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「できないなんて、絶対におかしい」チェアウォーカー長屋宏和さんが語るファッションとレースの「共通点」とは

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TEXT: 先川知香  PHOTO: 長屋宏和/Auto Messe Web編集部

 

自身のブランド「ピロレーシング」立ち上げのきっかけ

 事故に遭う以前に好きで履いていたデニムが履けなくなったことが悔しくて、銀座で老舗の洋服リフォームショップを営んでいる母親に相談。初めは、自分のための服を作っていたという。しかし、自分のための洋服づくりは難航することになる。

「『もっとこういう風にしたいのに』という気持ちが洋服に見つかったので、まずは自分が気に入るものを形にしていくことから始めました。自分で納得して着られるレベルまで、洋服作りが到達したときに、周りの人が自分も欲しいと言ってくれたので、この洋服を自分だけが着るのではなく、同じ悩みを持つ他のチェアウォーカーの人たちに、喜んでもらいたいと思ったんです」

 チェアウォーカーだからと言って、好きな洋服を着れないなんておかしい。長屋さんの話を聞いていると、すべてにおいて、この考え方がベースになっているような気がした。長屋さんにとって、チェアウォーカーだからカートに乗れないとか、レースができないとか、好きな場所に行けないことは、すべて納得のいかないおかしなことなのだ。

 事故などのさまざまな理由でチェアウォーカーとなってしまい、不自由に感じていることに対して、長屋さんは「できないなんておかしい」と疑問を持って立ち向かっていく。これが、どんな世界でも世界一を目指したことのある人のマインドなんだと、改めて感心させられた。挑戦しないで諦めることは、自分で自分の可能性を潰すことと同じなのだ。そして、ファッション業界において長屋さんには最強の味方であり、相談相手が身近にいたのである。

「うちの母親は、もう40年ぐらい洋服のリフォームを仕事にしていて、イタリアのファッションデザイナー、ジョルジオ・アルマーニが来日する際には必ず呼ばれて、モデルさんのフィッティングを手伝ったり、モデルさんのイメージに合わせて洋服を作り直すというような仕事をしている人なんです。自分はこうなるまで、近過ぎて分からなかったのですが、洋服の世界ではスゴイ人だったみたいなんです」そんな最強のパートナーと共に試行錯誤を繰り返し、自分で納得して着られる服を作ることに成功。同時に、車イスファッションブランド「ピロレーシング」を立ち上げるに至ったのだ。

「僕の仕事は考えることなので、レースもそうだし洋服もそう。自分が考えたことで結果を残すことが、自分のやらなきゃいけないことだと思っています。だから洋服もレースも、何もかもすべて自分の考えをどれだけ形にできて、近付けられるかだと思うんです。例えば、イメージしてでき上がってきた洋服を履いてみて、理想に近づけるために修正をするやりとりだとか、そういった部分も的確に伝えられないと、時間とお金が無駄になってしまう。

 そういう部分でもレースをやっていた経験が端々に生きていて、コンマ何秒という単位での時間軸だったり、自分自身のモチベーションの持っていき方だったり、いろいろと教わったと思います。レースがなかったら、今の自分もこの考え方もなかったと思います。

 もちろん逆に、レースをやっていたころに、この洋服を作る上での考え方を知っておけば役に立ったということもたくさんあります。例えば、もっと気さくにいられれば良かったなって。当時の僕はかなりツンケンしていたと思うし。自分のチームが1番だと思っていたし、チームオーナーとか、周りの人とだけと仲良くなればいいと思ってた。だから、愛想は悪かったし、他のドライバーと話をしたこともなかった。まあ、そういう時代でもありましたしね」

みんなと協力しながら目標を達成していく楽しさを知る

 長屋さんはレーシングドライバーとしての負けん気の強さと不屈の精神を持ち続けながらも、チェアウォーカーとしていろいろな人に助けられながら、協力することの大切さを学んだ。みんなと一緒にひとつずつ目標を達成していく楽しさや喜びを知ることで、現在の何事に対しても前向きなチェアウォーカー長屋宏和を作り上げてきたのだ。

 もちろん、チェアウォーカーとしてつらいことはたくさんあったと思うし、その大変さは筆者の想像を絶するレベルだと思う。しかし、五体満足でも不満ばかりを口にするだけで、つまらなそうな人生を生きている人が溢れるこの世の中で、どんな状況に陥っても人生を常に楽しむ方法を知っている人は強い。長屋さんの話を聞いて、改めてそう強く感じることができた。

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