マツダの飽くなき挑戦「ロータリー・エンジン搭載車ヒストリー(国内編 Part 1)」

マツダの飽くなき挑戦「ロータリー・エンジン搭載車ヒストリー(国内編 Part 1)」

マツダが育て、日本の技術で完成した
名機”ロータリー・エンジンの歴史”

ヴァンケル・エンジンの生みの親である「NSU」やおひざ元ドイツを筆頭とするヨーロッパで魅力的なヴァンケル・エンジン搭載車が誕生した一方で、国内ではNSUから基本特許を供与された「東洋工業(現マツダ)」がコスモ・スポーツを手始めに数多くのモデルを投入。同時に、本家のNSU+ヴァンケル連合が苦労し、結局解決策を見出すことができなかったアペックスシールなど、技術的な問題を着実に解決。完璧な商品化に成功することになった。
それもありヴァンケル・エンジンは、マツダが製作するヴァンケル・エンジン搭載車が欧米各国へと浸透していくと同時に、彼らが命名したロータリー・エンジンの名で広く知れ渡っていくのである。

 

世界で初めてロータリー・エンジンを搭載した”量販車”

マツダ製のロータリー・エンジン初搭載車は、1966年の東京モーターショーに参考出品され、翌67年に発売が開始されたマツダ・コスモ・スポーツ(L10A)。2シーターの小さなキャビンの前後にロングノーズとロングテールを繋いだ、未来的なシルエットが大きな特徴だった。
搭載エンジンは491cc×2ローターの10A型。
本家のNSUが64年にヴァンケル・スパイダーを上市していたから、世界初のロータリー・エンジン搭載車の栄誉は譲っていたが、あくまでも限定試作車の域を出ていなかったヴァンケル・スパイダーに対して、販売台数こそ多くはなかったものの“完成品”としてマツダは市販に漕ぎ着けていた。
しかもエンジン自体も2ローター、言わばマルチシリンダーにバージョンアップしていたから、コスモ・スポーツこそが世界で初めてロータリー・エンジンを搭載した量販車、と胸を張っていいだろう。

 

1967_Mazda Cosmo-Sport 110S Type L10A

国産初のロータリー・エンジン搭載モデルとして1967年に市販が開始されたマツダのコスモ・スポーツ(L10A)。その存在感からか、立派で大きなイメージがあるが、実際にはとてもコンパクト。そしていまでも十分通用するほどモダンなデザインでもある。写真の個体は広島市にあるマツダの本社に併設されたマツダ・ミュージアムの収蔵モデルで、2010年に訪ねた時には本社のエントランス・ロビーで来館者を歓迎するホストを演じていた。

 

1968_Mazda Cosmo-Sport 110S Type L10B
マツダ、ロータリー、エンジン、mazda、ルーチェ、ファミリア、コスモデビューの翌年には早くもマイナーチェンジが実施され後期モデル(L10B)に移行。ホイールベースの延長やトレッドも変更されているが、エクステリアで大きな違いはフロントビュー。グリルの開口部が下方に広くなったことと、その左右にフロントブレーキの冷却気用ダクトが口をあけていること。ボンネットのエンブレムも“110S”から“Cosmo”に変更されている。こちらもマツダ・ミュージアムに収蔵されている1台だ。

 

1970_Mazda Rotary Engine Type 10A
マツダ、ロータリー、エンジン、mazda、ルーチェ、ファミリア、コスモ68年に登場したコスモ・スポーツの後期型は、前期型と同様に491cc×2ローターの10A型エンジンを搭載していたが、前期型の110馬力から128馬力にパワーアップ。コンパクトでハイパフォーマンスというロータリー・エンジンのコンセプトを一層明快にしていた。写真のエンジンは2013年にトヨタ博物館で撮影。隣には69年式のコスモ・スポーツも展示され、自社製に拘らず広く“クルマ”を収蔵展示する同館の素晴らしさを示している。

 

実用性を高めた、あの名車へロータリー搭載

その後は、コスモ・スポーツのような2シーターのスポーツカーに比べると、より現実的な2ドア5座クーペのファミリア・ロータリークーペや、4ドアセダンのファミリア・ロータリーSS(ともにM10A系)などが登場。この2車には、コスモ・スポーツと同じ”10A”エンジンが搭載された。
同じ10Aエンジンとはいっても、コスモ・スポーツ用に比べると少しマイルドさを増したチューニングで、最高出力もコスモ・スポーツの110馬力(後期モデルは128馬力)から100馬力まで引き下げられたが、それでも同クラスのライバルを圧倒するには充分なパフォーマンスを発揮。
ちなみに、68年のファミリア・ロータリークーペの誕生に続いて、翌69年には、ルーチェ・ロータリークーペが登場している。こちらはロータリー・エンジンを広く訴求しようというファミリアとは異なり、マツダ(当時は東洋工業)のフラッグシップという位置付け。
アッパーミディアム・4ドアセダンのルーチェがベースとされるが、2ドア・ハードトップの外観こそイメージが残っていたものの、新開発の13Aエンジン(655cc×2ローター)だけでなく、FR(後輪駆動)のルーチェに対してFF(前輪駆動)とした駆動系、そしてサスペンションも含めて全くの別物だった。

 

1969_Mazda Familia Rotary SS 4-door Sedan Type M10A

マツダ、ロータリー、エンジン、mazda、ルーチェ、ファミリア、コスモ1968年にはロータリークーペ、69年にはロータリーSS、と2年続きでファミリアにロータリー・エンジン搭載モデルが追加投入されている。当時のユーザー予備軍にとっては、2シーターのスポーツカーであるコスモ・スポーツに比べると、5座の2ドアクーペ/4ドアセダンというのは遥かに現実的な選択肢。フロントグリル中央のエンブレムも、さりげなくロータリー・エンジン搭載車であることを物語っている。マツダ、ロータリー、エンジン、mazda、ルーチェ、ファミリア、コスモ写真の個体は69年にデビューした4ドアセダンのロータリーSSで、石川県小松市にある日本自動車博物館に収蔵される1台だ。

 

1970_Mazda Familia(Second-generation)-Presto Rotary Coup Type M10A

1970年にはファミリアに上級シリーズのファミリア-プレスト・シリーズ(このプレスト・シリーズは73年にワイドボディになって登場するファミリアプレストとは異なる…)が登場。ロータリークーペやロータリーSSもこちらに集約されることになった。写真の個体は広島のマツダ・ミュージアムで収蔵展示された1台。グリルのエンブレムが平凡なデザインになってしまったのは少し残念だった。

 

1969_Mazda RX87/Luce R130 Rotary Coup 2-door Hard-Top Type M13P

1968年に、ファミリア・ロータリークーペでロータリー・エンジンの普及に大きな一歩を踏み出した東洋工業は、翌69年にはロータリー・エンジン搭載車をトップエンドに据えることになった。アッパーミドルクラスのルーチェをベースにしたルーチェ・ロータリークーペを登場させたのだ。もっとも、ルーチェがベースとは言うものの駆動レイアウトを後輪駆動から前輪駆動に一新したシャシーも全くの別物だった。そのルーチェ・ロータリークーペはヨーロッパにもマツダRX87のネーミングで輸出されたが、彼の地でも好評を博していた。写真の個体は、ドイツのアウグスブルクにあるマツダ・クラシックカー博物館フライで収蔵展示されている1台だ。

 

軽量&ハイパワーなサバンナGTの誕生へ

そして、71年にはファミリアがモデルチェンジを機にアップグレード。グランドファミリアに移行したことを受け、ロータリークーペもサバンナ(S102系)に移行するが、引き続きファミリアと同じ10A型を搭載していた。
話は少し前後するのだが、70年にはファミリアの上級モデルとしてミディアムクラスのカペラが登場。4ドアセダンと2ドアクーペが用意されていたが、ともにロータリー・エンジン搭載モデル(S122A)がラインアップされた。
注目のエンジンは10Aをベースに排気量を拡大、573cc×2ローターの”12A”が初登場。最高出力は120馬力とファミリアの2割増しで、現在の水準からは平凡に映るが当時はライバルを圧倒した。何よりもボディがコンパクトで1tを切るほど軽量だったから、充分すぎるパフォーマンスを発揮していたのだ。
さらにツーリングカーレースにおいて王者だったスカイラインGT-R(KPGC10)を打ち破るべく、サバンナGT(レース参戦車両は当初、開発コードであるサバンナRX3を名乗っていた)が登場。
カペラに比べてより軽量コンパクトなサバンナに、サバンナが搭載していた10Aエンジンよりもハイパワーを生むカペラが搭載した12Aエンジンの組み合わせられた。
そのハイパフォーマンスはライバルたちも認めざるを得なくなっていった。

1970_Mazda Capella Rotary Coup Type S122A
マツダ、ロータリー、エンジン、mazda、ルーチェ、ファミリア、コスモ1970年にはコンパクトクラスのファミリアとアッパーミディアムのルーチェ、両者の間を埋めるミディアクラスのカペラが登場。ロータリー・エンジン搭載車の全クラスでのラインナップを目指す東洋工業(現マツダ)らしく、こちらにもロータリー・エンジンを搭載したモデルが用意されていた。エンジンも10A型をベースに排気量を拡大した12Aを開発。そのパフォーマンスはライバルを圧倒していた。イメージカラーであるオレンジのボディを持った2ドアのロータリー・クーペは、小松市にある日本自動車博物館で収蔵展示される1台。

 

1970-78_Mazda RX-2/Capella Coup Type S122A
マツダ、ロータリー、エンジン、mazda、ルーチェ、ファミリア、コスモ70年に登場したカペラは、マツダ626の名でヨーロッパにも輸出されたが、ロータリー・エンジンを搭載したモデルはRX-2と呼ばれている。ドイツはアルトゥルスハイムにあるオートヴィジョン博物館で今年6月に撮影。

 

1971_Mazda Savanna 4-door Sedan Type S102A

ファミリアの少し立派になった後継モデルが、1971年に登場したグランドファミリア。その姉妹車で、ロータリー・エンジンを搭載したモデルがサバンナだ。当初はファミリア・ロータリークーペと同様10Aエンジンを搭載していたが、後にカペラと共通の12Aエンジンに換装されている。写真の個体は小松市にある日本自動車博物館で収蔵展示される1台。クーペは多くの博物館で出逢ったが、4ドアセダンは例が少なく、貴重な体験だった。

 

1971-78_Mazda RX-3/Savanna Coup  Type S124

そんなサバンナはRX-3のネーミングでヨーロッパにも輸出されていた。ロータリー・エンジンに関する収蔵展示では質・量ともに最高レベルにあるオートヴィジョン博物館ではエンジン単体と並べて展示されていた。

 

1972_Mazda Savanna GT“RX-3” Type S102A
マツダ、ロータリー、エンジン、mazda、ルーチェ、ファミリア、コスモツーリングカーレースで王者に君臨していたスカイラインGT-R(KPGC10)に戦いを挑んだサバンナは、カペラから12Aエンジンを移植したRX-3の登場によって王座を奪い取ることに成功した。そのRX-3の市販モデルがサバンナGT。Cピラーに“GT”のエンブレムが眩しい個体は広島のマツダ・ミュージアムに収蔵展示された1台だ。


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