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世界一のエンジンメーカーの真骨頂! 60年代にレッドゾーン9500rpmユニットを積んだS600の衝撃

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: 本田技研、日産、トヨタ、自工会、Auto Messe Web編集部

タコメーターのレッドゾーンは9500回転から刻まれていた!

 さて、S600のエンジンの特徴は、S360から続く2輪車のエンジン技術を踏襲している点だ。したがって、エンジンから後輪への動力伝達はチェーンによって行われている。また、当時のエンジンは混合気を送るキャブレターが1つ、または2つがせいぜいであったところ、S600は気筒ごととなる4つのキャブレターを装備していた。リッター当たりの馬力は94PSを発揮するホンダS600のエンジン

 つまり、1気筒ずつ最適な燃料供給を行えることを意味し、運転者のアクセル操作に応じて、適切にエンジンを働かせることを狙った高性能仕様だ。そして、インストゥルメントパネルに設置されたエンジン回転計のレッドゾーンは、毎分9500回転という、今日でさえなかなか巡り合えることのない高回転エンジンであった。しかし、2輪車のエンジンだと思えば、珍しい話ではない。2輪車の技術を基盤とした4輪オープンスポーツカーという特異性が、ここでも明らかになる。ホンダS600のタコメーターは500rpm刻みに記されている

 S600には、後年旧車取材の一環として少しだけ試乗したことがある。今日なお印象に残るのは、チェーン駆動である点だ。アクセルペダルを深く踏み込むにつれ、ギャイーンとチェーンが回る音が耳を覆った。そのすさまじい音に驚き、アクセルを戻したほどだ。それでもエンジンはよく回った。トヨタ博物館クラシックカー・フェスティバルin神宮外苑2016で撮影をしたホンダS600

 一方で、強烈なチェーンの音以外には、どのような運転感覚であったか、ほかのことは思い出せないのである。もちろん、当時S600を手にした所有者は様々な状況で運転を楽しみ、いろいろな思い出があるだろう。しかしほんのわずか試乗しただけの体験からする記憶は、強烈なチェーンの音のみに止まっている。オリジナル仕様のホンダS600のインテリア

 同時にまた、次への一歩が踏み出され、エンジン排気量を200cc増やしたS800が誕生する。その後期には、チェーン駆動ではなく一般的なリジッドアクスル(デファレンシャルとドライブシャフトが一体となった機構)によって後輪へ動力が伝えられた。こうして、2輪車を応用した4輪車から、4輪車らしい自動車への発展が進んでいくのである。ツインリンクもてぎで行われた動態テストで走るホンダS800M

 S500の販売価格は先に紹介したが、S600は50.9万円、S800は65.3万円で、それらはトヨタS800の59.5万円と比較するとS800同士ではホンダのほうが高価ではあるが、高性能エンジン代を考えると十分価値ある価格だったといえる。ホンダコレクションホールに展示されているホンダSシリーズ

 また、エンジン馬力ではトヨタS800を上回ったS600が9万円ほど安く買えたことも、チェーン駆動という独自性や、エンジンの最高出力で12馬力上回る性能であった点などを考えると、大きな魅力であったはずだ。トヨタ博物館クラシックカーフェスティバルin神宮外苑で撮影をしたホンダS600

 このあと、軽自動車のN360や、登録車のシビックをホンダは世に送り出す。それらもエンジンへのこだわりはあったが、一転して、庶民のための実用車であることを極めたクルマであるところに、自動車メーカーとしてのこだわりだけでなく、消費者の願いを叶えることを目指し、本田宗一郎が唱えた3つの喜び〈買って喜び、売って喜び、作って喜び〉という企業哲学を、商品を通じて明らかにしていくのである。

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