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「スプレーすると走りが変わる?」 天下のトヨタが手掛けた”オカルト”なボディコートとは

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: 清水良太郎

ボディの帯電を抑制して空力性能を向上

 カジキマグロの泳ぐ姿にヒントを得た「エアロスタビライジングフィン」。そして2016年「放電用アルミテープ」といったこれまでにない空力パーツをリリースし、「本当に効くのか?」と大きな話題を振りまいたトヨタが、大阪オートメッセ2020に空力操安アイテム第3弾を大々的に展示していた。今度のアイテムは、スプレー式のボディコート「GRエアロスタビライジングボディコート」である。

 なんと、ボディ表面に塗るだけで空気の流れを整流し、ボディ形状が本来持っている空力特性を一層発揮させるというシロモノだ。原理はトヨタ純正「放電用アルミテープ」と同じで、『液体アルミテープ』として開発されたもの。スプレーをボディに塗布することで、ボディに帯電した静電気を除去して、空力特性をアップする効果があるという。

 空気は+の帯電をし、ボディにも+の電荷を持っている。磁石の斥力(せきりょく)と同じ極同士を近づけたときの反発力と同じことが起きて、本来ボディラインに沿ってきれいに流れてほしい空気が、ボディから剥離。ボディと空気の流れに隙間ができて、そのクリアランスでクルマが上下左右に動き、不安定感や遊びの原因にとなる。

 そこで「GRエアロスタビライジングボディコート」を塗ると、ボディの帯電による悪さがなくなり、風洞実験や、CFD(数値流体力学)通りの空力効果が得られるようだ。狙いが「放電用アルミテープ」と同じだけあって、なんとなく眉唾モンという気がしないでもないが、トヨタの担当者によると効果はかなり体感しやすいとのこと。

「とはいえ、空力関係の影響は速度の二乗に比例するので、街乗り程度ではわからないのでは?」と訊ねると、「GRエアロスタビライジングボディコートは“低速域から違い”が分かります」と言う。

「例えば、団扇。団扇の速度は秒速30cmぐらいですが、空気の抵抗は感じますよね。秒速30cmは時速にすると1.08km。たった1km/hでも、1800mm×1400mmのクルマのボディ(前投影面積)が動けば、微低速でも空気の抵抗はけっこうあります。だから空気の流れがちょっとでもよくなれば、動き出しからだって変わります」とかなり自信がある様子。

 もちろん、ボディ形状によって空力の感度が違うので、効果がわかりやすいクルマもあればそうでもないクルマもあるが、基本的に軽くて足回りが柔らかいクルマほどわかりやすいとのこと。

 またミニバンのようにルーフが長いクルマは、全面に塗布することでリア側のスタビリティが上がりやすく、スポーティモデルはステアリングの初期の応答性が上がりやすいといった傾向がある。車種やドライビングスタイルに合わせ、フロントのみ・リアのみに塗って、セットアップツールとして活用することも可能だ。

 ボディコート剤として艶出し・撥水効果もあるが、それらの一般的なコート剤と「GRエアロスタビライジングボディコート」の決定的な違いは、帯電防止剤の入った“帯電防止コーティング剤”だという点。帯電防止剤とはどんな成分なのか気になるところだが、それについては企業秘密とのことで、教えてもらうことはできなかった。

 1度塗布すると、効果は約1ヶ月ほど持続。「GRエアロスタビライジングボディコート」1本で、トヨタ86のボディサイズで6~7台分塗る容量がある。2020年1月6日に発売になった新製品で、GRガレージや全国のトヨタ販売店で入手可能だ。価格は1本3980円(税別)。

 天下のトヨタが送り出した謎の空力操安アイテム第3弾。オカルトグッズか? それとも画期的なケミカルか? 試してみるのにそれほど勇気は必要ないはずだ!?

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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