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5000万円クラスも珍しくない!世界の高級車が高額な理由

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: 妻谷裕二、MBJ、Auto Messe Web

ロールス、ベンツが追究する顧客満足度

 世界を代表する最高級自動車メーカーのブランドスローガンと言えば、ロールス・ロイスの「The Best Car in the World」、キャデラックの「Standard of the world」、デュセンバ-グの「The World’s finest motor car」など、いずれも「我こそは世界一!」と唱えていた。

 これらとはひと味違って、最古参のメルセデス・ベンツは自動車の生みの親の一人であるゴットリーブ・ダイムラーの名言「最善か無か」を社是として定めた。ここには、高級車造りのリーダーらしく、技術と経営両面で業界を指導する立場を意識した自信が伺える。

 加えて、当初から高級車としてスタートし1929年に発表された”マイバッハ12″、そして2002年に高級車として復活した”マイバッハ57・62シリーズ”も忘れてはならない存在だろう(現在はメルセデス・ベンツの最高級ブランドとして位置づけられたメルセデス・マイバッハSクラスが継承している)。

 それではロールス・ロイスとメルセデス・ベンツなどが高級車と言われる所以はなんなのだろうか。「高級車に求められる条件」について触れてみたい。

内装の材質にもこだわるオーナーからの要求

 高級車とは最も高い次元で、技術的に人間工学的に、また趣味的に「最高のバランスのとれた作品」だと言える。各高級車メーカーが大切にしているものには伝統のアイデンティティがある。これはメーカーやそのクルマの顔に値するもので、フロントのグリルやマスコット、エンブレムが代表的なものだろう。

 また、高級車は乗る人の快適性、安全性、利便性を優先させている。すなわち、居住性優先の設計思想を重視しているのだ。某高級車メーカーのエンジニアは、はっきりと「安全と居住性」が最大の決め手と唱えている。室内は居住性にプラスして安全性が高級車には重要で、インテリにも各ブランドのアイデンティティの徹底がなされているのがよく分かる。

 長時間も車内にいるのだから、シートは硬すぎても良くない。逆にソフトなシートは街中の走行にだけ良くてもハイウェイでは安定を失い、不安感も増すばかり。サポート性に優れ、腰くずれのないシートが良いとされている。

 最近の高級車のシートは”本革”を装備するケースが多い。しかし車の前時代である“馬車”における内張りとしては、本来は布・織物の方が高級であると言われ、上質のファブリックや凝った織り方のベロアーが、公式なものとされていた。その時代の高貴な乗り物は、客席は超上級の布張りでルーフ付き、運転席は本革張りと相場が決まっていたのである。

 従って、高級なクルマでもシートは本革では満足しないオーナーもおり、ファブリックやベロアーを希望することが多かったという。コストにして本革と同等、またはそれ以上で「張りのある座面の耐久性」が要求された。フォーマルリムジンであれば走行距離は短いが、ビジネス・ラグジュアリーカーとなると、この耐久性が重要視されなければならなかった。

 また、内張りはシーリング(天井)、そしてカーペットにまで、あらゆる温度、湿度等に対応するよう計算の基に用意されており、カスタムメイクのリムジンコーチワークであるなら、使用する毎にシートのセットを交換するように、スペアーの内装をセットで持っていた。特にパイプや葉巻を愛用するオーナーの場合、シーリングの交換は常識的なものであったという。

 さらにビジネス志向ではクルマは必需品だったため、流行に左右されない生地で耐久性が重視された。この点から言うとダッシュボードのデザインは最近では凝り過ぎの感があると言える。

 操作はシンプルが良い。最近は特にエンスージャストでないかぎり、全部理解する事は不可能と言える。事実、理解していなくても高級車は走る、しかも快適にである。たびたびだが最近はどうもサービス過剰としか思えないものが流行しており、またそれが売り物になっている傾向であると言える。

 リムジンのリアシートがAV化し、パーソナルコンピューターをリアコンパートメントにセットしたモデルが多く、時代と共に技術革新は急速に進歩している。特に携帯電話やEメールで用件を済ましてしまう事も多いからだろうか。

 今まではせいぜいリアコンパートメントはフォールデイング・ライテイングデスクとか、パテションウォールを設計した時にカクテルキャビネット、TVラウンジを備える位であったと思う。それであってもセレクター(秘書)を横に座らせて、本当に事務所並に使用される例も少なくなかった。今後は一層リアコンパートメントの演出が多岐に亘って展開されるてゆくことだろう。

 

優れたボディ剛性と信頼のパワーユニット

 パワーユニットはパワフルというより、確実に実用域でのトルク重視となっている。ストレスなしにトップレブまでスムーズに吹き上がるのが良いと言えるだろう。大事なのはオートマチック・トランスミッションとのマッチングであり、ショックがなく好レスポンスで、しかも静かであることだろう。

 走る性能は最近どの高級車でも差が無くなってきた。しかし、その状態で何万キロ使えるのか、音も振動も燃費も少しも変わらず使い続けられるかどうか?即ち、スタイルからパワーから全て、何時までも変わらず使えるかどうかである。この事が一流かどうかの見分けがつけられてしまう分岐点と言える。

 駆動系及び制動系のエンジニアリングがコンピュータライズされて、一段と向上し走る安全性は高くなっている。1.7トン以上のリムジンが真直ぐに走るのは比較的楽だ。しかし、曲がる・止まる事がもっと大切なのだ。直進性は見事に決まっている高級車でも、中低速ですら曲がることについては課題が残る場合がある。つまり、直進より曲がったり、止まったりする事が多いからだ。そして、これらの柱は言うまでもなく優れたボディ剛性であると言える。とにかく高級車が堂々と走るには、しっかりとした足回りが重要なのである。

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  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 1949年生まれで幼少の頃から車に興味を持ち、40年間に亘りヤナセで販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特にメルセデス・ベンツ輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版のカタログや販売教育資料等を制作。またメルセデス・ベンツの安全性を解説する独自の講演会も実施。趣味はクラシックカー、プラモデル、ドイツ語翻訳。現在は大阪日独協会会員。
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