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一般的には「浄水器」の「東レ」! クルマ好きなら「知っておきたい」レース業界への偉大なる貢献度

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了、Newspress、TOYOTA

30年以上も前から動いていたトヨタのル・マン制覇の先兵隊たち

 ただしそれ以前にも部分的にカーボンファイバーを使用して、アルミパネルやアルミ・ハニカムパネルで構成したツインチューブと組み合わせた、いわゆるハイブリッド・モノコックとされたケースも少なくありませんでした。86年シーズンのJSPCに登場したサードMC86X・トヨタも、そうした先駆けとなったマシンの1台でした。サードMC86X・トヨタ

 サードMC86X・トヨタは、サードが主導して東京R&Dで設計開発したグループCカーでした。サードは現在もSUPER GTなどでチームとして活躍していますが、その原点となったシグマオートモーティブはコンストラクターの一面も持っていて、73年に日本チームとして初めてル・マン24時間レースに参戦した時のマシン、シグマMC73も彼らが独自に設計製作したグループ6(レーシングスポーツカー)でした。

 東京R&Dは、現在はレースに参戦していませんが、鈴鹿事業所ではスーパーFJやJAF-F4などの入門フォーミュラの生産を続けているコンストラクターです。そんなサードと東京R&Dの繋がりは、やはり73年のル・マンが契機でした。

 シグマオートモーティブの創設者である加藤真さんは、新たにJSPC用のマシンを開発すべく、MC73を設計した小野昌朗さんにMC86Xの設計を依頼します。そして小野さんが当時社長を務めていた東京R&Dが設計を担当することになったのです。シグマオートモーティブが作り上げたサードMC86X・トヨタ

 加藤さんから小野さんに伝えられた開発テーマは3つあって①空力、②複合材料、③電子制御のそれぞれを徹底的に追求する、というものでした。この②複合材料が、モノコックに使用されたカーボンファイバーで、その素材を提供したのがTORAYだったのです。さらに素材メーカーならではのノウハウやアイデアが開発に活かされた結果、サードMC86X・トヨタは高いポテンシャルをもって完成。TORAYの協力に感謝する意味もあって、JSPCにエントリーした際の車名は東レ・サードMC86Xとなっていました。

 サードMC86X・トヨタについてもう少し詳しく紹介しておきましょう。先にも触れたように、フレームはアルミハニカムのツインチューブ+カーボンファイバー(より正確に言うならカーボン/ケブラーの炭素繊維による強化プラスチック)のハイブリッド。

 前後サスペンションはともにダブルウィッシュボーン式で、一見アウトボード式に映るフロントはプルロッドによるインボード式で、リアもプッシュロッド+ベルクランクを使ったインボード式。童夢/トムス86C

 トヨタ同門の童夢/トムス勢が使用していた童夢/トムス86Cと同様に、このサードMC86Xでも2.1ℓ直4ツインカムターボの4T-GTを搭載していました。モノコックだけでなく、大はラジエターサポート(マウント)から小はフューエルポンプ・マウントまで、様々なパーツにカーボンファイバーの成型品が使用されており、重量軽減に大きな効果を発揮していました。

 新規トライのなかトラブルも多く発生し、レース成績として目立った結果を残すことはできませんでしたが、カーボンコンポジットの歴史を語るうえで、見逃すことのできない1台、それが東レ・サードMC86X・トヨタでした。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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