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いすゞ「最初で最後」の乗用車!「イルムシャー」にも心躍ったセダン「アスカ」を振り返る

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎 七生人

横置きエンジンを活かした室内空間も魅力のひと

 ともかくそういう経緯で生まれたアスカ。実車は月並みな表現だが、クリーンでシンプルなセダンだった。デザインはまったくのオリジナルで、つぶさに見ればボディ骨格をはじめ、ウインドウガラスなど他車との共通性も見出せた。 全長×全幅×全高=4440mm×1670mm×1375mm、ホイールベース2580mmのボディサイズは国産ミドルクラス相当ながら、エンジン横置きとなるFWDの利点を最大限に活かした、余裕のある室内空間も魅力のひとつ。いすゞアスカのカタログ アスカが現役の時代に筆者も試乗や撮影で実車を何度か借り出したことがある。インパネに向かって立ち上がる、センターコンソールがなく足元のスッキリした運転席まわりや、上級車並の広い室内に「ほほぉ」と感銘を覚えたもの。いすゞアスカのインテリアのカタログ センターアームレスト部に配置されたパワーウインドウスイッチ(ドアまで配線を回す手間とコストが省ける)、初代ピアッツァにも採用されていた、操舵力切り替え式のパワーステアリング。そして、全車に標準の前輪ベンチレーテッドディスクブレーキ、シンプルでスペース効率の高いコンパウンドクランク式リヤサスペンションなど、合理的で有効な装備、機能もポイントだった。いすゞアスカのインテリアのカタログ 発売当初からエンジンは5機種と、豊富なラインアップだった。フラッグシップは2Lターボで、ほかに2LのNA(2機種)、1.8L、さらにホットプラグ採用の2Lディーゼルが用意された。のちにディーゼルターボも設定している。

クラッチペダルのないMT「NAVi5」も投入された

 メカニズムのトピックとして見逃せないのが、1984年8月に登場した“NAVi5(ナビファイブ)”だ。これはクラッチ&シフト操作をクルマに任せられるロボタイズドMTのひとつで、D5、D3の各ATモードのほか、1、2速固定の走行モードを用意したもの。コンピュータ、センサー、アクチュエーターで構成するシステムは、現在のシングルクラッチ方式の2ペダル車と同様だ。とはいえ当時、一般的な国産市販車ではまだ珍しく、白く四角いシフトノブだけを手で操作して変速、クラッチペダルのないMT車の走行感覚を恐る恐る試した第一印象は今でも記憶に残る。いすゞアスカのNAVi5のカタログ

5速MTのみの設定だったイルムシャー

 もう1台、ピアッツァ、ジェミニ同様に設定されたイルムシャーも忘れられない存在。搭載エンジンは2Lターボ(4ZC1型)で、これに5速MTのみの設定というのが何ともコダワリを感じるクルマだった。外装ではピアッツァ・ネロのような角型4灯ヘッドランプをはじめ、色の選択が可能なフルホイールカバー付きのアルミホイール、リヤスポイラー、irmscherのデカールを装備。いすゞアスカイルムシャーのカタログ インテリアのはモモのステアリングとレカロシートが奢られた。もちろんサスペンションは、タイヤの接地性を最重視したセッティングとし、フロントスプリングのばね定数、ダンパーの減衰力は下げる方向で仕立てられ、セダンらしい乗り心地とスムースな走りをモノにしたクルマだった。いすゞアスカのイルムシャーのカタログ いすゞ・アスカは“最初“で”最後”のいすゞの乗用車だった。つまり、最初というのはGM・Jカーをベースとしたことによるいすゞ車初のFF車だったこと(FF・2代目ジェミニの登場はアスカより遅い1985年のこと)。“最後”は、スバル・レオーネ、ホンダ・アコード(2世代)とOEMで存続するも、いすゞの乗用車撤退の決断から、2002年を最後にカタログから消えたこと、だ。それまでおよそ半世紀続いたいすゞの乗用車の歴史は、アスカで幕が下りたのだった。

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  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 1958年生まれ。大学卒業後、編集制作会社を経てフリーランスに。クルマをメインに、写真、(カー)オーディオなど、趣味と仕事の境目のないスタンスをとりながら今日に。デザイン領域も関心の対象。それと3代目になる柴犬の飼育もライフワーク。AMWでは、幼少の頃から集めて、捨てられずにとっておいたカタログ(=古い家のときに蔵の床が抜けた)をご紹介する「カタログは語る」などを担当。日本ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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