超満員のスパ! 来場者はなんと10万人
ドイツ在住のモータースポーツジャーナリスト・池ノ内みどりさんは、2025年のWEC(FIA世界耐久選手権)第3戦の取材でベルギー・スパ・フランコルシャンへ。10万人の観客が詰めかけた超満員の現場で、レースの熱気と観戦する楽しさ、そして現地ならではの美味しい誘惑まで⋯⋯。舞台裏をお届けします。
ハイパーカークラス拡大で注目度も急上昇
ファンのみなさんで、どこもかしこもが埋め尽くされた超満員のスパ・フランコルシャン。このレースウィークには、なんと10万人近くの観客数を誇ったそうです。やはりハイパーカークラスの参戦台数が一気に増えた2024年から、来場者の数も大きく増えました。今後ジェネシス(ヒョンデ)やフォード、マクラーレンも続々とハイパーカークラスへ参入を予定しているので、もっと賑わうことになるのでしょうね。
さて、マシンもドライバーもほとんど見えなかった怒涛のピットウォークの後は、いよいよスタートに向けて準備が始まります。「スタートはどこへ行く?」といろんなメディア関係者と話しながら、なかなか決められずにいました。
スパ・フランコルシャンは全長7.004kmと、一般的なサーキットの倍近くの長さがあります。メディアシャトルはコースの内側しか走行していないので、外側は自力で行くしかありません。またスタートシーンを撮るのなら、グリッドウォークを早めに切り上げてコースを歩いて1コーナーのラ・ソースまで行く必要があるため、いずれにせよ早めに決断をしなければなりません。
ごった返すグリッドウォーク⋯情報交換がカギ
グリッドウォークはVIPのお客様やチーム関係者でごった返していて、誰が誰かを見分けるのも結構大変。フォトグラファー同士で情報交換をしながら、何度もグリッドを往復します。そうしている間にラ・ソースへは行けない時間となり、なんやかんやでスタートはピットロードで観ることにしました。
今回、WECは78号車のレクサス「RC-F」をゲスト参戦としてドライブする、TOYOTA GAZOO Racing
の中山雄一選手らのチームがポールポジションからスタートするため応援にも熱が入ります。
国歌斉唱の後には、ベルギー空軍の飛行機がベルギー国旗の飛行機雲を青空に描いて、いよいよレースのスタートです。WECは6時間耐久レースなので、スタートの際には「これからゴールまで長いなぁ〜」と感じてしまうのですが、その後は時間が経つのが早く感じるのが不思議です。
コースサイドに漂うスパならではの美味しい誘惑
コースをぐるりと囲んでいるフェンスや山肌にもファンのみなさんが並んで応援しています。そんなみなさんの楽しそうな表情に癒されながらも、アップダウンの激しいコースサイドを重い脚を引きずりながら歩いていると、焼けたソーセージのとても良い匂いのする煙が漂っているので、ついつい吸い寄せられてしまいます(笑)。
一緒に販売されているベルギーの代表的なジュピタービールは、軽い喉ごしでとても飲みやすくて美味しいのです。ベルギーもドイツと並ぶビール大国ですよね。私はほとんどお酒を飲まないのですが、年に数回程度の飲む機会があったら、じっくりと味わってみたいものです。仕事中であること、そしてレースの後には約30kmの道のりを宿まで運転しなければなりませんので、コースサイドで青空を見ながらの一杯はお預けです。
トヨタは従業員500名以上をスパに招待
今季は開幕戦から3戦連続優勝を誇るという非常に強さを見せるフェラーリですが、2024年のデビューイヤーで大苦戦していたアルピーヌがとても順調にポテンシャルを発揮しています。今回のスパでは初優勝も不可能ではない強さを見せていましたが、残りわずかでスローパンクチャーによりタイヤ交換のためにピットイン。順位を落とすも諦めずにプッシュし続けて、前戦のイモラに続いて36号車のアルピーヌは3位入賞となりました。
真っ赤っ赤の集団フェラーリは、ハイパーカーと296 GT3の両クラスでW優勝という快挙を遂げました。表彰式では、時間短縮のためかイタリア国歌が触りだけ流れてフェードアウトしましたが、ファンやチーム関係者のアカペラの大合唱で最後まで歌い切りました。恐るべし、イタリア人!
ところで、今回のWECスパ戦にTOYOTA GAZOO Racing Europe(トヨタGazooレーシング)とTME(Toyota Motor Europe)は、従業員を約500名以上も招待したようです。従業員さん用に別途大きなラウンジも用意されていて、社を挙げての応援にチームやドライバーのみなさんは心強かったに違いありませんね。