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「達成できてしまったらそれは単なる目標」チェアウォーカー長屋宏和さんの「見果てぬ夢」とは

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TEXT: 先川知香  PHOTO: 長屋宏和/Auto Messe Web編集部

目標は「車いすでの富士山登頂」

 長屋さんはトレーニングでの目標に、車いすでの富士山登頂を掲げている。そして、過去3度にわたって富士登山に挑戦し、8合目までの登頂を達成させた。チェアウォーカー長屋宏和

「子どもの頃から富士山が好きだったけど、登りたいと思ったことはなかった。でも、サンプレイでトレーニングをするようになって、自分のレベルがどんどん上がっていることが明確に感じられるようになると、車イスで行けない場所である富士山に登りたいという気持ちが高まってきて……。トレーニングのひとつの目標として富士山への登頂を定めることで、自分の意識とか志を高めていくきっかけにしたかったんです。車イスになったからできないことがあるというのも悔しかったので。誰もが無理だと思うことをやってやろうと思った。無理なことなんて、ないんですよ」チェアウォーカー長屋宏和

 この話を聞いて、無謀と感じる人もいるだろう。しかし長屋さんは、単独で富士山に登ることは不可能であることを、もちろん十分に理解している。チェアウォーカーとして、いろいろな人の助けを借りながら生活することで、みんなでひとつの目標をやり遂げて喜びを分かち合うことの楽しさを知ったのだ。だから、長屋さんの挑戦は、周囲の人を巻き込んだみんなの挑戦となる。

 

「まずは、どうすれば自分のこの体で富士登山に行けるのかを考えるところから始めて……。でも、電動車イスで行くことは選択肢にはなくて。自分の使える筋肉を生かして挑戦したかった。手動の車イスでは45度の坂道は登れないので、車イスのメーカーに相談したり、あるメーカーと一緒に車イス用の電動アシストを開発したり。それまで可能性は0%で無理だと思っていたところから、これなら行けるかもしれないという感じで1%の可能性を見つけることができた。可能性が1%になったら、その割合を増やしていくだけ。その積み重ねで、2年前に8合目までの登頂に成功することができました」

 長屋さんの行動力と前向きな人柄は、その挑戦に必要な縁を引き寄せ、長屋さん個人の挑戦から巻き込んだ人すべての挑戦に変えてしまう不思議な魅力を持っている。チェアウォーカー長屋宏和「車イスでの富士登山には『ブル道』と言ってブルドーザーが物資を運ぶための、一般登山客は使えない道を特別に使わせてもらうことができたのですが、それも富士登山への挑戦を決めたことによる不思議な縁で実現しました。挑戦って、いろんな人の協力や、偶然の出会いなどの縁が重なって実現できるんです。富士山への挑戦はまだ途中ですが、そういう意味でも本当にやってよかったと思う。レースもそうですし、トレーニングもそう。僕は本当にひとりじゃ何もできないので、このジムに来るまでにも駅員さんにスロープを出してもらったり。そういう感謝も忘れちゃいけないなと常に思っていて、挑戦をし続けることで、車イスだけど、だからこそできる可能性をどんどん広げられている気がします」

長屋さんの夢は今でも「F1ワールドチャンピオン」

 そんな長屋さんの夢は、今でもF1ワールドチャンピオンだ。

「僕は、夢はでっかく目標は小さくいっぱい作るほうなので、夢なんて手が届かなくていいと思っているんです。カートに乗っているころから持ち続けているF1ワールドチャンピオンという夢を今でも常に持ち続けていて、それに近付ける何かがあれば挑戦したいと思ってる。だから、洋服のことでも何かしら、それに活かせることが絶対あるし、レースの監督だって自分の考え方を振り返るいいきっかけになってる。富士山への挑戦だって同じだし、夢はひとつなので、富士山のことは頂上があるからゴールがあるかもしれませんが、洋服のことはひとつクリアしたら、また次の目標ができるので、そこは結果ではなく経過。特に強く何かを目指してるというモノはありません。だから目標は、毎日頑張ろうとかでもいいと思うんですよ。チェアウォーカー長屋宏和

 すべてにおいて、F1ワールドチャンピオンを目指す過程として頑張っていくというイメージです。『何言ってんだ? 車イスのくせに』って思う人もいるかもしれませんが、それは自分の中で持っていればいいことだし、夢なので。手が届かないから夢なんですよ。夢に手が届いたら、それは目標だと僕は思ってる。目標という低い次元ではなく、もっと高いところに自分の意識を持ち続けていることで、いろんなことに挑戦できるんだと思います」

 そう。夢は叶わなくてもいいのだ。日々の目標をひとつずつクリアしていくことで、叶うはずもなかった夢に1歩ずつ近づいているという実感。その実感こそが人生を楽しむためには大切で、「絶対無理だ」と限界を決めてしまっているのはいつも自分なのだ。ハンディキャップを抱えても、今なお挑戦することを諦めない長屋さんの生き方は、そのことに気付かさせてくれた気がした。

【詳しくはこちら】

取材協力:トレーニングセンターサンプレイ

https://sunplay.jp/

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