたII型の方が速いという説もありますが、実際にI型とII型の両方に乗った人の話ででは、違いはあまり感じられないとか。II型の高値は程度の良さと数の少なさが大きなファクターになっているようです。

 名車バイクの購入者は、比較的年齢層が高い人たちが多いのですが、結局のところ旧車市場でお宝になる車種は、当時多くの人が『青春時代を共に送った、または憧れていたバイク』であることが多いようです。

 そのため、例えばZ1のような逆輸入車の場合、同じ車種でも近年に逆輸入されたものより、憧れていた当時(昭和)に国内で初登録されたものの方が重宝され、価格も高くなります。

 バイクを通して青春時代を振りたい……そういった思いが強い人たちにとって、これら名車たちの価格がかなりプレミアムだとしでも、少しも惜しくないようです。

【詳しくはこちら】
車両撮影協力:ウエマツ https://www.uematsu.co.jp/

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