電スロの弱点を見事に解消してくれる『スロコン』チューニング
電子スロットルとは『ドライブ・バイ・ワイヤー』とも呼ばれ、電線を介した電気信号でスロットルを制御するシステムを指す。従来の機械式はアクセルを踏むことでケーブルが引っ張られ、その分だけスロットルバルブが開いてエンジンに空気を送るのに対し、電子式はセンサーがアクセルをどれくらい踏み込んだかを検知して、コンピュータが最適な開度になるようモーターを動かすのだ。
現在のクルマはほとんどが電子スロットルを採用しているが、一部のスーパーカーやレーシングカーは別として、レスポンスや加速が鈍いといった声も少なくない。とくにスポーツ走行を楽しむユーザーからは不評で、後付けの『スロットルコントローラー』(以下、スロコン)を後付けするユーザーは多い。
加速力はアップするもエンジン出力が向上する訳じゃない
前述の通り、ノーマルではアクセルを踏んだ量に対するスロットル開度をコンピュータが決めており、純正で『エコ』や『スポーツ』といったモードがある車種を除いて、味付けは不可能だ。ところがスロコンを使えば電気信号に割り込み、アクセル開度を自由に制御してレスポンスや加速を改善することが可能になる。
なおフィーリングが激変し「パワーアップした」と思い込む人も多いが、スロコンはピークパワーが上がるアイテムではないので注意。ただし同じ回転数ならアクセル開度の高い方がトルクは出るので、体感としての速さはモチロン、楽しさと乗りやすさも向上するだろう。
アンダーパワーな軽自動車ではより顕著な違いが体感できる
では実際にサーキットのタイムにどう影響するのか? ノーマルとの違いがもっとも顕著なのはコーナーからの立ち上がりで、クルマの向きが変わり加速しようとアクセルを踏み込んでも、スロットルは必ずしも全開にならずライバルに離されてしまう。周りが同じ電子スロットル車でスロコン不使用なら同条件だが、機械式のクルマやすでにスロコン搭載済みの相手だと、タイムにしろバトルにしろ同じ土俵で戦うこと自体が不可能に近い。
余談だがNAの軽自動車によるワンメイクレース『東北660選手権』では、今まで電子スロットル車のエントリーがほぼ皆無だった。どんなにテクニックがあるドライバーが乗っても上位に食い込めず、とくに接近戦でアクセルの踏み直しが必要とされる状況では絶望的。ところが救済措置でECUの書き換えとコントローラーの使用が認められると、シェイクダウンながら上位に食い込み、トップ集団と遜色ないタイムを叩き出すマシンが現れた。そのドライバーも「電子スロットルとは思えません」と話しており、サーキット走行やレースで強力な武器になることを証明した。