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「2位以下は負け、じゃなかった」チェアウォーカー長屋宏和さんが今もなお「モータースポーツ」にこだわる理由

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TEXT: 先川知香  PHOTO: 長屋宏和/Auto Messe Web編集部

 

「2位でも3位でも喜べていたら、もっと違ったかもしれない」

 レースをやっていた当時の長屋さんは、1位だけが勝ちで2位以下は負けだと思っていたから、悔しい記憶のほうが多く残っているという。

「2位でも3位でも喜べていたら、もっと楽しい記憶になっていたのかな?と、今となっては思うんです。だから、K-TAIに出た時も悔しい記憶の方が大きくて……。順位が付くことで負けるのが嫌なので。でも、周りの人たちが完走をしたことに喜んでいる姿を見て、完走することにこんなにも意味があるという事実を知ったんです。事故をする前はそんな感情はなかったので、当時もこういう気持ちを持てていれば、楽しくレースができたのかな? と思います」チェアウォーカー長屋宏和

「でもそうなると、ただ楽しかったというだけで、結果を残せずに終わっちゃうのかもしれませんが、それは今となっては分からない。1位じゃなくても喜べていたら、次はなかったかもしれないし、悔しい気持ちがあったからこそ頑張れた部分もあるので、完走することの喜びを知った今の自分で、もう一度F1を目指してみたかったです」

 2位以下は負け。この言葉を聞いて、世界で20人程しか手にすることができないF1のシート獲得を目指していたレーシングドライバーとしては、必須のように思えるこの負けん気の強さが間違いであると、筆者にはどうしても思うことができなかったが、確かに2位・3位でも喜べる心の余裕があれば、レーシングドライバーとしての長屋選手は、今なおレースを続けることが出来ていたかもしれない。しかし、驚くほど大きな金額が動くプロモータースポーツの世界は、そんなに甘いものではないことも事実で、F1ドライバー長屋宏和は実現しなかったのではないかと思う。チェアウォーカー長屋宏和

「だから、今教えている若手には、2位でも3位でも、自分の実力より少しでも前でチェッカーを受けたら、褒めてあげるようにしています。悔しいね。残念だったね。っていう言葉よりも、前向きにしてあげることのほうが必要なのかなって思って。ダメな中でもいいところを探して、自信を付けさせてあげたいと思っています」

 

「前向き」にしてあげることの大切さ

 当時の長屋さんに必要だったのは、この考え方を持つアドバイザーだったのではないだろうか。レーシングドライバー時代の長屋さんの周りに、現在の長屋さんと同じ考え方を持つ大人が付いていれば、あの事故は起こらなかったかもしれない。勝ちだけを求めるレーシングドライバーのクールダウンとインプット・アウトプットを行いながら、どんなに不利な状況でも冷静な走りができるドライバーを育てることこそが、危険と隣り合わせのモータースポーツで、最大限の安全性を担保できる方法なのではないだろうか。

 そして、長屋さん自身が言うように、その役割は勝ちだけを求め続けたレーシングドライバー長屋宏和と、チェアウォーカーとなってもレースに挑戦し続け、完走することの大切さを知った長屋さんというふたつの顔を持つ長屋さんにしかできない役割なのだと思う。

 長屋さんは、車イスの生活となってもなおモータースポーツと関わり続けることで、その存在を持って意識的・無意識的の両方で、その事実を伝え続けているのだ。

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