「純正タイヤと市販タイヤ」同じ銘柄なのに性能が違うのはなぜ?

「純正タイヤと市販タイヤ」同じ銘柄なのに性能が違うのはなぜ?

特別のOEM仕様か、万人向けのリプレースか

 国産車の場合、純正装着される「OEM」のタイヤが市販の「リプレース」タイヤとして売られることは少ないので、OEMと統一銘柄のタイヤを量販店で買うというケースは考えにくい。一方で輸入車はリプレースタイヤとして市販されるタイヤが、OEMとして装着されているケースが少なくありません。ここでは、OEMとリプレースタイヤの違いについて考えてみたいと思います。同銘柄のタイヤなのにOEMとリプレースタイヤ 欧州ではOEM専用タイヤというのがほとんどありません。自動車メーカーはタイヤメーカーと共同で新車開発を行ない、そのタイミングでタイヤ開発が行なわれます。完成したタイヤは、リプレースタイヤとしては販売されることになります。

 では、クルマの開発と新型タイヤの開発が間に合わなかったときはどうするのでしょう。じつは、そんな場合でも新車開発とタイヤ開発は並行して行われるのです。この場合、既存タイヤをベースにクルマに合わせたチューニングを施し、新車とのマッチングを図ります。同銘柄のタイヤなのにOEMとリプレースタイヤ

 数年前に面白い体験をしました。ポルトガルのエストリルサーキットで行なわれた「ピレリP-ZERO」の試乗会に参加した時のこと。いわば、最新のピレリP-ZEROのワールドローンチでした。この時、ピレリはセミオーダーで「P-ZERO B」の開発を行なうというアナウンスをしたんです。これまでインチアップ、超偏平を売りにリプレース市場に力を入れてきたピレリですが、今後はOEM用に力を入れるという方針に転換したのでした。同銘柄のタイヤなのにOEMとリプレースタイヤ

 もちろんこれまでも個別にチューニングを施し、マッチングを図っていたのですが、それをタイヤ開発のシステムとして本腰を入れて行なうということ。試乗会でポルシェ・ターボとランボルギーニ・ガヤルド、アウディR8に順番に試乗するチャンスがありました。3台のうちポルシェ・ターボのみ、フロントタイヤが1サイズ太かったのですがそれ以外は同一サイズだったのです。同銘柄のタイヤなのにOEMとリプレースタイヤ

 つまり「クルマによってチューニングが違うので、それを体感してください」というわけです。試乗してみると、3台に装着されたP-ZEROそれぞれ全く違うキャラクターに仕上がっていたのです。

 ポルシェは圧倒的にトラクション性能が強く、アンダーステア気味にグイグイとクルマが前に進むセッティング。ランボルギーニは、ステアリングの応答が鋭く、シャープれ切れ味のいいセッティング。R8はスライド気味であり、クルマが真横を向いても、まだコントロールが効くのではないか、というくらい自由自在のコントロール性を持っていました。同銘柄のタイヤなのにOEMとリプレースタイヤ じつは、P-ZEROはトレッドパターンが同じでもビードワイヤーの太さやビードフィラーの厚みや高さ、プライ(骨格)設計、コンパウンドに至るまで、それぞれ数タイプを用意。クルマに合わせたチューニングができるように、タイヤが作られていたのです。

 さらにP–ZEROは、スポーツカー用とハイパフォーマンスサルーン用という、2種類のトレッドパターンまで用意。ありとあらゆるハイパフォーマンスカーに対応できるようになっていたのでした。極端な例ではありますが、これに限りなく近いチューニングを、欧州では自動車メーカーとタイヤメーカーの間で行なっているわけです。同銘柄のタイヤなのにOEMとリプレースタイヤ

 

キャラクターは違えど広範囲な車種に対応

 特に欧州は、クルマとタイヤのマッチングを非常に重視しているのも事実。特にプレミアムブランドの装着タイヤは専用の刻印が打たれており、BMWなら”☆”マーク、ポルシェはNコードと呼ばれる”N”の刻印、メルセデスベンツは”M”マーク、アウディならば”AO”、RSモデルには”RO”の刻印があります。同銘柄のタイヤなのにOEMとリプレースタイヤ

 でも、刻印がないメーカーでも専用タイヤを用意してます。例えば、フォルクスワーゲンには専用タイヤの刻印はありませんが、ディーラーで購入するとリプレースとは異なる専用タイヤが入手可能。乗り心地、転がり抵抗、グリップ、応答性といったチューニングがばっちりハマっていて、ビックリするくらいの相性の良さだったりするのです。同銘柄のタイヤなのにOEMとリプレースタイヤ

 もちろん国産車のOEMタイヤも、自動車メーカーからの要求性能に即して開発。明らかに安さがウリでコストダウンしているクルマは別にして、最近では軽自動車でも転がり抵抗やノイズ、乗り心地といった性能を持つタイヤがOEM装着されるケースが多くみられるようになりました。同銘柄のタイヤなのにOEMとリプレースタイヤ

 では、「リプレースタイヤは必要ないじゃないか…」と思われるかもしれませんが、これは国産タイヤメーカーがわかりやすいと思います。例えば『ポテンザ RE71RA』や『アドバン・ネオバAD08』、『ディレッツァZIII』といったハイグリップタイヤをはじめ、レグノ、アドバン・デシベル、ヴューロVE304などプレミアムコンフォートタイヤといったように、タイヤ自体が個性的なキャラクターを持っているのがリプレースタイヤの特徴です。

 もちろん価格の安さや転がり抵抗も売りになりますから、そうした万能性を持つタイヤはリプレースのほうが選びやすいわけです。同銘柄のタイヤなのにOEMとリプレースタイヤ

 ですからバランスの良さで選ぶならOEMがオススメ(例外もある)。逆に何かタイヤに個性が欲しい、乗り心地など愛車の不満を良くしたいといった希望があるなら、リプレースを選ぶ意味があると思います。

 もし、同銘柄のタイヤが安く売っていたとしても、OEMとは別物と考えたほうがいいでしょう。似たような乗り味は出ると思いますが、ぴたっとフィットする感触は味わえないかもしれません。というようなことを知ったうえで、あえて安いリプレースを選ぶという選択もなくはありませんよ。

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