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未来の乗り物「パーソナルモビリティ」 登場から20年を経過しても実用化できない理由

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TEXT: 山本晋也  PHOTO: Wind Mobility Japan、ホンダ、Auto Messe Web編集部

2001年「セグウェイ」の登場は衝撃だった

 ひとりが移動するためのモビリティ(移動体)のことを「パーソナルモビリティ」と呼んだりします。一人乗りなら自転車だってパーソナルモビリティなのか? と思われるかもしれませんが、パーソナルモビリティがある種のカテゴリーを指す場合、そうした昔からある乗り物は含まないケースが多いようです。非常に定義が曖昧なのですが、電動で自動運転技術やジャイロ技術などを採用した一人用モビリティを指していると考えていいでしょう。

 その元祖であり、象徴的といえるのが「セグウェイ」です。ステップの左右にタイヤを付けた二輪車は、手でつかむハンドルもありますが、操作自体は体を傾けることによる重心位置によるというユニークさで、イノベーターの心をつかみました。

 そして、重心移動によって前進したり、後進したり、転回できたりするセグウェイが登場したのは2001年のことでした。モーター出力の関係で日本では歩道で使うことは違法でした。かといってウインカーなどの保安部品をつけて公道を走るのも似合わないということで、観光地の公園といったクローズドでのレンタルユースや、建前内のパトロールといった狭い用途で使われるのみでした。

 結局、法律が壁となって少なくとも日本で普及することはなかったといえます。では、海外では普及したかといえば、やはり観光地などのレジャーユースと警察などのパトロールユースがメインで、一般ユーザーが購入して日々の移動に利用するというカタチでの普及はしなかったといえます。とはいえ、セグウェイ型と呼ばれる、似たようなスタイルのパーソナルモビリティは増えています。

最近は電動キックボードが世界的に流行

 新しいパーソナルモビリティは所有ではなくシェアリングで利用することを想定しているので、個人所有が増えないからといってビジネス的に成功していないとはいえません。さて、シェアリングで利用するパーソナルモビリティとして最近のトレンドといえるのは「電動キックボード(キックスターター)」です。

 ハンドル部分のアクセルやブレーキレバーで操作できるため、セグウェイ型よりも運転を覚えやすく、また車体もコンパクトなためシェアリングで展開しやすいという利点もあって、むしろセグウェイ型よりもキックスターター型のほうが主流になりつつあるといえます。ただし、カタチとしては子どもが使うようなキックボードと同じシルエットですから、目新しさはセグウェイ型ほどではないかもしれません。

 国産メーカーではトヨタやホンダも、こうしたパーソナルモビリティについては積極的に開発してきましたが、いまだ市販には至っていません。個人的には、“動く椅子”といったスタイルのホンダUNI-CUBには試乗した経験を持っていますが、体重移動で進行方向をコントロールするのはユニークで新鮮。そのテクノロジーには、二本足歩行ロボットASIMO由来のテクノロジーが採用されているという話もワクワクするものだったことを覚えていますが、なかなか市販化というわけにはいかないようです。

 一方、主に海外メーカーが生産しているセグウェイ型、キックスターター型の電動モビリティはインターネットでは見かけますし、通販サイトでも購入することができます。しかし、街中でパーソナルモビリティを見かけることはほとんどありません。

法規制が変わらなければ普及は難しい

 道路運送車両法など法規の壁があるからです。キックスターター型の電動パーソナルモビリティにしても公道で利用しようと思ったら、歩道を走るのはNGで、ウインカーやブレーキランプ、ヘッドランプを備え、原付のナンバーをとる必要があります。つまり、車道しか走れませんし、乗車する際にはヘルメット着用が義務化されます。ナンバー付きの乗り物となれば自賠責保険も必要です。

 車道を走るのに余裕のパフォーマンスがあるかといえば、そうではなかったりします。商品によって性能は異なりますが、キックスターター型モビリティが使っているタイヤからも想像できるように、その走行性能は原付バイクにも劣ります。

 あまりクルマが走っていないような路地で乗るならまだしも、幹線道路を走るのはかなり勇気がいります。もともと、そうしたシチュエーションは想定していないので当然なのですが、現状ではパーソナルモビリティの持つ性能と、法規での扱いに大きな乖離があって、有効に使えるシーンが限られています。

 セグウェイの登場から20年、パーソナルモビリティは主に身近な存在になるといった方向で進化を遂げてきた印象があります。バリアフリー的な視点から、AI技術を活用した次世代型の電動車椅子のようなパーソナルモビリティへの注目も集まっています。

 結論をいえば、パーソナルモビリティはハードウェアの価格や性能面では普及期に入ってもおかしくない乗り物といえますが、法規の壁がその普及を阻んでいるのが現状です。

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