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マツダ以外にもあった「ロータリー・エンジン搭載車ヒストリー(海外編)」

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

 

【Citroen M35】

さて、「NSUヴァンケル」は、20社以上の世界中のメーカーとライセンス契約を結ぶことになったが、市販モデルをリリースしたのは、マツダを除くとシトロエン1社のみだった。NSUと共同でヴァンケル・エンジンを生産供給する「コモトール」社を設立するなどヴァンケル・エンジンのプロジェクトを精力的に進めていたシトロエンは、まずは1970年に、テストカーとなる『シトロエン M35』を完成させると500台の制限付きでモニター販売を開始。これはコンパクトカーの「アミ8」をベースにした2ドアクーペで、駆動系やハイドロニューマチック・サスペンションなど、「アミ8」よりも上級モデルのコンポーネントを転用するなど、技術的に随分奢った設計となっていた。ロータリーエンジン、シトロエン、メルセデス、NSU、ヴァルケン

Citroen M35(1969)

こちらもオートビジョン博物館で撮影したシトロエンのM35。フェンダーにシリアルナンバーが描かれているのが特徴で、ここオートビジョンの収蔵車両はNo.32号車だった。ロータリーエンジン、シトロエン、メルセデス、NSU、ヴァルケン

ちなみに、シトロエンの本社が管轄しているシトロエン歴史遺産アカデミー(Conservatoire de patrimoine de Citro?n)には、当然のようにNo.1号車があり、南仏のカステラーヌ(CasT?llane)にあるシトロエン博物館(Mus?e des Citro?n)にはNo.388号車が収蔵されている、といった具合だ。

 

【Citroen GS Birotor(Citroën GZ)】

続いてシトロエンでは、73年に本格的な量販車となるべく『GSビロトール(GS Birotor)』を登場させる。
文字通り、シトロエンの新世代コンパクトカーである”GS”をベースに、2ローターのエンジン(Birotorは2ローターの意)を搭載。500cc×2ローターのヴァンケル・エンジンは100馬力を超える最高出力を絞り出し、多くの面で高い評価を得ながらも、GSにとって唯一の弱点とされてきたアンダーパワーを解消させる。2気筒(2ローター)をフロントに横置きに搭載したFF駆動のパッケージや、ダブルウィッシュボーン/トレーリングアームの形式をもった前後サスペンションを油圧で制御するハイドロニューマチック・サス。さらに4輪ディスクブレーキなど最先端技術が多く盛り込まれた”GS”を全方位最新最強のクルマに仕上げることになった。ロータリーエンジン、シトロエン、メルセデス、NSU、ヴァルケン

だが、こうして期待とともに誕生した『GSビロトール』だったが思いの外、短命に終わることになる。「NSU Ro80」と同様にオイルシールの不良などのメカニカルな問題に加え、デビュー直後に第一次オイルショックに見舞われたことが致命的だった。1974年にシトロエンを吸収したプジョーも、ヴァンケル・エンジンの将来性に疑問を持っていたようで、プロジェクトはとん挫。800台余りが販売されただけでモデルライフを終えることになる。

Citroen GS Birotor(1972)
オートヴィジョン博物館で撮影したGS ビロトール。”M35″と同様、フランス国内の博物館ではポピュラーな存在だ。ちなみに、オートヴィジョン博物館のあるアルトゥルスハイムは、ミュンヘンの北西、約350㎞の地にあってクルマで走っても3時間半弱。最近、マツダ車のプライベートコレクションを開陳したマツダ・クラシックカー博物館フライ(Mazda Classic Automobil-Museum Frey)のあるアウグスブルク(Augsburg)からもクルマで3時間弱だ。さらにはNSUと統合されて成長発展を続けたアウディの本拠地であるインゴルシュタットからも遠くないから、ロータリー・エンジンのファンにとっては絶好の、聖地巡りツアーとなるはずだ。

 

【Mercedes-Benz C 111】

これまでにヴァンケル・エンジンを搭載して“市販”されたのは以上の4モデルのみ。しかし、ほかにもメルセデス・ベンツが技術開発用に製作したプロトタイプ(試作車)もヴァンケル・エンジンを搭載していた。
『C111』と命名された試作車は、ガルウィングドアを持つ2シーターの2ドアクーペ。1969年のフランクフルトショーで披露された初代モデルは280馬力の3ローター・エンジンをミッドシップに搭載していたが、半年後の70年ジュネーブショーでは350馬力の4ローターへとバージョンアップした2代目が登場している。ヴァンケル・エンジンの開発が中断されたのちにはターボ・ディーゼル・エンジンに換装されたC111-ⅡDに移行。ヴァンケル・エンジンのプロジェクトそのものがとん挫してしまったが、もし彼らが東洋工業(当時。現マツダ)と同様に熱意をもってエンジン開発を続けていたなら、また違った展開もあったろうと、考えずにはいられない。ロータリーエンジン、シトロエン、メルセデス、NSU、ヴァルケン

Mercedes-Benz C 111(1970)
こちらは2015年のレトロモビルで撮影したメルセデス・ベンツ『C111』。ダイムラー・ベンツが研究開発用に試作したもので、こちらは4ローターのヴァンケル・エンジンを搭載した2代目にあたる。このときはベンツ・クラシック御一行ツアーでパリに遠征していたが、普段はシュトゥットガルトにあるダイムラー博物館に展示されている。ロータリーエンジン、シトロエン、メルセデス、NSU、ヴァルケン

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  • ロータリーエンジン、シトロエン、メルセデス、NSU、ヴァルケン
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  • 原田 了(HARADA Ryo)
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  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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