カロッツェリア・ギア
VWカルマン・ギアのデザインで知られるカロッツェリア・ギアは、創業が1915年と近代モータリゼーション史のなかでは最古参に近い存在だが、経営権がたびたび代わり、独立した企業として安定した実績を残す期間はそれほど長くなかったデザイン工房である。
1953年にルイジ・セグレが同社を買い取った後は、ボルボP1800、VWカルマン・ギアが成功作として知られるが、その後クライスラー社のデザイン業務を請け負い、ジウジアーロがチーフデザイナーを務めた時代に、マセラティ・ギブリ、デ・トマソ・マングスタ、117クーペを送り出していた。 同社はその後フォードに買い取られ、車名末尾に「ギア」の名称がつくモデルをいくつか手掛けてきた。現在もフォード社の傘下にあり、コンセプトカーなどのデザインを手掛けている。
ザガート
力強いデザインで知られるザガートも、創業は1919年とカロッツェリアの中では古株の存在となる。歴史的にイタリアメーカーとの結び付きが強く、戦前のアルファ・ロメオ8C2300、戦後のアルファ・ロメオSZ/TZ、ランチア・フルビア・スポルト・ザガートなどは代表作としてよく知られる。
またアストン・マーチンのデザインブランドとしてもよく知られ、DB4ザガートは傑作としてその名を歴史に残している。 日本メーカーとも関わり合いを持ち、日産レパードをベースとしたオーテック・ステルビオザガートやトヨタ・ハリアーザガートなどをデザインしている。なお、現在のチーフデザイナーは、日本人の原田則彦氏が務めている。
I.DE.A(イデア)
歴史の長いイタリア・カロッツェリア群にあって、創業は1978年と新進に属するデザイナー工房が、I.DE.A(イデア)である。
フィアット・ティーポやアルファ・ロメオ155のデザインで知られるが、初代のダイハツ・ムーヴや日産テラノII(日本仕様:ミストラル)のデザインなども手掛けている。なお、原田則彦氏がザガートに所属する前に在籍した企業でもある。
高速性能、燃費性能などを重視する現代の自動車エンジニアリングでは、コンピューターシミュレーションによるデザインが主導権を握り、独創的なデザインを身上とするカロッツェリアの存在感は薄らいだものとなっているが、ピニンファリーナのように性能と造形を高い次元で両立させる企業もあり、依然として自動車好きの目を楽しませてくれる。