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「サンキューハザード」「ごめんねハザード」いる? いらない?

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TEXT: 戸塚正人  PHOTO: 米澤 徹

ハザードランプ以外に謝意を伝える方法

 繰り返すが、ハザードサインは、高速道路上、長距離トラックドライバー間でコミュニケーションを図るための限定的なもの。それを、性別、年齢、職業、運転する目的などが違うさまざまな人が混在し、道路環境も複雑という条件の下で幅広く適用させることに無理があるのではないか?

 そもそも、ハザードサインは道交法に抵触しないのか? ハザードランプ=非常点滅表示灯は、その名のとおり、事故や故障などでやむを得ず駐車する際など非常時に用いられるもの。本来の目的と使い方が異なるからだ。東京都を管轄する警視庁の“交通相談センター”に聞いてみた。
「たびたび受ける質問です。回答としては、謝意を伝えるためにハザードランプを使ったからといって違反にはなりませんし、取り締まりも行なっていません。たしかに本来の使用目的とは異なりますが、推奨こそしないまでも、悪くない慣習として定着している以上、“黙認”というかたちをとっています。むしろ、意思表示をしなかったことが、相手から嫌がらせを受けるなど、トラブルの原因になるケースもあるようです。ただし、法律として明文化されることはないのではないでしょうか?」

 つまり、黒でも白でもない、グレーゾーンということだが、ハザードランプを使わなくても謝意を伝えられる方法はある。

 右側にいるクルマに対してだったら右手、右腕をヒョイと上げればいいし、左側もしくは真後ろのクルマに対してだったら左手、左腕を上げて挨拶をすればいい。

ウインドウによほど濃いフィルムを貼っていない限り、相手からは見えているし、こちらの気持ちはちゃんと伝わるはず。

 ハザードスイッチを押したり戻したりする操作よりずっと簡単で、前方への注意も疎かにならずにすむ。なによりスマートで、これに会釈も加えれば完璧。ハザードサインなどというものが存在しなかった時代は、それでなんら問題なかったはずだ。

譲った/迷惑を受けた側にも求められる心の広さ

 一方で、譲ったり、迷惑を被った側の品性も無視できない。譲ることは当たり前で、感謝なんか求めなくていい。相手の無礼な振る舞いも何事もなかったように赦す寛容さ、心の余裕がほしい。ハザードサインも影響してか、謝意が示されないことに過敏な人が増えたように感じる。

 運転が苦手だったり、余裕のない人にとってまったく迷惑な話、つくづく運転しにくい世の中になったと思う。

 先日のこと。混んだ片側1車線の道路を進んでいると、左手の路地からこちらに出ようとしている1台のミニバン。当然道を譲る。チャイルドシートに小さな子供をのせた30歳前後の主婦と思しき女性。ハンドルを両手で力いっぱい握っている様子から余裕がないことは明らかだ。恐縮しながら何度も何度もお辞儀をしながらゆるゆると進み、旦那さんにでも言われているのか、おぼつかない手つきでハザードランプを点滅させようとしている。

 その様子を見ていて、ひどく気の毒になった。ハザードを点滅させることより、ちゃんと周りを見て、運転に集中することのほうがよっぽど大事。にもかかわらず、『ハザードランプで感謝の気持ちを示さなければいけない。嫌がらせを受けるかもしれない』という脅迫観念にとらわれて、こんな女性ドライバーにすら余計な負担がかかっているのだ。

 譲る側が圧倒的に優位で、譲られるほうはひたすら低姿勢という構図が、いかにも日本らしい。  ちなみに、筆者は進路を譲られても、車線変更などでやむを得ず割り込んだ際もハザードランプは使わない。「ありがとう」「ごめんなさい」の気持ちがないわけではない。安全を疎かにしてまでするようなことではないと思うからだ。前方からあまり視線をそらさず、軽く手を上げるか、会釈で十分。状況によっては何もしなくてもいいとも思っている。

 実際、過去にそれでトラブルになったことはない(冒頭の一件は例外中の例外)。習慣になっていたり、運転に余裕のある人はやればいいと思う。

 停車する時を除いて、本来の目的以外で積極的にハザードを使うのは、唯一、高速道路などで渋滞の最後尾につく時くらい。ひょっとしたら、ハザードサインがなかったことにいちいち腹を立てて嫌がらせをするような未熟なドライバーが背後に迫ってくるかもしれないからだ。

 この危機的な状況で“非常点滅表示灯”を使わない理由などあろうはずがない。

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