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「Be-1」「パオ」「エスカルゴ」「フィガロ」! バブルが生んだ日産の「パイクカー」を振り返る

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎 七生人

日産の遊び心をいかしたユニークなクルマづくり

 パイクカー。誰がどこでそう言い出したのかじつはよく知らないのだが、ともかく、日本がバブル景気に浮き足立っていたころ、一連の“トガったクルマ”として登場したのが、日産のパイクカーたちだった。ちなみにシリーズの最初のクルマだった、Be-1に関連した資料にはどこにもパイクカーの表記は見当たらず、最後のクルマとなったフィガロの日産の広報資料では、開発主管の言葉の最初にパイクカーの文字が見つかる。

 ついでなのでその文面をご紹介しておくと、「パイクカーの魅力は、既存の車種体系の枠にとらわれない斬新なデザイン、遊び心をいかしたユニークなクルマづくり、あるいは通常の量産車にはない個性をクルマに対して求める方々の意見を大切にしたクルマづくりができること」と、ある。

1万台の限定販売だったBe-1

 さて、何はともあれシリーズの第一弾(当初、シリーズ化など想定になかったらしい)として登場したのがBe-1だった。1985年の第26回東京モーターショーに原形が参考出品され、発売は1987年だ。ベースは当時の初代マーチ(K10型)で、1万台の限定販売。ただし購入希望が殺到したのは当然のことで、確か抽選になったと記憶している。 車名は開発記号だった“B1”をBe動詞化し、このクルマの可能性を象徴したものだったそう。テクニカルな話題としては、非量産車であることを逆手にとり、ボディ外板に多くの樹脂パネルを採用。前後エプロン、フロントフェンダーには、世界初という鋼板と同時に焼き付け塗装が可能な熱可塑性樹脂のFlex Panelが使われるなどした。生産は日産本体ではなく、小まわりの利く「高田工業」に依託している。 見せ場だったデザインは(これも詳しくは失念したが)、いわゆるクルマ業界以外のコンセプターの発案が確か元だったはずで、クルマとしては肩のチカラの抜け具合はサスガといったところ。大多数の人は丸型ヘッドライトなどから「ミニみたいだ」と言ったものだが、天の邪鬼な筆者には、リヤのノッチの付け具合から、往年の2代目・スズライトが連想された。トランクはハッチではなくリッドタイプで、背負うように取り付けるトランクバッグがオプションで用意されていた。 マーチと同じMA10S型・1Lエンジンを搭載。試乗したのは確か3速AT車だったが、加速はそこそこ、パワステは付いていなかったから、実際に走らせるのは見た目ほど楽ではなかった印象も。ただし、世間の反応を確かめようと、広報車を借り、夜の渋谷を宮益坂から道玄坂方向に走り抜けてみたら、スクランブル交差点でコチラを目敏く見つけた歩行者(男子数人)の野太い声で、アイドル歌手をコールするみたいに「ビーワーン!」と叫ぶ声が聞こえた。

道具感のあるデザインがオシャレな印象だった

 順を追うと、Be-1に次いで1989年1月に登場したのがパオとエスカルゴだった。パオは、これもまたサファリ・ルック調の味のあるスタイリングで、ポップなイメージの強かったBe-1とは趣を異にした道具感がよかった。少しくすんだアクアグレー、オリーブグレー、アイボリー、テラコッタの4色のバリエーションもなかなかお洒落な設定。 さらにインテリアも鉄板剥き出しのドアや丸型メーター、アイボリーのステアリングホイール、象牙をイメージしたというスイッチ類、専用ラジオなど、レトロ調のトーンでまとめられていた。パワステが付いていたことにも好感が持てた。

2年間のみ販売されていたエスカルゴ

 エスカルゴは、商用として用意されたクルマで、およそ2年間、通常の販売スタイルで買うことのできたクルマだった。カタログ写真に“ボディイラストは撮影のために特別にペイントしたものです”と小さく断り書きが入っていたりするが、ルノー・エクスプレスなどフルゴネットタイプのクルマを宣伝代わりに乗りたい……そんな商店の店主など、さぞ気になる存在だったに違いない。商用車なので諸元表上の乗車定員は2(4)名、車名の欧文表記は“S-Cargo”だった。

ドラマや映画の小道具としても絵になったフィガロ

 そしてもう1台が、1991年に登場したフィガロだった。きっと古いクルマに詳しい方ならご存知だと思うが、確か往年のフランスのクルマあたりに、このフィガロがネタ元にしたに違いないクルマが実在していた(筆者は今、車名が思い出せない)。 要はこのクルマもレトロ調のテイストが持ち味で、カタログに謳われていたのは“東京ヌーベルバーグ”だった。TVドラマの「相棒」で右京さんが長いチェスターコートを着たままフィガロに乗っていたが、まさに、ドラマや映画の小道具としても絵になるクルマ。 エメラルド、ぺールアクア、トパーズミスト、ラピスグレイと中間色のボディ色はどれも上品。ホワイトのルーフ部分は、手動ながらフルオープンにでき、畳まれたルーフは手際よくトランク内に格納される仕組みになっていた。インテリアには何と本革シートが奢られ玉縁の上品なデザインで、専用にデザインされたウインカーレバーやクラシカルなアナログ2眼メーターなども愛着を持って乗りこなしたい設えになっていた。

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  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 1958年生まれ。大学卒業後、編集制作会社を経てフリーランスに。クルマをメインに、写真、(カー)オーディオなど、趣味と仕事の境目のないスタンスをとりながら今日に。デザイン領域も関心の対象。それと3代目になる柴犬の飼育もライフワーク。AMWでは、幼少の頃から集めて、捨てられずにとっておいたカタログ(=古い家のときに蔵の床が抜けた)をご紹介する「カタログは語る」などを担当。日本ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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