「殿、御乱心」 の声が議事録の行間に埋もれた?表向きのEV一本化と捨てきれなかった内燃機関
それでもホンダはアクセルを踏み続けました。社内には懐疑的な声もあったと聞きますが、組織というものは一度方向が決まると、その流れに逆らうのは容易ではありません。
「殿、御乱心」
と、戦国時代なら家臣が小声で囁いたかもしれませんが、現代企業ではそうした声は議事録の行間に埋もれてしまうものです。
興味深いのは、表向きはEV一本槍でありながら、一部の開発現場では内燃機関の研究が続けられていた形跡がうかがえることです。これはまるで、撤退戦を覚悟しながらも弾薬庫を捨てきれない前線部隊のような判断です。あるいは「いつかまたこの武器が必要になる日が来る」と信じていたのかもしれません。
実際、EV化宣言後もホンダのクルマは依然として魅力的でした。アクセルを踏み込んだ瞬間に伝わる鼓動のような加速感や、ステアリング越しに伝わる機械の意思。レーシングドライバーとして数多くのマシンを操ってきた身からすれば、それは単なる移動手段ではなく、生き物と対話するような感覚です。そうした「走りの歓び」は、電気モーターの静けさのなかでも簡単には消えないものだと思います。
全面EV化戦略=スピンの後にどう立て直すか?
赤字は終章ではなくインターバルでどう攻める!?
今回、三部社長は2040年までの全面EV化戦略の見直しを認めました。肝入りだったゼロシリーズの高級SUV開発も凍結されています。失った資金は決して小さくありません。
しかしレースの世界でも、スピンしたあとにどう立て直すかで勝敗は決まります。ウォールに突っ込む前にステアリングを切り戻す。それができたのなら、まだ戦いは終わっていないのです。
100年に一度の変革期とは、地図のないラリーに似ています。誰もが正しいルートを知らない。だから先頭を走る者ほどリスクを背負うことになる。ホンダはそのリスクを真正面から引き受けたとも言えるでしょう。
内燃機関の咆哮が消えるのか、それとも新しい形で蘇るのか。その答えはまだ見えません。ただひとつ確かなのは、ホンダという会社はこれまでも幾度となく崖っぷちから這い上がってきたという事実です。
だから私は、今回の赤字を終章ではなく、インターバルだと思っています。次のスティントで、彼らがどんなタイヤを選び、どんなラインで攻めるのか。その走りを、もう少し見届けてみたいと思うのです。










































