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脳天までシビれる「サウンド」で世界中を魅了! ホンダの「伝家の宝刀」VTECの歴史

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TEXT: 山崎真一(YAMAZAKI Shinichi)  PHOTO: Honda、Auto Messe Web編集部

リッター100ps・8000rpmを許容する「夢のエンジン」だった

 高回転用と低回転用という2種類のカムを油圧で切り替え、1クラス上の性能と日常域の扱いやすさを両立するホンダの可変バルブタイミング・リフト機構「VTEC」。1989年に2代目インテグラに搭載されたB16A型エンジンで一躍脚光を浴び、その後、スポーツモデルを中心にバリエーションを拡大&さらなる高性能化が推し進められた。その結果、スポーツユニットの代名詞としてのイメージが定着したが、ホンダがVTECに求めたのは単なるパフォーマンスエンジンではなかった。その進化の歴史をひもといていくことにしよう!

VTEC初搭載車はシビックでもNSXでもなく、2代目の「カッコインテグラ」

【DOHC VTEC_1989年 インテグラXSi】

 VTECの元祖であり、全域で気持ちよく吹き上がるスポーティなエンジンを目標に開発。最初に搭載されたのは2代目インテグラで、1.6リッターの自然吸気(B16A型)ながらリッター100psを超える160ps/15.5kg-mに到達。このスペックは当時クラス最強であったZC型の130psだけでなく、ミラージュやレビントレノの過給機付き145psをも大きく上回ったことがニュースだった。VTECの登場により、テンロクのパワーウォーズはさらに過激さを増すこととなる。

 システムはバルブを押し下げるカムとロッカーアームを従来の1種類から低回転用と高回転用の2種類とし、前者の間に後者を挟む形でレイアウト(カムとロッカーアームは従来の2本ではなく3本ある)。ロッカーアームに内蔵された2つのスライドピンを回転に応じて油圧で作動させ、低回転はカム山の低い左右の低回転用カムで押し下げる(従来エンジンと同じ。高回転用カムとロッカーアームは空振り)ことでバルブの開きを少なくしている。高回転では3つのロッカーアームをスライドピンでつなぎ、カム山の高い高回転用カムで押し下げ、バルブの開きを多くする。これにより、どの回転域でも最適な吸入空気量を取り込むことに成功したのだ。

 この吸気と排気のバルブタイミングとリフト量を同時に変えられる世界初のメカニズムであるVTECにより、低回転から十分なトルクが得られ、カムが切り替わった高回転では2リッタークラスに匹敵する飛躍的な性能向上を果たした。このB16A型以降に登場する初代NSXのC30A型、タイプR系のB18C型/B16B型、S2000のF20C型などスポーツモデルに搭載されるVTECは一部仕様変更はあるものの同じ系譜だ。 ちなみにヘッドカバーに描かれたVTECロゴ初期のB16A型のみかなり小さく控えめだった。

VTECの大衆化第1号は1.6リッターの名機ZCに匹敵する高性能と低燃費を発揮!

【SOHC VTEC_1991年 シビックVTi】

 DOHC VTECにより、高性能ユニットとして認知されたことを受けて、ホンダは1991年から、VTECの大衆化を進めていく。その第1号エンジンが、5代目シビックのVTiに投入されたD15B型だ。もともと燃焼効率のいいセンタープラグ方式のSOHCでありながら、4バルブを採用するなどメカニズム的に凝っていた高効率エンジンに、VTECをヘッドにドッキング。

 ただし、VTEC機構は吸・排気両方ではなく、吸気側のみで、高効率化とコストのバランスを取った。それでも、先代の高性能ユニットであるDOHC16バルブのZC型に匹敵する130ps/14.1kg-mを達成しているから、VTEC恐るべしである。最終的にはローラーベアリングやダイレクトイグニッションなどの新技術を採用するなどさらなる高効率化を果たしている。

高性能ではなく、エコノミー&エコロジーを追求した希薄燃焼エンジン

【VTEC-E_1991年 シビックETi】

 SOHC VTECと同時に5代目シビックETiに投入されたのがVTECの技術を低燃費、排ガス低減に応用したエコエンジンであるVTEC-E。ベースはSOHC VTECと同じD15B型だが、低回転時に吸気側のバルブを強制的に閉じ、独自のポート形状で吸気の流速を高め、22.0という空燃比で希薄燃焼を実現。

 これにより、1.5リッターでありながら、当時の軽自動車に匹敵する20.5km/L(パワステ付きは20km/L)の低燃費を実現。同時に排出ガスも低減するなど、来るべき環境時代を見据えたものだった(タイヤも今でいうエコタイヤが採用されていた)。

 高回転では閉じていたバルブを開き、4バルブとすることで必要にして十分なパワーとトルク(94ps/13.4kg-m)を達成。パフォーマンスに注視されていた時代であったため、販売には結びつかなかった。

バルブの切り替えが2段階から3段階へ。技術の融合でさらにハイメカには進化

【3ステージVTEC_1995年 シビックVTi】

 SOHC VTECとVTEC-Eの技術をミックスさせたシステムで6代目シビックVTiに採用。低回転では吸気バルブの片側を休止し、リーンバーン運転。常用域では低速カムが作動、高回転では高速カムでパフォーマンスを引き出すとこれまでの2段階可変を超えた3段階可変でバルブ制御をしている。  そのため、吸気側に形の異なる3種類のカム、2つの油圧経路を持つロッカーシャフト、2つの油圧ピストンを内蔵した3種類のロッカーアームを持つなど、DOHC VTECの上を行くハイメカなのだ。

 出力は従来のSOHC VTECと同等で、VTEC-Eを超える20.2km/Lの低燃費を実現。ベースはこれまでと同じD15型ながらが、実用エンジンとして燃費と出力をさらなる高みに引き上げている。3ステージVTECとしては1代限りで終わったが、7代目のシビックハイブリッドで3ステージVTEC+IMAとして復活した。

VTEC+VTCのコンビで軽からスポーツエンジンまで自在に対応

【i-VTEC_2000年 初代ストリーム】

 2000年に発売された初代ストリームに初採用。スポーツモデルではなく、ミニバンへ最初に搭載されたことで、スポーツエンジンイメージから脱却するキッカケとなる。メカポイントは従来のバルブの可変量を制御するVTECに、新しく連続可変バルブタイミング・コントロール機構を持つVTC(バルブタイミングコントロール)を組み合わせたことで、大きくいえば1つのエンジンで、スポーツモデルだけでなく、軽自動車からプレステージセダンまで、車種、カテゴリーに求められるベストなエンジン特性に仕上げることが可能となったことだ。

 これは電子制御技術の進化も大きく貢献しており、現在もホンダを支える主力エンジンとなっている。i-VTECはのちに気筒休止システムや電動VTC、直噴、バルブ休止システムなどを採用するモノもあるが、現在は総称してi-VTECと呼ばれている。

次世代のダウンサイジングエンジンはVTECのようでVTECじゃない!?

【VTEC TURBO_2013年 ステップワゴン】

 自然吸気エンジンの最高峰の誉れ高いVTECに過給機(直噴ターボ)を組み合わせた、クルマ好きにとって夢のコラボレーションエンジン。チューニングショップではホンダ系ショップがチャレンジしていたが、メーカー謹製としてマーケットに投入されたのは2015年だ。

 4代目シビックタイプRに搭載された歴代最強のパフォーマンス系エンジンであるK20C型2リッターターボ(310ps/40.8kg-m、現行車は320psまでパワーアップ)ばかりに注目が集まるが、本来は次世代向けのダウンサイジングエンジンで、6代目ステップワゴンの1.5リッターエンジンが初搭載だ。現在は2リッター、1.5リッターのほかに1リッター(国内はヴェゼルに2018年に搭載、欧州ではシビックにも採用されている)も存在する。

 ただし、1.5リッターと1リッターはVTECを名乗っているものの、吸・排気にVTCを採用するのみでVTEC本来の可変バルブタイミング・リフト機構は備わっていない。2リッターも自然吸気時代の吸・排気の両方ではなく、排気系のみにVTECを採用。吸気側はターボで過給することで十分な吸入空気量を取り込むことができるため、必要がないのだ。排気側のVTEC採用は排ガスをスムーズに抜くことで、ポンピングロスやノッキング低減している。

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