【自動運転は本当に普及できる?】ステージアップさせるために見えてきた大きな課題

【自動運転は本当に普及できる?】ステージアップさせるために見えてきた大きな課題

ハンズオフが投げかける法整備などの課題

 2017年、ドイツのアウディが「レベル3」の条件付き運転自動化を導入すると発表をしたことにより、自動運転への期待は一段と高まった。だが、現在にいたるまで法整備などの点でまだ市販に至っていない。

自動運転車のステージ2はBMWの3、7、8シリーズ、X5、X7、日産スカイラインハイブリッド車に装備されたがクルマ以外のインフラなど課題も出た

 その間に、2019年には同じくドイツのBMWと日本の日産が、レベル2の範囲でハンドルから手を放して走行できる「ハンズオフ」機能を実用化し、市販スタート。BMWは3シリーズを皮切りに、7シリーズや8シリーズ、X5、X7に標準装備化させた。また、日産の場合は、スカイラインのハイブリッド車に標準装備。いま、自動運転化の流れはどうなっているのだろう。

BMWとスカイラインで異なる走行条件の違い

 まず、ハンズオフできる走行条件は、BMWとスカイラインでは異なる。

自動運転車のステージ2はBMWの3、7、8シリーズ、X5、X7、日産スカイラインハイブリッド車に装備されたがクルマ以外のインフラなど課題も出た

 BMWは、高速道路における時速60km/h以下の渋滞時にのみ利用可能。それに対し、スカイラインは高速道路の本線の同一車線内で、制限速度以下の走行であればハンズオフすることができる。端的に言えば、BMWは渋滞時の疲労軽減であり、スカイラインは高速道路走行時の疲労軽減になる。

自動運転車のステージ2はBMWの3、7、8シリーズ、X5、X7、日産スカイラインハイブリッド車に装備されたがクルマ以外のインフラなど課題も出た

 システムとしてBMWは、3眼カメラとレーダー、そして高速演算能力を持つ画像処理プロセッサーを搭載。従来からのアクティブ・クルーズ・コントロール(ACC=車間距離制御装置)や、レーン・キープ・アシスト(LKA=車線維持装置)の延長として機能追加する位置づけだ。多くの車種に展開し、その普及を目指している。

自動運転車のステージ2はBMWの3、7、8シリーズ、X5、X7、日産スカイラインハイブリッド車に装備されたがクルマ以外のインフラなど課題も出た

 一方のスカイラインは、ACCやLKAを実現してきた「プロパイロット」に、3D高精度地図データ、360度センシングとして7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーを用いて高度化し、さらに運転者が前方を注視していることを確認するドライバーモニターを加えて、世界初のハンズオフとして高速道路本線上でのハンズオフを実現した。

 ただし、電動化されたハイブリッド車のみでの装備で、ガソリンエンジン車には装着できない。

自動運転車のステージ2はBMWの3、7、8シリーズ、X5、X7、日産スカイラインハイブリッド車に装備されたがクルマ以外のインフラなど課題も出た

 以上が、ハンズオフを構成する技術要素と、使える条件、そして搭載車種の違いになるわけだが、どちらが上か下かという優劣を問う話ではない。それぞれが目指す目的には意味があるはずだ。

 

アプローチもクルマ社会それぞれの違いから

 BMWは、アウディを含めてドイツメーカーの目指す方向であり、レベル2かレベル3かの違いはあっても、速度無制限区間のあるアウトバーンでの渋滞状況で利用できるようにした。

自動運転車のステージ2はBMWの3、7、8シリーズ、X5、X7、日産スカイラインハイブリッド車に装備されたがクルマ以外のインフラなど課題も出た

 BMWは「駆けぬける歓び」というブランドスローガンを掲げ、運転の喜びをクルマ作りの柱に据えている。ところが、アウトバーンをはじめ欧州の高速道路において、その駆けぬける歓びを阻害する渋滞が悪化していることが採用の背景にあるはず。いくら運転の楽しいクルマでも、渋滞は苦痛なもの。そこを、いくらかでも和らげようとするのがハンズオフ導入の動機と言えるだろう。

 そしてスカイラインは、日産車のなかでは走りを重視した車種であり、BMWに通じる運転の喜びを目指す一台。それでも国内においては、高速道路での運転の不安を覚える運転者は多く、加えて高齢化も世界に先駆けて進行中であり、とくに重大事故となりやすい高速道路での安全確保は重要項目の一つと言えるだろう。

自動運転車のステージ2はBMWの3、7、8シリーズ、X5、X7、日産スカイラインハイブリッド車に装備されたがクルマ以外のインフラなど課題も出た

 したがって日産は、2004年から「セーフティ・シールド」という発想で、クルマの360度周囲の状況を踏まえた安全対策に取り組みを開始。その技術開発の延長として高速道路の本線を走行する間はハンズオフできるとした。

自動運転車のステージ2はBMWの3、7、8シリーズ、X5、X7、日産スカイラインハイブリッド車に装備されたがクルマ以外のインフラなど課題も出た

 ただし、世間の声としては、渋滞中のハンズオフは事故のリスクが少なく、一方で高速道路の本線上をハンズオフで走るのはより危険性が高まるのではないかとの懸念もある。しかし、スカイラインのハンズオフ(プロパイロット2.0)は、3D高精度地図データを装備することにより、従来の運転支援技術であるACCやLKAとは比べものにならないほど安定した走りで、安心だ。

 理由は、地図データに従って走ることにより、たとえば人が運転する場合でも、よく知っている道は自信をもって走れるが、見知らぬ土地で運転するときは先の様子がわからないので不安定になりやすいのと同じこと。そんな意味でもプロパイロット2.0には自信を持ってクルマが走る手ごたえがある。自動運転車のステージ2はBMWの3、7、8シリーズ、X5、X7、日産スカイラインハイブリッド車に装備されたがクルマ以外のインフラなど課題も出た

 それに比べ、いくら高度なカメラやレーダーを駆使しようとも、地図データなしでそれらセンサーからの情報のみで走る場合は、人が見知らぬ道を走るのと同じでやはり不安定要素が残る。だから、渋滞など速度の遅い領域のみでの利用となるわけだ。

 

日本の道路行政には課題がある

 それでも課題もあるのは事実。スカイラインのプロパイロット2.0は、既存の速度制限に従って走行するため、制限速度の設定次第では他車の流れより大幅に遅くなり、後続車が接近し過ぎて危険を感じる場合がある。ただし、これはプロパイロット2.0の問題というより、何十年も速度規制や車線規制を変えない道路規則のほうに課題があることを示している。

自動運転車のステージ2はBMWの3、7、8シリーズ、X5、X7、日産スカイラインハイブリッド車に装備されたがクルマ以外のインフラなど課題も出た

 プロパイロット2.0に限らず、近年のクルマやタイヤは、現在の速度制限以上の速さで走行しても、ほぼ危険なく、安定して走行できる性能に進歩。クルマが高性能化しているのに、道路行政だけが改訂されず、遅れたままなのである。

自動運転車のステージ2はBMWの3、7、8シリーズ、X5、X7、日産スカイラインハイブリッド車に装備されたがクルマ以外のインフラなど課題も出た

 BMWやアウディの、高速道路での渋滞時のみのハンズオフも、スカイラインの高速道路の本線のみでのハンズオフも、共通する課題は交通問題の解決。人口の密集で渋滞が起こり、クルマの進化発展に目をつぶりなおざりにした道路行政という課題が、浮き彫りになった。

 世界の自動車メーカーは、交通事故死者ゼロを目指してあらゆる角度から開発。同時にまた、交通社会には様々な問題や課題が生じており、クルマだけの高度化では対処しきれない事態となっていることが認識される。BMWと日産のハンズオフは我々にそんな現状を突き付けてもいるのだ。


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