大群衆のファンとともに迎える感動のゴール
ドイツ在住でモータースポーツの取材を精力的に行う池ノ内みどりさん。2025年もヨーロッパ3大耐久レースと言われる、伝統のル・マン24時間レースを取材しています。いよいよ決勝日を迎え、ゴールシーンは初めて観客席で観戦することに。現地の様子をお伝えします。
スリに注意! 30万人の人混みで貴重品管理の工夫
ボンジュール! サヴァ? と毎日あちらこちらで言い続けているおかげで、なんだか夢にも出てくるようになりました。それ以上話し続けられても、何もフランス語を理解できないのがもどかしいところです。
FIA 世界耐久選手権(WEC)2025 第4戦 ル・マン24時間レースの決勝レースがいよいよはじまりました。迫力あるスタートシーンを撮り、しばらくコースサイドでレース観戦をしたり写真を撮り、少し休憩してまたコースサイドへ行く……。それはそれで充実しているのですが、必ずしもずっとコースやピットレーンに出て写真を撮り続けたり、メディアセンターでレースを観続けているわけではありません。常に速報を執筆しているメディアやSNS用の写真や映像を担当している人たちは本当に忙しそうですが、2025年は幸か不幸か私は急ぎの仕事はなく、イベントエリアやショップを見て回ったりと結構楽しく過ごしていました。
しかし、30万人以上のファンが詰めかけるル・マン24時間レースのサーキットは、どこに行っても人混みだらけでスリや紛失の可能性もあります。そこでメディアセンターのコインロッカーに貴重品はすべて預け、基本的にお財布やクレジットカードは持ち歩かずに10ユーロや20ユーロ札1枚をスマートフォンのケースに挟んでいますが、偶然“これ欲しい!”と思った際にはお金が足りないのです。
数キロ先のメディアセンターへ階段を上り下りしながらお金を取りに行くのが非常に面倒くさいので浪費を防いでくれる効果もあるのですが、ファンの方が楽しそうに持っている紙袋がとても気になります。メディアセンター内の仕事仲間の間でも同じような話題になるのですが、色んなところに渦巻く誘惑とどう戦うか(笑)。
ベルギーのとあるジャーナリストは、ル・マンへ来た記念にその年の新しいデザインのTシャツを1枚だけ買い、ほかのものはすべて諦める潔い方もいます。Tシャツ1枚は30ユーロ前後(約5千円)で販売されていて、記念にもなるし実用的だから、とのことです。
初めて観客席で観戦することに
ル・マン24時間レースの決勝レースでは深夜に花火が上がり、レースを盛り上げてくれます。花火の最後に「Merci(ありがとう)」という文字が夜空に浮かび上がるのがとてもほっこりさせてくれます。その後はみなさんが一斉にホテルやキャンプのテント、自宅へ戻るため、サーキット周辺の道路は大渋滞になります。パドックから出口へ向かう徒歩用のトンネルがあるのですが、人が密集しすぎてトンネル内が蒸し暑いという嘘のような本当の話なのです。
一晩中サーキットにいて精力的に取材をすれば良いのですが、体力的にも厳しいため、渋滞が収まったころに宿へ一旦戻り、汗と埃まみれの身体をシャワーで流し、ひと眠りしてから朝に再びサーキットへ向かいました。午後に少しピットレーンへ出てお弁当をメディアセンターで食べた後(この日は簡単にパスタ弁当)、どこでゴールシーンを見るか考えてみたのですが、思い切って観客席でファンのみなさんと一緒に観てみることにしました。
ル・マン24時間レースは長く通っていますが、初めての経験です。スタート時とほぼ同様に満席のグランドスタンドで、ファンのみなさんの熱気がムンムンと伝わってきます。私が座っていたエリアは階段ばかりでエスカレーターやエレベーターは一切ありませんが、杖や介助が必要な高齢のファンの方々も多くいらっしゃいました。
激闘を繰り広げたすべての選手とチームに最大限の称賛を
推しのチームやル・マン24時間レースのTシャツを着てグッズを身に着けたその方々のレースへの情熱たるや……。チェッカーフラッグを受けるマシン1台ずつに大きな声援や拍手を送っていて、私もみなさんと一緒に立ち上がって写真を撮りながら拍手を送りました。

24時間の熱い戦いでした。62台中完走したのは48台で、24時間を走り抜いただけでも素晴らしいのに総合優勝を果たした黄色い83号車のフェラーリ「499P」、そして最後の最後まで諦めずにフェラーリを相手に優勝争いをした6号車のポルシェ「963」を含め、すべての選手とチームの健闘に尊敬の拍手をファンの方々と一緒に送れて、とても良い思い出になりました。

















































































































