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「シャコアゲ」ミニバンのパイオニア! パジェロ顔負けの走破性を誇った「デリカスターワゴン」が色褪せない理由

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TEXT: 河村 大  PHOTO: 河村 大

初代パジェロと同じ副変速機付きパートタイム式4WDシステムを採用

 ちなみに、このフォルテの4WDシステムを採用したクルマがもう1車種あることをご存じだろうか。そう。デリカが4WD化されたのと同じ1982年に登場し、その後「神話」と言われるほどの大成功を収め、世界の4WD市場を席巻した「パジェロ」だ。

 従って初代パジェロの下まわりは初代スターワゴンと瓜ふたつ。ラダーフレームや副変速機の存在はもちろん、パートタイム式の4WDシステムやサスペンション形式までもが同一だ。初代パジェロ 試しに、スターワゴンの下まわりの写真をもう一度確認してほしい。フロントサスがトーションバースプリング(真っ直ぐな棒)を採用したダブルウィッシュボーン式サスペンション、リヤサスがリーフスプリング式リジッドサスペンションというところまで、まったく同じ構造だったのだ。

 とはいえ実際のところ、初代デリカスターワゴンのオフロード性能はさほど高くはなかった。横から見てわかるとおり、アプローチアングルやディパーチャアングルこそ素晴らしかったが、腹下にトランスファーなどの出っ張りが多く、最低地上高も低く、ランプブレークオーバーアングルは想像以上に小さかった。初代デリカスターワゴン4WD(シルエット) したがって、ちょっとした段差でも亀の子になりやすかったし、それを避けるために大径のタイヤを履かせようと思っても、2WD車用に作られていた小さなタイヤハウスにクリアランスの余裕はなく、走破性を大きく向上させることも難しかった。というわけで、パジェロと同じ4WD機構を備えていたにも関わらず、パジェロと同レベルの走りはできないクルマとして、マニアからしばしば辛口の評価を下されることがあったのだ。

ビルトイン・モノコックボディに刷新しながら軽量化と堅牢さを両立

 このデメリットを、ボディ構造ごとガラリと変えることで解決してしまったのが、2代目スターワゴンだった。その登場は1986年のこと。初代スターワゴンの4WD化からわずか4年後に登場したことになる。

 写真で比べてみても角目2灯が4灯になった以外何が違うの? ひょっとしてマイナーチェンジ? と思った方もいらっしゃるかもしれないが、さにあらず。まごうことなき全面刷新のフルモデルチェンジが行われた。2代目デリカスターワゴン(初期型)

 一番の変化はラダーフレーム構造からモノコックボディになったこと。強靱なサイドメンバーを備えたビルトイン・モノコックフレームとなり、ボディパネルに高張力鋼板を使うことで車体重量を軽減。ヘビー級の駆動系も4WD機構を組み込む前提で設計されたボディに無理なく格納され、車体中央で著しく出っ張っていたトランスファーケースも搭載の角度を変えることで、40mmもの地上高を稼ぐことに成功した。

 こうして2代目スターワゴンはライバル車同様「当たり前の車高」が得られる構造を手にしたわけだが、三菱はこのクルマにミドルクラスの1BOX車にあるまじき大型のタイヤハウスを与え、215SR15(約733mm)という大径タイヤを設定した(最上級モデル)。2代目デリカスターワゴン(走破性) 腰高で特徴的なプロポーションはそのままに、先代に比べ80mm近くアップしたロードクリアランスを実現して本格4WDの名に恥じない走破性を手に入れた。

キャブオーバーの運転席からの視界はエクストリーム感満点!

 筆者はこの2代目スターワゴンに乗るユーザーを取材した際、アップダウンので激しいオフロードを運転させていただく機会を頂いた。その運転感覚の「スペシャル度」はもう空前絶後のもので、最初は「うぉ!」とか「うっわぁ!」とか悲鳴にもならない言葉が口から漏れ続けた。

 当時乗っていたジムニーやパジェロなど、2BOX形状のクロスカントリー4WDとどこがそんなに違うのかといえば、その着座位置の違いからくる「視界の差」とカラダで感じる「挙動の差」だ。正直、クルマの一番前に座って凹凸地形を走るのがこんなにも恐ろしく、揺れの激しいものだとは知らなかった。2代目デリカスターワゴン(オフロード) とくにヒルダウンは顔が引きつるほど恐ろしい。ハイ/ロー、2速の副変速機を持つスターワゴンはパジェロも顔負けの地形を平気で走ってしまうのだが、急斜面を下っているときは「このまま前転するんじゃなかろうか」「前転したら自分が真っ先に地面にキスするんじゃなかろうか」という感覚に捕らわれる。

 視界の上下動も激しく、坂を登っているときは空しか見えず、下っているときは地面しか見えない。アップダウンが周期的に襲ってくるような場所では地面と空が忙しく交互に入れ替わり、それはダカールラリーを走る日野レンジャーのインカー映像かと見紛うばかりのエクストリームさなのだ。

替えがきかない本格派1BOXクロカン4WD車として稀有な存在に!

 また、2BOXタイプの4WDであれば、どんなに激しい段差に乗り上げても前輪へのショックを感じてから障害物が体の下を通過するが、スターワゴンではそうはいかない。直前地形の視界はすこぶる良好なのだが、それゆえに大きな段差が良く見え、それが何のショックもないままフロア下に吸い込まれていくのだ。そして、その段差に前輪が乗り上げたときには自分の体も大きく揺れている、という有様なので、慣れるまではやはり恐怖感が先に立った。

 それでもスターワゴンの運転に慣れたユーザーの皆さんはパジェロ顔負けの走りを披露してくれたので、取材の途中から、彼らに尊敬の念すら感じたものだった。これは本当にいい経験だった。2代目デリカスターワゴンジャスパー とまあこんな調子でデリカスターワゴンのオーナーはその類い希なるオフロード性能を担保に、キャンプやスキーなどちょっとした非日常を楽しみつつ、仕事や食事、ショッピングといった日常の生活のなかでも役に立つギアとして使い倒す人が多かった。それだけに替えの効くクルマがほかになく、デリカ愛が底知れぬほど深いオーナーも多かった。2代目デリカスターワゴン・シャモニー 4WD車としての特殊な生い立ちがきっかけで、乗用1BOXの本格的4×4としてライバル不在の地位へ認知されていった初代デリカスターワゴン。そして、実際に本格クロスカントリー4×4としての性能を手に入れていった2代目スターワゴン。どちらのデリカも世界でも類をみない希有なクルマとして、今でも人気が高い理由も頷ける。

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