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通勤に使えるオートマ軽自動車でF1と同じコースのレースに参戦してみた! 面白すぎるその中身とは

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TEXT: 岡田幸一  PHOTO: 岡田 幸一、N-ONEオーナーズカップ事務局

あまりコストをかけずとも楽しめる イコールコンディションレース

 恐れ多くもこうやって伝える側の人間として仕事をさせてもらっているからには、いつかは経験せねばならないと思っていた、JAF公式レースへの参戦。

 公式レースとは、日本国内ではJAFが定めた競技規則や車両規則に従って行われるレースのこと。その頂点がスーパーフォーミュラやスーパーGTになるのだが、ヒエラルキーの最も底辺を支えているのが、ナンバープレート付きのワンメイクレース。

 さらにそのなかで1番身近な入門レースが軽自動車のレース。そう、なんとなくお察しのとおり、ホンダN-ONEによるワンメイクレース「N-ONE OWNER’S CUP」だ。

 N-ONEのワンメイクレースは年間14~15大会が開催されているが、毎年シーズンの頭に、チームで戦う耐久レース“N耐”が開催されている。これなら公式戦が初めてでも仲間と一緒なので心強い。

 というワケで、ついに念願叶って、そのN耐に出場。ここでは、実際に参加したことで見えてきたワンメイクレースの魅力をレポートしていく。

あらためて「N-ONE OWNER’S CUP」ってどんなレース?

 公式レースとして開催されているナンバープレート付き車両によるワンメイクレースは、ヴィッツや86/BRZが超有名。毎戦大盛り上がりを見せている両ワンメイクレースだが、N-ONEも引けを取らないばかりかそれ以上に賑わっていて、参加者を多く集める鈴鹿サーキットや富士スピードウェイのラウンドには、なんと50台を超えるエントリーがあるほどなのだ。

 「N-ONE OWNER’S CUP」とは、2014年からスタートしたホンダのN-ONEだけが走るナンバー付きのワンメイクレースのこと。軽カーの草レース(レース形式の走行会)は各地のサーキットでたくさん開催されているが、現在はN-ONE OWNER’S CUPが軽自動車で開催される唯一のワンメイクレースになっている。

 通常はスプリントレースとなりドライバーは1人だが、“N耐”は3~5人のドライバーでチームを組んで、交代しながら4時間後のゴールを目指す耐久レース。N耐用の特別規則は追加されるものの、基本的な運用ルールは同様で車両規則もすべて同じ。

 1月26日に開催されたN耐は鈴鹿サーキットが舞台となり、通常のラウンドも鈴鹿、富士、SUGO、岡山国際といった、国際レーシングコースが主に使われている。

 軽自動車で大きなコースを思いっきり走れるだけでもかなり魅力的だが、スーパーフォーミュラやスーパーGTと併催されることも多く、憧れのレーシングドライバーやマシンとも距離感が近いこともN-ONEレースの人気を後押ししていると言っていいだろう。

 また、著名なモータージャーナリストや有名なレーシングドライバーなんかも しれっと 出場していたりもする。しかし、だからと言って簡単には優勝できないのも面白い点。N-ONEレースに出場しているほとんどが、名もなきアマチュアレーサーなのだが……。そのへんの奥深さは後ほど。

Aライセンスの取得はとても勉強になる!?

 JAF公式レースというからには、JAFのモータースポーツライセンスが必要になる。N-ONE OWNER’S CUPに出場するにはまずは国内Aライセンスを取得するところから。「Aライ」がいる時点で敷居が高いとおっしゃる方もいるだろうが、講習を受け、筆記試験と実技試験に合格するまでに学ぶ内容は、本当にためになることばかり。

 カーレースは危険を伴うものなので、やはりナメてかかると痛い目にあうのは自分自身であり、相手や仲間を傷つけてしまうことになりかねない。「モータースポーツは紳士のスポーツである」と言われるように、安全への意識、マナーが高められてこそ成立することは分かっていても、ついつい…… ということはよくある。

 走っているドライバーが主人公のように思ってしまうが、オーガナイザーがいて、サーキットがあってこそのモータースポーツ。フラッグの意味だけじゃなく、彼ら(主催者やサーキット施設、審判やマーシャル)に敬意を払わねばならないことも含め、たとえ草レースでも知っていると知らないのでは大違いなことが、Aライセンスを取得すれば分かるのだ。

 運転テクニック以上に必要なことが何なのかを気づくことこそ、JAFのモータースポーツライセンスを取得する大きな意味だと言えるかもしれない。まさに格式ある公式戦たる所以だ。

「N-ONE OWNER’S CUP」はホントにお金がかからないの?

 公式ホームページをご覧いただくと分かると思うが、通年で本当にびっくりするほど多くの人がN-ONEレースに出場している。結論からいうと、多額の投資が必要なのであれば、そうはならないはず。

 最大の理由はベース車両がナンバープレート付きの軽自動車であること。普段の通勤、買い物にもそのまま使えるし、レースの日も自走でサーキットまで移動できる。逆を言うと、一般公道を走れて車検の通るクルマじゃないとN-ONE OWNER’S CUPには出られない車両規則になっているのだ。

 ベースのN-ONEは、FFのターボモデルであれば何でも(新車でも中古車でも)OK。これに、ロールケージ、牽引フック、バケットシート、4点式シートベルトの装着が義務付けられていて、最低限これらを装備すればレースには出場できる。

 あとは速く走らせるための、足まわりやブレーキを交換するぐらい。しかも、ホイールは14インチもしくは15インチで、リム幅4.5インチならインセットは39、5.0インチならインセット45の4サイズに定められていて、タイヤもいわゆるエコタイヤしか履けないという決まり。サイズは155/65R14または165/55R15。

 どうだろう、そこそこカスタマイズしているユーザーカーよりも、全然手がかかっていないレベルなのではないだろうか? 近くにチューニングショップがなくても、全国のホンダカーズ(ディーラー)でパーツの取り付けを任せることも可能だ。N-ONE OWNER’S CUPはとにかくコストが抑えられるようによく考えられていて、しっかりとイコールコンディションが保たれるようになっている。

 また、まれにN-ONE OWNER’S CUPに出場していた車両がコンプリート状態で売りに出されることがある。人気レースなので、頻繁にある話ではないが、さらにコストを抑えられるケースも多く、とてもアリな方法と言えるだろう。極論を言えば、レースカーをつくる手間を省いて即レース可能というワケだ。

実際に「N-ONE OWNER’S CUP」に出場してみて

 我々のチームは、ラッキーなことに昨年までN-ONE OWNER’S CUPに出場していた車両を購入する機会を得て、これがJAF公式のワンメイクレースに出場できる大きなきっかけとなった。分からないことは元オーナーに聞けるし、いろいろと参戦にあたってのアドバイスをもらえるという幸せも同時にゲット。

 未経験者にとってはJAF公式戦となると、分からないことだらけになるのだが、N-ONE OWNER’S CUPはそもそもが初心者向けに開催されているので、主催者からも「心配ごとはないですか?」と我々のような初出場チームには、わざわざ電話をかけてくれるぐらい親切。なるほど、これが「N-ONE OWNER’S CUPなんだ!!」と、主催関係者の方々の敷居を上げない努力を肌で感じることができた。

 さて最後に、実際に鈴鹿サーキットを走った感想を少々。当たり前だが、まわりは全部N-ONE。なのでピットやパドックの雰囲気は、仲間意識が強くとてもアットホーム。レース前もピリピリとした緊張感はさほど感じられず、「笑顔で楽しもう」というムードがとてもイイ。車両には各チームによって、どれも個性的なカラーリングが施されていて、それを見てまわるだけでも楽しい。

 N-ONEはノーマルパワーのCVT車両。いわゆるレーシングスペックとは違い、エアコンもついているし軽量化もされておらず普段街乗りしている状態と何ら変わりない。もちろんスピードリミッターも効いたままだ。「そんな軽自動車でF1が開催されるような鈴鹿サーキット走って楽しいの?」なんてよく聞かれるが、機会があれば本当に一度、走ってみてほしい。

 カタログ値で60馬力そこそこしかパワーはないけれど、グリップ力が低いエコタイヤとCVTのバランスがとにかく良くて、パワーとタイヤの性能をいかに巧く引き出して走るかという、クルマに頼らないドライビングが抜群に楽しい。

 それでも1コーナーや130Rを曲がるときには度胸もいるし、S字もデグナーもスプーンもすべてが想像以上にスリリング。レース中は「遅い」なんて感じることもまったくないぐらいだ。

 これでライバルはすべてN-ONE。しかも改造範囲が制限されたイコールコンディション。車両の性能差はほぼないので、差が出るとしたら運転中のちょっとした躊躇やミスによるもの。そういうドライバー勝負みたいなところがじつに面白い。

 これを突き詰めた先輩N-ONEレーサーたちが、しれっとスポット参戦した有名なレーシングドライバーよりも僅差ではあるが速いのも納得。

 たとえノーマルパワーでも、CVTでもこれほど楽しめるレースはほかにないだろう。これぞワンメイクレースの醍醐味。まだまだ多くを語れるほど熟知したわけではないが、「N-ONE OWNER’S CUP」はとても奥が深く、本当に面白いレースだとオススメしたい。

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