サバンナの派生モデルを始祖に、
世界に冠たるスポーツカーに昇華したRX-7
前回までは「ロータリー・エンジン搭載車ヒストリー 国内編」としてマツダのクルマを3回にわたって紹介してきたが、今回はいよいよロータリー・エンジン搭載車の本命・本流となったスポーツカー「RX-7」シリーズにスポットを当てることにしたい。
先ずは1978年の3月に登場した初代モデル、SA22Cから話を進めて行こう。
マツダの初代RX-7『SA22C型』は当初、サバンナGT、別名サバンナRX-3の後継モデルと捉えられる一面を持っていた。ただしRX-3は、コンパクトカーであるサバンナ・シリーズのトップグレード。
エンジンをベースモデルの10Aから12Aにコンバートし、サスペンションやタイヤなどシャシーのポテンシャルも引き上げられていたものの、ボディ自体は共通の“ハイパフォーマンスな2ドア5座クーペ”でしかなかった。
これに対してSA22C型サバンナRX-7は、2+2座のハッチバッククーペながら、シャシーを基礎から新たに設計した専用モデル。コンパクトなロータリー・エンジンだからこそ可能になったフロントミッドシップ・レイアウトが生み出すドライブフィールはまさにピュアスポーツ。
ロングノーズとショートデッキで、コンパクトなキャビンを挟んだスポーツカールックなエクステリア。そして、現在の標準からするといささかクラシカルに映るのは否定できないが、コスモ・スポーツやファミリア・ロータリークーペから継承したT型ダッシュパネルを持つコクピットも魅力の一つだった。
78年の3月に登場したSA22C型サバンナRX-7は、85年9月にモデルチェンジを受けて次世代に交替するまで、約7年半のモデルライフの中でじつに4度のマイナーチェンジを受けている。
その殆どが12A型ロータリー・エンジンのブラッシュアップ。パフォーマンスデータは一定に保ったまま、排気ガスの浄化を進めるとともに、同時に燃費も引き上げられていった。
だが、最大の変更は83年9月、SA22Cとしては最後のマイナーチェンジだ。
それまで、SA22CではNAで一貫していた12Aユニットに、ターボを装着した12Aターボが追加設定されたのだ。12Aターボ自体は、その前年にルーチェ/コスモ用に登場していたが、SA22C用にはさらにチューニングを進め最高出力もルーチェ/コスモ用の160馬力から165馬力へと5馬力アップ。車重が1トンそこそこのボディには充分すぎるスペックだった。
1979_Mazda RX-7 3-door Hatch-back Coupé Type SA22C
1978年にデビューを果たした初代RX-7(SA22C)は同年からヨーロッパにも輸出が始まっている。
イメージカラーのマッハグリーンに塗られた写真の個体は、ドイツのアウグスブルクにあるマツダ・クラシックカー博物館フライで出逢った1台。同館が収蔵展示するマツダ車やロータリー・エンジン搭載車両のラインナップは世界的に見ても、質・量ともに屈指のレベル。今回は、畏敬の念を込めて、同館の収蔵車両を重点的に紹介しよう。
1983_Mazda RX-7 3-door Hatch-back Coupé Type SA22C
80年に行われた2度目のマイナーチェンジではボディ一体式のウレタン製フロントバンパーや、国産車初となる2重のスモークドレンズを採用したテールライトを採用。ルックスが一新されている。
またロータリー・エンジンのローターをイメージさせるアルミホイールが採用されたことも大きな話題を呼んだ。
1983_Mazda RX-7 Elford Turbo 3-door Hatch-back Coupé Type SA22C
83年のマイナーチェンジを機に、ターボモデルを追加設定。だが当時、日本国内でも海外でもターボチャージャーの人気が高まり、結果的にボルトオン・ターボのキットが数多く登場した。
写真の個体は、Elford Turbo Ltd(ETL)社のキットを組み込んだコンプリートモデル。商品としてのレベルは高い。
1984_Mazda RX-7 Kuwe Cabriolet(2-door Cabriolet) Type SA22C
非常に珍しいSA22Cのオープンモデル。もちろん本家のマツダ製ではなく社外品だが、ドイツでコーチビルダーとして知られた「Küwe社」で製作された。
マツダ・クラシックカー博物館フライで出逢った際には、撮影した後で「あれっ、SAにカブリオレってあったっけ?」と思ったほどに仕上がりは上々。ただし、ベースモデルの2倍近くなるほど高価な価格設定のために限られた台数しか製作されなかった、とのこと。
1984_Mazda RX-7 Turbo 3-door Hatch-back Coupe Type SA22C
先に紹介したElford Turboと異なり、こちらはマツダ純正(?)のターボモデル。
テールから両サイドに回り込んだリアスポイラーは、先に紹介した83年式の個体が装着していたものと似たデザインだが、あちらがサイドに回り込んだスポイラーの先端がBピラー根元近くまで伸びているのに対し、少し短くなっている。