生き物のような「一体感」を得られた唯一のクルマ! 世界にわずか337台の名車「トヨタ2000GT」の衝撃 (2/2ページ)

クラリネットのような排気音に興奮!

 のちに、旧車となってからのトヨタ2000GTに試乗する機会を得た。雑誌や写真で見た、高級木材を使ったダッシュボードや、バケットタイプの運転席に座ったときの喜びもまた、生涯忘れることはないだろう。現役時代から年月を経た状況であるため、丁寧に運転する必要があり、速度感を失わせやすいサーキットでの試乗で無理は禁物だ。

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ヤマハ製のウッドパネルを使用したダッシュボード画像はこちら

 エンジンは直列6気筒のDOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)で、最高出力は150馬力である。これに5速マニュアルトランスミッションが組み合わされる。いまとなってはそれほどの大馬力ではないが、車両重量が1120kgと1トンをわずかにうわまわる程度の軽さであり、存分な走りが期待された。トヨタ2000GTのツインカムエンジン画像はこちら

 そしてなにより、徐々にアクセルペダルを踏みこんでエンジン回転数を上げていったときの排気音は、忘れがたい音色であった。ヤマハが関わったといわれる直列6気筒エンジンは、ほかのどのエンジンとも違う音を耳に届けた。ヤマハだからと意識し過ぎだといわれればそれまでだが、柔らかな音を発する木管楽器のクラリネットのような排気音に感じた。トヨタ2000GTの純正キャプトンマフラー画像はこちら

 それは耳に快く、無暗に興奮させない。それでも、軽やかに回転を上げていきながら、振動の少ない直列6気筒エンジンの滑らかに速度を上げていく様に、流麗で美しい外観と調和した2000GTの麗しい運転感覚を味わうことができたのである。筑波サーキットを走行するトヨタ2000GT画像はこちら

 英国のジャガーEタイプなどで使われたXバックボーンフレームと、4輪独立懸架のダブルウィッシュボーン式サスペンションとによって、タイヤの接地性はよかったと記憶する。トヨタ2000GTが採用するXバックボーンフレーム画像はこちら

 金属でつくられたクルマというより、あたかも馬を操るかのように、運転者とクルマとの対話のなかで景色が流れていった。操縦性がいいとか、加速が鋭いとかといった機械の優劣を意識させるのではなく、生き物が持つ躍動のなかに自分がいるという感触だ。筑波サーキットのヘアピンを立ち上がるトヨタ2000GT画像はこちら

 そのような手ごたえを覚えさせるクルマは、トヨタ2000GTのほかにないのではないだろうか。それぞれのクルマやスポーツカーに、それぞれの持ち味があり、それぞれに魅力はある。だが、トヨタ2000GTのそれは、明らかにほかと違い、また機械だと思わせない何かが潜んでいるのである。

トヨタ2000GTは日本が世界に誇れるスポーツカー

 自然を制するのではなく、自然と共に生きようとしてきた日本人の肌触りなのかもしれない。そうしたことを含め、トヨタ2000GTはトヨタという自動車メーカーだけでなく、日本が世界に誇れるスポーツカーなのではないだろうか。ボディサイドに貼られるトヨタ2000GTの七宝焼きエンブレム画像はこちら

 ちなみに当時の車両価格は、238万円であった。それは、カローラが6台、クラウンが2台買える金額であったという。大学卒業の新入社員の初任給が2万6000円前後であったというので、その100倍近い額であった。販売台数は、わずか337台である。ロングノーズ・ショードデッキスタイルを持つトヨタ2000GT画像はこちら

 レースへも出場したが、それより国際記録に挑戦したスピードトライアルのほうが私の記憶に残る。72時間や、1万マイル(約1万6000km)、1万5000kmなどの長距離走行に挑み、いずれも平均速度は時速200kmを上回った。市販スポーツカーとして、信頼耐久性と速さの両立がなされたクルマであったことを知ることができる。

(取材協力:トヨタ2000GTオーナーズクラブ 瀬谷孝男さん)