元はタイヤハウスへの空気の取り込み穴だった
クルマのデザインというのは流行り廃りも含めて、時代によって大きく変わっていくもの。最近は「塊」感を優先していて、顔つきで見るとバンパー、グリル、ライトまわりが一体になっているものが多い。ライトはLED化が進んだこともあって細く切れ上がったものだし、グリルは小さいか、極端に大きいかのどちらかで、目も不均一が流行っている。
そのなかで、よく見かけるのが、バンパーの両側に縦に入れられた樹脂部分。昔からあり、ダクトになっていてブレーキの冷却などを目的としていた。ただ、最近のものは貫通していなくて、ただ黒い樹脂パーツがはめ込まれたようになっているのが多い。一体、なんの目的でこうなっているのだろうか。
顔つきにメリハリを出す、いわば「隈取」
まずあるのは単純にデザイン的なアクセントで、ダクトがあるように見せる演出だ。牙感というか、隈取(くまどり)的に入れられているもので、塊感を強調するゆえ、バンパーの両端がのっぺりとしてしまうのを防ぐ目的がある。機能する場合もあって、たとえばフォグランプを装着する場合のスペースとして使われることがある。つまり非装着車はただの黒い樹脂のフタで、装着車になるとそのままこの部分を取り替えてランプを埋め込む。これがないとバンパーそのものの形状を変えないとダメになり、手間もコストもかかる。
スポーツカーではブレーキの冷却に活用
当然、走行性能向上、空力に作用する場合はあって、そうなると網状やスリットになっていて空気を取り込むようになっている。つまり本来のダクトしての機能だ。GR86やBRZなどスポーツカーに多く、空気を取り込むことによってブレーキまわりを冷却することができ、空気抵抗の軽減にもなっている。ならばもっと多くのクルマが開ければいいのにと思ってしまうが、ことはそんなに簡単ではない。