後席のシートベルトを着用していない事故の致死率は一般道で3.3倍
前席の運転席・助手席にくわえて、後席でもシートベルトの着用が義務化されたのは2008年のこと。それからすでに16年が経過したにもかかわらず、相変わらず後部座席に関しては被着用のまま走行しているクルマを頻繁に見かけます。あらためて後席のシートベルトをめぐる法規を確認するとともに、装着していないときに生じるデメリットを解説します。
安全のためにもシートベルトは高速・一般道でも着用する
事故のダメージを軽減してくれるシートベルト。日本では1975年からすべての生産車に前席/後席を問わず設置が義務化された安全装備だ。当初こそ着用が「努力義務」でしかなかったが、1985年には高速道路および自動車専用道路で、1992年には一般道でも装着が義務化された。
対象となるのは運転席と助手席に限られ、後部座席に関しては前と同じ努力義務のまま。しかし後部座席であろうとシートベルトで事故のダメージを抑えられるのは明らかなうえ、後部座席に座っている人が前席の人に衝突して頭部などに重傷を負う可能性を指摘され、2008年6月1日からは後部座席でもシートベルトの着用が前席と同様に義務化されている。
道路交通法の第71条の3第1項を読んでみよう。運転者の着用義務として「自動車(大型自動二輪車及び普通自動二輪車を除く)の運転者は、座席ベルトをしないで自動車を運転してはならない」と明記されており、それに続く第2項では「自動車の運転者は、座席ベルトを着用しない者を運転者席以外の乗車装置に乗車させて自動車を運転してはならない」と、ドライバーが乗車する人すべてに対しシートベルトを着用させる義務を負うのだ。
つまりシートベルトに関する知識がない人を乗せるときも、着用させるのはドライバーの義務であり責任でもあるため、同乗者が違反すればドライバーが罰則を受けることになる。ちなみに後部座席のシートベルトが義務化される以前の調査では、高速道路での着用率は運転席が98.2%で助手席が93%だったが、後部座席になるとわずか12.7%と大きく落ち込んでいたという。
シートベルトを着用していないと十分な保障が受けられない?
このように全席でシートベルトの着用が義務化され16年が経過したにもかかわらず、相変わらず後部座席に関しては被着用のまま走行しているクルマを頻繁に見かける。
話を分かりにくくしているのは一般道路と高速道路で差がある罰則。名称こそどちらも「座席ベルト装着義務違反」だが、前席がすべての道路で減点1が科せられるのに対し、後部座席は高速道路と自動車専用道路のみ減点1で、一般道路では減点がなく口頭による注意のみなのだ。
座席がどこであろうとシートベルトが生命や身体を守ることに変わりはなく、過去に運転席と助手席が努力義務から罰則を伴う義務へと強化されたのと同じく、将来はすべての道路で後部座席のシートベルトを義務化する可能性も十分ある。
違反で減点されるのが嫌だからという後ろ向きな理由ではなく、同乗する家族や友人のためにもシートベルト着用を促してほしい。なお追突されたような自分に過失がない、または少ない事故の被害者であっても、シートベルトを着用しておらず十分な保障が受けられなかった例もあるようだ。後部座席のシートベルトを着用していない事故の致死率は、着用していたときに比べて高速道路がなんと26倍に達し、一般道路でも3.3倍と高い数値になったデータもある。
最後にシートベルトの装着が免除されるケースを紹介したい。まずは妊娠やケガでシートベルトを締め付けるのが適当でないとき、肥満など体型の問題で正しく装着することが困難と判断されるとき。クルマを後退させるときも目視による安全確認がしやすく、スピードも極端に低いため着用しなくとも違反にならない。
高速道路であろうと一般道路であろうと、シートベルトの着用は全部の座席で義務。自分が運転するときは後部座席を含めしっかり確認し、誰かのクルマに乗せてもらうときも着用を忘れずに!