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自動車レースで使う「スリップストリーム」 日常の運転で燃費を向上させるテクニックと注意点

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: Ferrari、Auto Messe Web編集部

前走車を風除けにして空気抵抗を減らす

 F1などのレース中継ではおなじみの用語となっているスリップストリーム。高速で走行するクルマは“空気の壁“が大きな抵抗になる。エンジンの出力がその空気抵抗に打ち勝てなくなったところで、そのクルマの最高速を迎えると言っても過言ではないだろう。

 もちろん走行中のクルマには、空気抵抗以外にもタイヤの転がり抵抗や、機械的なフリクションロス、駆動抵抗などの抗力がかかるが、およそ160km/h以上になると、抗力の9割は空気抵抗になる。というのも、空気抵抗は速度の二乗に比例して大きくなるからだ。したがって、クルマの最高速は空気抵抗との戦いといっていい。

 レースの場合、トップを走るクルマ=前走車がいないクルマは、もっとも大きな空気抵抗を受けることになるが、2位のクルマは、空気の壁をトップのクルマが掻き分けてくれるため、空気抵抗が減り、気圧低下による吸引効果も得られる。そのため、より少ないパワーで速度を高めることができるわけだ。

 この前走車が作り出す空気抵抗が小さいエリアに入り込むことを「スリップストリームに入る」、あるいは「トウを得る」という。スリップストリームを使えば、前走車のオーバーテイクが容易になり、追い抜かない場合(追い抜けない場合)でも、エンジン回転を押さえ、エンジンの負担を減らし、燃費をよくするメリットがある。

 そんなスリップストリーム。サーキットだけのテクニックで、公道では無縁のものなのだろうかというと、じつはそんなことはない。前述の通り、空気抵抗は速度の二乗に比例するので、低い速度域では効果が薄いが。

 ただ効果が薄いだけであってゼロではないところが重要で、モータースポーツ以外のスポーツなら、例えば自転車のロードレースやトライアスロン、アイススケート、マラソンではトップを走り、後続の風よけになるのが不利だということはよく知られている。それゆえ、先行する選手に過度に接近することが禁止されている競技もある。

 冬季五輪で注目されたスケートの団体パシュートや、ロードレースの「トレイン」などは、スリップストリームの使い方が勝敗を左右するほど効果が大きい。人力の競技でもこれだけ効果があるほどなので、クルマの場合、街乗りならともかく、高速道路やバイパスなどでは一定以上の効果があるのだ。

 問題はどれぐらい効くかということ。スリップストリームは前走車の前投影面積が大きく、前走車との距離が近ければ近いほど効果が大きい。90km/hで走るトラックの後方を乗用車が走った場合、車間距離30mだと、燃費改善率が11%になるというデータがあるので、これがひとつの目安となるだろう。

 ただし、90km/hで30mの車間距離というのは近すぎる。あおり運転ともとられかねないし、車間距離不保持で取締りにあう可能性も……(90km/hなら、最低でも50mの車間距離は空けておきたい)。

 その代わり、スリップストリームは、2台よりも3台、3台より4台と数珠つなぎ、つまりは「トレイン」「コンボイ」という状況になった方が大きな「トウ」が得られるということも理解して欲しい点。

 高速道路を走るなら走行車線のトラックの列(大型トラックは90km/hでリミッターが作動)のなかに、行儀よく並ばせてもらって、前に2~4台ほどトラックがいる状態を作れば、安全な車間距離でも、空力的にかなりオイシイ思いができるはずだ!

 一方でストップ&ゴーを繰り返す一般道では、ほとんど効果が期待できない。高速道路の長距離ドライブで、のんびり一定のペースで走りたいようなときに、ちょっとスリップストリームを意識してみるぐらいが、ちょうどいいのではないだろうか。

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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