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マツダ、奮闘するも夢破れる! 「シャンテ・ロータリー」が実現しなかったワケ

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: MAZDA/原田了/Auto Messe Web編集部

「歌わなかった」シャンテだけど、とても眩しく映った

 ロングホイールベースの効果は居住空間の拡大につながっています。全長3m×全幅1.3mという軽自動車枠があるので、絶対的な室内長や室内幅には限りがありました。ですが、後輪が後方に移動したことによって、外観から想像する以上に後席の実質的なスペースは拡大されていました。

 デザイン的にも当時のライバルとは一線を画したものがありました。ロングホイールベースの効果も手伝い、伸びやかなラインでまとめられたサイドビューは流れるような印象があります。エッジにメッキの加飾部分を残しながら高級感を演出するボディ同色バンパーを採用していたこともあって、フロントビューも同時代のライバルに対して圧倒的な存在感を放っていました。シャンテのリヤビュー

 ただし「REを搭載するのでは」との期待が大きかっただけに、レシプロ・エンジン、それもキャロルの4ストローク直列4気筒に比べて随分ロースペックな2サイクル2気筒を搭載していたことで期待外れに終わった感は否めませんでした。それもあってか、REのスペシャリストとして知られたRE雨宮では、このシャンテにREを搭載したチューニングカーを製作しています。

 1981年に製作された1号機と2号機は、RX-7用の2ローター12Aターボを搭載、派手なオーバーフェンダーを装着していました。もちろん、オリジナルのシャンテは軽自動車規格でしたから全幅が1.3mと狭かったのですが、オーバーフェンダーを装着したことで狭小感がなくなり、かえって完成度が高くなったことを覚えています。

 また2016年の東京オートサロンには自然吸気の13Bペリフェラルポート仕様を搭載した、第二世代となるスーパーシャンテも発表しています。RE雨宮の制作したスーパーシャンテ

 こちらもオーバーフェンダーで狭小感を打ち消していましたが、そのオーバーフェンダーには熱気抜きのルーバーを設けるなど随分モダンなルックスとなっていました。いずれも“雨さん”の愛称で親しまれているREスペシャリスト・雨宮勇美さんの、幻に終わったシャンテ・ロータリーに対するオマージュだったのだろうと理解されています。シャンテのエンブレム

 シャンテという車名はフランス語のChantez(歌う)から命名されたものです。残念ながら、当初企画されていたRE搭載の軽乗用車としては実現せず、ロータリーでは歌えなかった悲運の1台、ということになりますが、個人的にはとても眩しく思えたことがありました。それは学生時代、卒業を前にしてクラスの友人が新車のシャンテを手に入れたときのことでした。自分で選んだ道だからだれにも文句を言う筋合いではなく、また自分自身でも納得しているのですが、卒業単位を残して5回生になることを決めたわが身にとっては、卒業と就職が決まった友人が手に入れたピカピカの新車が、とても眩しく映ったことを今も鮮明に覚えています。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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