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ボディの大型化は避けられない? 国産5ナンバー車が絶滅の危機に瀕している理由

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TEXT: 戸田治宏  PHOTO: Auto Messe Web編集部

5ナンバー車の登録が激減

 海外で先行デビューし、日本でも今年フルモデルチェンジされるトヨタ・カローラセダン&ワゴン(以下カローラ)。さまざまな話題の中でも注目を集めるのが、ボディサイズだ。

 カローラは10代目(2006年)から、海外向けが国内の「3ナンバー」に当たるワイドボディを採用。一方、国内向け(アクシオ&フィールダー)はプラットフォームを専用にすることで、「5ナンバー」枠に収まるナローボディを死守してきた。

 だが12代目となる新型は、TNGAプラットフォームを海外向けと共用。国内向けカローラも3ナンバー車として生まれ変われば、唯一アクシオ&フィールダーが守り続けた5ナンバー車が、このクラスからついに姿を消すことになる。それは「大衆車=5ナンバー」という美徳の終焉を決定づける出来事と言ってもいいのだ。

 国内乗用車販売台数の車種別比率は、この四半世紀で大きく様変わりした。1993年は小型乗用車(5ナンバー)65.3%、普通乗用車(3ナンバー)16.3%、軽自動車18.4%で、5ナンバー車が断トツ。しかし、昨年の2018年には同じく29.9%、36%、34.1%と、5ナンバー車がもっとも少なく、激減している(自工会調べ)。

 少なくとも90年代まで、国内ユーザーに一番身近でメジャーな存在だった5ナンバー車が、どうしてここまで減ってしまったのか。前述のデータで一目瞭然なのは、3ナンバー車と軽自動車が増えている点だ。

 3ナンバー車が増加するきっかけになったのは、89年の税制改正。それまで3ナンバー車は贅沢品という扱いで、5ナンバー規格(エンジン排気量は2000cc以下、ボディサイズは全長4700mm・全幅1700mm・全高2000mm以下)のどちらか一つを超えるだけでも、2リッター車で3万9500円の自動車税が8万1500円に上昇。しかし、改正では5ナンバーや3ナンバーという分類ではなく、エンジン排気量のみへの課税に見直し。また2リッター超の税額も500ccごとの区分けとなり、4.5リッター以下は大幅な減税が実施された。

 贅沢だった2.5~3リッターエンジンやワイドボディが身近になり、バブル景気の勢いも重なって3ナンバーブームが到来。しかしバブルが弾けると、3ナンバーへの大型化はユーザーの目に“肥大化”とも映るようになる。事実、マツダ・カペラ(94年)や日産シルビア(99年)など、3ナンバー化された先代(カペラはクロノス)から5ナンバーに戻されたケースもあり、国内適正サイズという美徳は世間一般にまだ根ざしていた。

5ナンバーサイズ車の減少で軽自動車が台頭

 国内乗用車販売は、90年をピークに明らかな下降線を辿る。そして2000年代に入ると、それまで5ナンバー車が主流だったC/Dセグメントにも3ナンバー車が台頭しはじめる。国内市場の規模縮小に伴って主力市場を海外に移し、そこに軸足を置いた商品に国内向けを統合したためだ。

 コスト・時間の面で開発の効率アップを図る、グローバル化の強力な推進。冒頭に挙げた国内向けカローラも、その流れに抗うことはできなくなったわけだ。5ナンバーや3ナンバーといった規格がない海外では、ボディワイド化の傾向にある。

 前述の販売データでは、14年に3ナンバー車が5ナンバー車を上回ったが、前年の13年には軽乗用車が5ナンバーの登録車を一気に抜いている。14年には、ダイハツ・タントがトヨタ・アクアを抜いて年間販売ランキングの総合首位に。直近の18年は、ホンダNボックスを筆頭に軽自動車がベスト4を占めた。

 軽自動車人気の理由として考えられるのは、スーパーハイト系ワゴンの充実や低燃費化といったクルマ自体の進化。それと、ユーザーが実感できない景気回復や、ますます進む高齢化といった社会背景もひとつ。そして何よりも5ナンバー軽自動車の自動車税は15年4月から1万800円(従来は7200円)に引き上げられたが、それでも普通車でもっとも安い1リッター以下(2万9500円)より圧倒的に安い。重量税や任意保険も同様。

 軽自動車は乗車定員が一般的なコンパクトハッチより少ない4名で、最近は車両価格も一概に安いとは言えないが、維持費のメリットは今も非常に大きいのだ。さらに、もう一つ。これは3ナンバー車の増加と表裏一体の関係ともいえるが、5ナンバー車自体の3ナンバー車化も一因だろう。

 わかりやすい例が4代目(2003年)のスバル・レガシィ。開発段階では国内最適サイズとして5ナンバーボディの継続を検討したが、最終的には5ナンバー規格より30mm幅広い全幅1730mmの3ナンバー化に落ち着いた。狙いは、車重増を抑えながら側面衝突安全性を向上させ、また取り回し性を左右する前輪切れ角を確保するためである。

 さらにボディのワイド化には、トレッドやタイヤ幅の拡大による運動性能向上、広いスタンスによって安定感や躍動感のあるスタイリングが可能、といったメリットもある。4代目レガシィのサイズ感を踏襲したレヴォーグも、プラットフォームをWRXと共用する事情もあるが、基本的に日本専用車として開発されながら全幅1780mmとワイドな欧州プロポーションを採用している。

 エンジン排気量を2リッター以下に抑えたいユーザーの志向は、今も強い。が、日本車もCセグメント以上はほぼ3ナンバー車となり、それがユーザー間でもほぼ当たり前となった現在、5ナンバーのボディサイズにこだわる必要性は極めて低くなっているのだ。

 ただし、登録車で国内最大市場のBセグメントは、今も5ナンバー車が主流。これには、全長が短いため5ナンバー幅でもワイドプロポーションを確保でき、また「取り回しが苦手な女性がひと目でコンパクトと安心できる記号性として」(メーカー開発者)といった理由がある。だが、欧州勢はここでもワイドボディが主流で、ミニやVWポロなどは国内でも人気を集める。日系5ナンバー車にとっても、Bセグが今後も“聖域”であり続けるとは限らないのだ。

 その下にはまだAセグがあり、5ナンバー車が絶滅することはないが、数がさらに減っていくことは間違いない。そもそも「5ナンバー・3ナンバー」という分類は今や有名無実化しており、そのあり方の検証も望まれる。

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