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丸テールも直6も失ったが……新時代を切り拓いた「V35スカイライン」は「ハズレ世代」じゃなかった

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TEXT: 佐藤幹郎  PHOTO: 日産自動車/Auto Messe Web

4WDやエクストロイドCVT採用のほか待望のクーペも誕生

 発売から数カ月遅れで日産自慢の4WD「アテーサE-TS」がセダンに追加されて、新たに3.5Lのモデルを追加。さらに、セドリック&グロリア譲りの272psと36.0kg-mのエンジンに、CVTながらダイレクトな感覚で走れるエクストロイドCVTの組み合わせが発売されたが、こちらは2.5Lのもっとも安いモデルよりも100万円以上高価だったことから注目とならず。

 逆に2003年には一段と流麗なスタイリングのクーペを発売する。こちらは伝統の丸形テールランプを持つモデルで、全幅がセダンよりも幅広い1815mmという日本では扱いにくい数字となってしまったが、非常に優雅なスタイルで存在感を発揮。3.5Lエンジンのみの設定ながら待望の6速MTの設定もあって、ファンからの注目を集める。そしてこの際にセダンの2.5L仕様のサスペンションの仕様変更や装備充実もあり、数カ月遅れながら4ドアセダンにもMT仕様を設定した。

V35スカイラインクーペのフロント走り

 すでにこのDセグメント4ドアセダンの走りがどれだけ優れていようが、MTがあろうが販売台数は見込めない時代となっていたが、ファンは大いに歓迎。目標販売台数を上まわる受注を記録し、2004年にマイナーチェンジを実施した。4ドアにもついに丸型テールランプが戻ってきたほか、内外装の変更を受けて商品力をアップさせている。排ガス性能の向上や18、19インチの鍛造ホイールの設定もあり、4WDもスノーモードが追加されて商品力をアップさせ、充実した内容でファンも安堵したに違いない。

復活した4ドアの丸テール

V36ではさらに走りを際立たせていた

 絶対数こそ多くはないが、安定した売り上げがあることで、2006年にはフルモデルチェンジしV36型へ生まれ変わった。大幅な変更で、全高20mmダウン、全幅20mmアップというロー&ワイドとなり、テールランプがLEDとなるなどの大幅に進化を遂げている。

フルモデルチェンジしたV36型

 とくにサスペンションはより強度を増したアルミ鍛造の進化もあって、変更前に比べて7kgも軽量化が果たされ、ばね下重量の軽減から乗り心地の向上に貢献した。新開発の前輪ダブルウィッシュボーン式、後輪マルチリンク式サスペンションと、デュアル・フローパス・ショックアブソーバーもあって、ステアリングの応答性と路面からの入力を低減し、より四輪が設置するスポーツとGT性能を向上させた。

デュアル・フローパス・ショックアブソーバー

 さらに一部モデルでは前後異形サイズのタイヤを標準にし、インテリアも着座位置をはじめ装備を充実、4WSの採用や衝突安全性など全方位に性能を向上させている。

 エンジンはほとんど新開発と言っていい新型VQ35HR、25HR(HRはハイ・レボリューションとハイ・レスポンスを意味する)となって、左右完全吸排気システムとなり性能向上。AT車にはマグネシウム製のパドルシフトを備えたうえ、先代に引き続きシンクロレブコントロールを採用した。シフト操作時にエンジンが回転数を合わせてくれることで、小気味良い走りが楽しめる。

V36の3.5と2.5エンジン

 2007年にはスカライン発売から50周年を迎えて、記念車も登場。通常モデルに一部仕様変更なども施されたが、盛大な記念日とはならなかった。

 2007年にはクーペに日産自慢のVVEL(バルブ作動角・リフト連続可変システム)付きのVQ37HVRエンジンを採用。自然吸気のV6エンジンは歴史遺産といって良く、2400〜7000rpmまで最大トルクの90%を発揮する性能は、ターボにはないもので、今後も語り継ぎたいV6エンジンだ。トランスミッションも進化しており、ATは5速ながらよりスポーティなDSモードの設定とクルーズ・コントロールとの連携を強化。MTも、1~3速にトリプルコーン・シンクロを用いて、スカイラインらしい走りをもたらした。

V36スカイラインクーペ

 2008年の4ドアの改良では前年にVQ35HRとなったエンジンが、すでに北米で高評価を得ている新型VQ37VHRへと進化。組み合わされるATも先にフェアレディZで評判のマニュアルモード付7速ATとなり、走行性能の向上と環境性能を両立した。

 さらに小さな擦り傷ならば自然に修復してくれるスクラッチ・シールド塗装を全色に採用。狭い道ですれ違うときに木の枝などで傷がついた場合に、修理代金を払ってまで直すほどではないけれど、そのままにしておくのも……、と思うユーザーに対して、画期的でありがたい塗装だった。

 開発拠点で開発陣の携帯電話にその技術が使われているのをみて、これが普及すれば世界中のユーザーが大喜びするに違いないと確信したほど優れた塗装が採用された(価格は非常に高価らしい)。そしてその後、仕様変更を受けて、現行のV37型に受け継がれることとなる。

スカイラインを愛しているからこそファンの目は厳しくなる

 スカイライン初のV型エンジン搭載車、伝統の丸形のテールランプを持たずに誕生したスカイライン。V35型の登場は華々しいものではなかった。

V35スカイラインのフロントビュー(初期型)

 それは30型が登場した際に6気筒ではないスカイライン、31型が登場した際に大きくて重い都市型セダン、32型が表れたときに走りは良いけど使い勝手が……、33型では32型よりも広いけれどスカイラインらしくない、34型がデビューしたときには形がスカイラインらしくない……。

 スカイラインという名は、その歴史の重さ故に付きまとう怨念のようなものがあり、それが上層部も開発陣も販売側もユーザーも巻き込んでまさにカオスとなるのが宿命なのか。

 V35型は発売当初から優れたGTカーであり、その走りも快適性も装備類も高水準だった。度重なる改良で進化を果たしており、近年ちらほらみられるシーラカンスの様な、なんの改良もされないで販売が続けられているモデルではなかった。それだけに後継の現行モデルであるV37型にはぜひとも頑張ってもらいたい。

V35スカイラインの後期型

 ところで日産さん。スーパーGTの参戦車両はフェアレディZではなくてスカイラインにしませんか? フェアレディZの名は世界的に知れ渡っているので、国内のスーパーGTに参戦しなくても大丈夫だと思います。逆にスカイラインの名がモータースポーツに復活すれば、日本の一般誌だって注目するはず。参戦のために2ドアを国内にも用意し、サーキットにスカイラインが帰ってきた。これだけで日本を元気にしてくれると思うのですが。スカイラインの名がサーキットにある。これこそスカイラインのあるべき姿だと思うのですが……。

■日産スカイライン350GT(HV35)
全長×全幅×全高:4675×1750×1470mm
ホイールベース:2850mm
トレッド:前/後 1500mm/1505mm
車両重量:1490kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.5m
室内寸法:長×幅×高:1930×1750×1190mm
エンジン:VQ30DD V型6気筒DOHC
総排気量:2987cc
最高出力:260ps(191kW)/6400rpm
最大トルク:33.0kg-m(324kW)/4800rpm
タイヤサイズ:215/55R17(前後とも)
ブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク(前後とも)
サスペンション:マルチリンク式(前後とも)

12
  • V35スカイラインのフロントビュー(初期型)
  • V35スカイラインのインパネ
  • V35スカイラインのVQエンジン
  • V35のサスペンション
  • V35スカイラインのフロントスタイリングイメージ
  • V35スカイラインのリヤビュー
  • V35スカイラインクーペのフロント走り
  • V35スカイラインの後期型
  • V35の4ドアマイナーチェンジ丸テール
  • 復活した4ドアの丸テール
  • フルモデルチェンジしたV36型
  • デュアル・フローパス・ショックアブソーバー
  • V36の3.5と2.5エンジン
  • V36スカイラインクーペ
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