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顔なのかお尻なのか? 前後不明の「不思議すぎる」デザインのクルマ4選

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了

こんなクルマがあったとは!驚きのデザインでも前進、前進

 クルマの第一印象を大きく左右するのはやはり、エクステリアデザインです。そこには時代の流れもあって、当時はこれがカッコいいとされていた、といった評価軸もあるでしょうし、それ以前に十人十色の好みもあるでしょう。同じクルマに対してある友人が「すっごくカッコいいよね!」と言ったかと思えば、また別の友人は「なんであんな格好の悪いクルマが売れるんだろう?」と言ったりします。ですからクルマのデザインに関して論評するときには、あくまでも個人的な意見ですが、と注釈を入れるようにしています。

 しかし、今回紹介するクルマたちは、たぶん間違いなく全員、少なくとも10人中8~9人は「変なデザイン」だとか「変わった格好」と評価すると思います。だってこれらは、どちらが前か後ろか分からないデザインだからです。

どっちがノーズかテールかの「スターライトクーペ」

 どちらが前か後ろか分からないデザイン、となるとまず最初に紹介すべきクルマはスチュードベーカー最初の戦後モデル、スターライトクーペでしょうか。スチュードベーカーのスターライトクーペ

 若い読者には耳慣れないブランドかもしれませんが、スチュードベーカーは、馬車工場から発展した米国のメーカーでした。19世紀から20世紀にかけて電気自動車やガソリンエンジン車のOEM製作を手掛け、1911年に会社を設立すると13年から自社ブランドであるスチュードベーカー車の生産を始めています。

 戦時中は軍需のトラックなどを生産していましたが、戦後すぐに乗用車生産を再開していますが、1947年には高名な工業デザイナーとして知られるレイモンド・ローウィがデザインした第三世代のチャンピオンとコマンダーが登場しています。スチュードベーカーのスターライトクーペ・フロント

 中でも2ドア5座のスターライトクーペは、その“奇抜な”デザインが注目を集めることになりました。少しふくよかなフロントセクションに対してリアセクションは尖ったトランクと、4分割の曲面ガラスで囲まれたキャビンが特徴で、「Coming or Going?(近づいて来ているのか離れて行っているのか。つまりどちらがフロントなんだ?)」と揶揄されるほどだったようです。

空力追求先駆車「トロップフェンワーゲン」

 スターライトクーペ以上に、前後がそれぞれ独特なルックスを見せている1台がミュンヘンのドイツ博物館分館で出会ったルンプラーのトロップフェンワーゲン。“ティアドロップ”の愛称を持ち、世界で最も早い時期にクルマの空力追求を行った歴史的な1台です。ルンプラーのトロップフェンワーゲン

 縦2灯式のヘッドライトがセンターに装着されている方がフロントだろうと予測はつきますが、前後ともに想像を絶するデザインには呆れさせられました。ルンプラーのトロップフェンワーゲンのフロント

 またメッサーシュミットやハインケル・カビーネ、イソ・イセッタなどの“バブルカー”も前後が独特で、これもヘッドライトの有り無しで想像はつきますが、それがなければ果たしてどちらが、と迷ってしまうかもしれません。

メッサーシュミットメッサーシュミット

ハインケル・カビーネハインケル・カビーネ

イソ・イセッタ

イソ・イセッタ

 またフィアット600ムルティプラや大型バスのセトラS11なども、フロントもリアも独特なデザインですよね。

フィアット600ムルティプラフィアット600ムルティプラ

セトラS11セトラS11のリヤビュー

世界初のミッドシップとも言える「ヤヌス」

 前に挙げたクルマたちは、前後のデザインは別物でしたが、これから紹介するツェンダップのヤヌスは前後がほぼ同じデザインで、言ってみれば前後対称になっています。ツェンダップのヤヌス

 このヤヌスを紹介する前に、ツェンダップについても少し触れておきましょう。

 バイク好きの読者ならご存じかもしれませんが、ツェンダップというのはドイツの機械メーカーで第一次大戦後に2輪の生産を始め、やがて4輪進出を企画してフェルディナント・ポルシェ博士に小型車の設計を依頼。完成した試作車=ツェンダップ・フォルクス・アウトは、後にVWのタイプⅠ、いわゆるビートルへと発展していく最初のプロトタイプとなりました。

 そんなツェンダップが第二次世界大戦の後、初めて製作した4輪車がヤヌスでした。こちらはポルシェ博士とは何の関連もなく、ツェンダップからの依頼で航空機メーカーのドルニエ社がプロトモデルを開発しています。ちなみに、そのプロトモデルとはツェンダップ・フォルクス・アウトとともに、ニュルンベルク産業文化博物館で出会っています。

ドルニエ プロトドルニエ社のプロトモデル

 その成り立ちを紹介すると、前席と後席を背中合わせにマウントし、その中間に250㏄の2ストローク単気筒エンジンを搭載して後輪を駆動していました。ちなみに、クルマの黎明期には、例えばパナール・エ・ルバッソールの1号車も前席と後席が背中合わとなっていて、2列のシートの間にエンジンがマウントされていました。そんな黎明期の例を除くとヤヌスは世界初のミッドシップレイアウト、ということになります。エンジン中央置きのツェンダップのヤヌス

 ボディには、前後それぞれの座席に乗り込むために前面と後面に1枚ずつ、ハインケル・カビーネ、イソ・イセッタなどのような右ヒンジのドアを設けていました。だから正確には前後対称ではなく点対称なんですね。フロントドアは正面ウインドウと一体で開くヤヌス

 このヤヌスという車名ですが、ローマ神話に登場する、前向きと後ろ向き2つの顔を持つと言われたヤーヌスに因んでいます。

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