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3座シートのスーパーカーはマクラーレン「F1」だけじゃない! 70年代に登場したマトラ「シムカ・バゲーラ」とは?

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

大排気量/大パワーはなくともライトウェイトで小粋なスポーツカー

 マトラ・シムカ・バゲーラのメカニズムについてもちゃんと紹介しておきましょう。フレームはスチール製のモノコックに、FRPで成形された19ピースのアウターパネルを組み付けた構成となっていました。これはスチールパネルを使ったスペースフレームにFRP製のカウルを架装したものと考えてもよいでしょう。

 ちなみに、パラレル3シーターを実現するために、フレームを平面図で見てみると、中央部分……つまりはパラレル3シーターが取り付けられる部分は少し膨らんでいることが分かります。このフレームに組み付けられるサスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン式で、上下のAアームと、縦置きにマウントされたトーションバーはシムカ1100のコンポーネントが流用されていました。

 リヤも、形式的にはシムカ1100と同様ですが、プロトタイプ時にはシムカ1100のフロントサスペンションが流用されていました。つまり前後共通サスペンションで、シムカ1100からエンジンとトランスアクスルだけでなくサスペンション・ユニットさえもアッセンブリーで移植することが考えられていたのです。

 しかしこれでは強度的に厳しいものがあり、結果的にはシムカ1100と同じ基本スタイルである横置きのトーションバーで吊ったトレーリングアームが採用されることになりました。ただし、トレーリングアーム自体はシムカ1100と共通なものではなく、マトラで新たに設計されたパーツが使われています。また前後ともにアンチロールバー(スタビライザー)が追加され、より強化されていました。

7年間で約4万7800台が生産

 搭載されるエンジンは、ここまでに触れたようにシムカ1100用の1.3L直4プッシュロッドが選ばれており、これは1294cc(ボア×ストローク=76.7mmφ×70.0mm)の排気量から84psを絞り出していました。84psという数字は控えめに映りますが、車両重量が885kgと極めて軽量に仕上がっていたことで、十分なパフォーマンスを引き出すことができていました。

 ボディサイズは全長×全幅×全高が、それぞれ3975mm×1735mm×1180mmでホイールベースは2370mm。このサイズ感は最近のクルマで比較するなら現行のマツダ・ロードスター(3915mm×1735mm×1235mm、2310mm)に近しい数字です。

 1.5Lエンジンの最高出力は132psですが、車両重量も1t前後で100kg以上も重いため、パワー(の数値)の差ほどにはパフォーマンスの差は感じられないかもしれません。

 1975年にはシムカ1100の後継モデルというよりも、クライスラーのグローバルカーとして開発されたクライスラー・シムカ1307/1308系の1442cc(76.7mmφ×78.0mm)で最高出力90psのエンジンを搭載したバゲーラSが登場しています。

 しかしマトラと組んでF1GPをも戦うまでになっていたクライスラーが、それで満足するはずはありません。彼らは次なる一手として、より大排気量のエンジンを搭載しようと考えていました。それはベースとなった1.3Lの直4エンジンを2基、並列に配したU型エンジンの搭載をもくろんでいたのです。

 クランクが1本となるV型エンジンと違って、U型エンジンは並列した2本のクランクから1カ所でパワーを取り出すもので、単純に計算しても1.3L/84ps×2で総排気量2.6L/168ps、まぁ気化器的な摩擦ロスなどを考えても150psくらいは期待できるとされ、実際に開発は進められていたようです。

 そして1973年にはプロトタイプが完成していますが、オイルショックのあおりを受けてプロジェクトは結局棚上げとなってしまいました。それでも実質7年間で約4万7800台が生産されていて、ジェットやMS530とは桁違いの量販が記録されています。お洒落で少しだけ大き目なボディに小排気量のエンジン。これがフランスの“粋”なのでしょう。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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