ドリフトシーンで記憶に残る不人気マシンを振り返る!
日本発祥のクルマ文化として、今ではれっきとしたモータースポーツとして確立されたドリフト。その昔は峠や埠頭などで、路面にブラックマークを付けながらスキール音を撒き散らす不届きモノとして煙たがれていた。だが、1990年代中ごろには専門誌が創刊されると、主戦場がストリートからサーキットに変わり2000年代にかけて一大ムーブメントとなった。 横滑りさせながらクルマを自在にコンロールする妙技を競い合う「ドリフター」たちはもちろん、ドリフト文化を彩ったのは多種多彩なクルマたちも同様だ。「頭文字D(イニシャル・ディー)」など走り屋文化をクローズアップした漫画やアニメ&映画の影響もあって、トヨタAE86型カローラレビン&トレノがドリフトベース車として絶大な人気を誇った。 ドリフト走行の特性上、ベース車両のほとんどがFR車で日産のS13〜15世代のシルビアや180SXを筆頭に、R32型スカイラインやマツダのFC3S&FD3S型RX-7などの2ドアクーペが主流であった。さらに比較的安価で流通していたトヨタの80〜100系のマークⅡ三兄弟(マークⅡ/チェイサー/クレスタ)なども、少しずつ人気車両として使われるようになっていった。
ちなみにAT車でもドリフトはできるが、ドリフトテクニックのひとつである「クラッチ蹴り」の必要性を考えるとMT車がやはり必須であった。
意外性のあるクルマで参戦することで話題をさらった迷車たち
サーキットでタイムを競い合う競技とは一線を画すドリフトは、ほかのスポーツで例えると新体操やアイススケートなどの審美系スポーツに近い。いかに華麗にドリフトテクニックを決めるかが、競技における審査の基準となっていた。 そのためテクニックでライバルに差をつけることはもちろんのこと、意外性を狙った車種選びが行われていたのもドリフトの魅力で、ここでは話題性に長けた「そんなのアリ?」なドリフトベース車を振り返りたい!
おっさん臭強めでツアラーVが未設定だった【トヨタJZX100型トヨタ・クレスタ】
決して不人気モデルではなかったものの、ドリフトシーンがもっとも熱かったころにデビューした100系では圧倒的におっさん臭が強めだったクレスタ。90系では三兄弟のすべてに1JZ-GTEエンジンを搭載した「ツアラーV」が存在していたが、100系ではクレスタだけが「ラルーンG」として販売された。 搭載エンジンは、初代スープラ2.5GTツインターボにも採用された2.5L直6DOHCツインターボの1JZ-GTEで、最高出力280ps/6000rpm、最大トルク38.5kg-m/2400rpmのハイペックを誇った。ちなみにマークⅡ、チェイサーの各ツアラーVには5速MTが設定されていたが、クレスタ・ラルーンGには5速MTの設定はなかった。ドリフトベース車で使われていた100系クレスタの場合、ミッションの載せ替えが行われた車両が多かったのだと思われる。