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なぜ思いやりをもてない! なんと8割もの不正利用に悩む「障害者用駐車スペース」の現実

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TEXT: 猪狩清十郎  PHOTO: 猪狩清十郎、Auto Messe Web編集部

障害者用駐車スペースとはどのような駐車枠か——みんな知らなすぎる

 街をクルマで走っている人なら誰もが知っている障害者用の駐車スペース。あの駐車枠について正確に理解している人はいったいどれくらいいるでしょうか。「知ってるよ。車椅子の人が使う枠でしょ」。大多数の人がそのくらいの理解かと思います。筆者の私も、ふとした疑問から詳細に調べてみるまで同様の理解でした。

 その疑問とは、一般健常者が傍若無人に駐車している、とネットに晒されたり批難されているのを見て、そもそも健常者は停めてはいけないのだろうか?  停めると罰則はあるのだろうか?  利用できる障害者はハッキリと定義されているのだろうか?  と疑問を持ったことでした。

 正式名称は何て呼ぶのだろう? なぜ近年、公共の建物や商業スペースに設置され始めたのだろう? 何か法律に基づいているのだろうか? そんなひとつ一つの疑問をネットで調査してみました。

バリアフリーという広義の福祉政策のひとつ
位置付けられている障害者用駐車スペース

「バリアフリー法」という法律をご存知の方も多いかと思います。

 少しひも解くと、1994年(平成6年)にハートビル法という法律が誕生します。正式には「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」と言いますが、段差をなくしたり、車椅子で利用できる広いエレベーターを設置したり、障害者のことを考えた建物を造りましょう、という法律です。

 次いで2006年(平成18年)、このハートビル法と統合される形で通称バリアフリー法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」が制定され、建物のみならず公共交通機関や都市公園、駐車場など障害者がスムーズに移動できるように配慮する義務が課せられることになりました。電車やバスは早くから車椅子のスペースを確保していましたが、バリアフリー法によって急速に全国規模で拡大した経緯があります。

 つまり障害者用の駐車枠とは、それ単独で設置されているものではなく、体の不自由な人が移動困難になるようなバリアを排除してハンデを克服しようとするものです。駐車場から車椅子で移動できる広さと段差のない通路を確保したり、乗降時に雨で濡れないよう庇や屋根を設置したりと細やかな配慮がなされている例もあります。

心無い健常者の行動が
パーキング・パーミット制度を生み出した

 パーキング・パーミット制度(以下PP制度と表記)をご存知でしょうか。PP制度とは、バリアフリー法の施行主体である自治体が、障害者用駐車枠の利用証(利用パス)を審査・認定・発行し、障害者枠の利用者を限定しようというものです。

 このPP制度を2006年にいち早く導入したのは佐賀県ですが、健常者が停めていて利用できない、との苦情が多かったため、欧米などで既に導入されているPP制度を参考に実施したものです。利用者はルームミラーにパスを掲示し適正な利用者であることを表示します。

 現在、PP制度は37府県が導入していますが、自治体によって認定基準が異なることや、他県での利用ができるよう相互協力を結んだりと、不正利用を排除し利便性を障害者が享受できるよう工夫が重ねれられています。

 ところが一方では、自治体への申請、審査基準や審査機関の策定・パスの発行や管理など、自治体に新たな負担が生じています。

 PP制度には全国一律の制度にすべき、観光などで来日する外国人旅行者も利用できるよう国際基準にするべきなどさまざまな声が上がっていますが、一律となるとできるだけ多くの障害者が利用できるよう基準を厳格化せず広く認定する必要に迫られます。そうなると、障害者同士で駐車枠を奪い合う事態にもなりかねません。

 また、心無い健常者による不正利用に罰則を設けるべき、との声も上がっていますが、公共施設・商業施設などの駐車場は道交法対象外であり、県条例で罰則を設置しようにも証拠保全など管理者の負担が増えるため罰則実施のハードルは低くなく現実的でないとして見送られているのが現状です。

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