「異端児」は全世界にファンを増やし、唯一無二の存在に昇華
ホープスターON360をベースに開発されたスズキ・ジムニーの初代モデルがデビューしたのは1970年の4月でした。ホープスターは軽自動車と成りは小さいながら、クロカン4駆の王者とも言われる「ジープ」と同様に、強固なラダーフレームに前後はリーフスプリングで吊ったリジッドアクスル、16インチホイールを採用。さらに、パワー取り出し装置(PTO)が組み込めるような2速のトランスファーなど、本格的なクロカン4駆と呼ぶにふさわしいスペックや装備で構成されていました。
その一方で三菱「ミニカ」用のエンジンを搭載していたことや、各所に熟成不十分なポイントも散見されていました。そこでスズキでは、基本的なコンセプトは継承しながらも、スズキ製のエンジンに乗せ換えるとともに、各部を熟成して量産に移ることになりました。
用意されたエンジンは軽トラックのキャリーに搭載されていた空冷2ストローク直列2気筒のFB型でした。最高出力は25psでしたが、車両重量も600kgに抑えられていて、まずまず不満の出ないパフォーマンスを発揮していました。そしてここから改良と熟成を繰り返してジムニーは日々進化していきます。
事細かな進化に関して、それをすべて列記していくだけで一冊の本が出来上がるほどなので、ここでは概略のみに留めますが、初代モデルでは当初の空冷のFB型エンジンから72年には水冷のL50エンジン(最高出力28ps)に換装。さらに変更された軽自動車規格に則って76年には、L50エンジンに1気筒足した排気量539ccのLJ50エンジンに再換装されています。またエンジンがサイズアップしたために、ボンネット形状も前方に膨らみのあるものに交換されています。
4世代・半世紀以上も改良と熟成を重ねる名車
ジムニーの2代目モデルは1981年に登場しています。ラダーフレームにリーフで吊った前後リジッドアクスルという基本構成とLJ50エンジンはキャリーオーバーされていましたが、5年後には、それまでの2サイクルエンジンに替わって電子制御燃料噴射+ターボの4サイクルエンジン、543ccのF5A型を搭載するモデルが登場。最高出力は42psに跳ね上がっていました。さらに90年には再度の軽自動車規格変更があり、排気量を657ccに引き上げたF6A型に換装しています。こちらは当初55psだった最高出力は、95年に登場した第二世代の最終モデルでは64psにまで引き上げられていました。
さらに1998年には第三世代に移行していますが、こちらの最大の変更点はエンジンではなくボディ。それまでの各モデルには、パノラミックルーフを含めたメタルトップとソフトトップの2タイプが用意されていましたが、第三先代のJB23系は5ナンバーのワゴンモデルのみとされました。ちなみにエンジンはF5A/F6Aと同様の水冷4サイクル直列3気筒ターボでしたが、新世代のK6A型に換装。パワーは自主規制値の64psと変わりありませんが、最大トルクは少し引き上げられていました。
そして2018年には現行モデル、第四世代のJB64系が登場しています。4つの世代でモデルライフが半世紀を超えたジムニーは、文字通り改良と熟成を繰り返しながら、世界で唯一無二の存在にまで昇華していきました。