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トヨタがWECに挑戦し続ける理由とは!? ガズー・レーシング友山茂樹プレジデントに直撃インタビュー

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TEXT: 吉田由美(YOSHIDA Yumi)  PHOTO: Auto Messe Web編集部

今年もやってきました!WEC世界耐久選手権第2戦富士

 10月4〜6日に富士スピードウェイで開催されたWEC(世界耐久選手権レース)に行ってきました。トップカテゴリー「LMP1クラス」は、ライバルのアウディやポルシェが次々と参戦をやめ、今や自動車メーカーとしてがっつり参戦しているのはトヨタ・ガズー・レーシングのみ。トヨタはほかのチームに比べるとメーカーで参戦しているため、技術開発やなにやら有利なことは間違いありません。そこでトヨタ自動車の副社長、ガズー・レーシング・カンパニーのプレジデントでもある友山茂樹氏にレース現場のお話を伺いました。

 ひとつのチームが圧倒的な「一人勝ち」ではレースは面白くありません。それを阻み、レースを面白くするために主催者が課してきたのは「ハンディキャップ」という競技システム。今年からトヨタの一人勝ちができないよう(トヨタだけではありませんが)、レースで勝つと次のレースで「サクセス・ハンディキャップ」が加わります。つまり、前戦のシルバーストーンで1-2フィニッシュをしたトヨタ・ガズー・レーシングには、2位の8号車に1秒/1周、優勝した7号車に至っては1.4秒/1周というハンディキャップが課せられてのレースとなったのです。このため、直線での速さはライバルチームに負けてしまうため、ピット作業などを安定して素早く行うなどの対応なども迫られます。

WECでハイブリッド技術を鍛えている

 それではガズー・レーシング・カンパニーの友山茂樹プレジデントにWEC参戦についてお話しをお伺いしましょう。

由美 WECには唯一の自動車メーカー参戦ということで、むしろ「勝たねばならない」というプレッシャーがかかりますよね?

友山 勝たねば、というその時期はもう過ぎました。今シーズンは燃料を絞られているのでラップタイムは遅くなります。ライバルに比べて最高速も20~30km/hも違います。そういうなかでも、今シーズン限りのLMP1クラスに参戦するTS050にとって、最後の富士スピードウェイ(日本戦)なので、よいレースをしたいと思っています。

由美 ちなみに今までで最もプレシャーがかかっていたのはいつですか?

友山 去年の最終戦のル・マンです。24時間だと何が起きるかわかりませんから。たとえクルマを改良したとしても限界があります。まずはレースのオペレーションでミスしない。チャンスを逃さないといったプレッシャーでした。WECシリーズから他の強豪メーカーが抜けたとはいえ、チームはハンディを克服していく過程で強くなっていると思っています。ですので次の新しいトップカテゴリーのレースに期待しています。「LMP1クラス」の次にガズーレーシングで参戦するトップカテゴリーとなるWECの「ハイパーカークラス」には、すでにアストンマーティンをはじめ、数社が参戦に名乗りを上げています。

由美 次はどんなクルマですか?

友山 すでに原型はできています(笑)

由美 ですよね~。まだ内緒ですよね?(笑) ところでトヨタにとってWECはどんなポジションですか?

友山 ライフワークです。WECはトヨタのハイブリッド技術を鍛えてます。トヨタの電動化戦略の要であるハイブリッドをより高い熱効率、信頼性、走行性能、これらを鍛えるのがWECであり、つまりトヨタのライフワークなのです。

由美 なるほど!友山さんは「トヨタ・ガズー・レーシングカンパニー」「コネクティッド」「トヨタ・マリン」など私が注目する分野のトップを担当されていますが、それらを兼任することで「ガズー・レーシング」に応用されていることがあれば教えてください。

友山 まずモータースポーツを通じて、ガズー・レーシングでスポーツ車両の開発を行っています。コネクティッドでITやMaasなど自動車ビジネスの変革を行い、TPS(トヨタ生産方式)でモノ造りや物流を改善します。これらを融合することでクルマ作りを変えようとしているのです。コネクティッドに関してもTPSで、トヨタ独自の強みを発揮できることがわかりました。またトヨタは海や産業用ヘリコプター、バイオテクノロジーの分野の事業も行っています。

由美 え?トヨタは陸、海、宇宙産業は行っていても空はやっていないと思っていましたが、空もあるとは…!

友山 朝日航洋株式会社という会社でコーポレート向けのビジネスジェットやドクターヘリ、建築用の資材の運搬など空の事業を行っているのです。

 

自動運転をする愛馬と操る楽しさがある愛車

由美 それらの中でレースに応用されていることはありますか?

友山 レースをシミュレーションすることです。これはIT技術が入りますが、WECは年間18戦、WRCは全18戦行われます。1回レースに出るたび改善を行いますが、これをコンピュータでシミュレーションを行ってから、シェイクダウンを行うというように開発のリードタイムを大きく短縮しています。

 またこれらはモビリティの開発にも生きてきます。トヨタは大きな会社なので縦割りで、何事も時間がかかります。しかしその中でも無駄な作業を減らすことができ、また少数精鋭のチームで、エンジニアも、シャーシ担当、パワートレーン担当、ボディ担当、制御担当が一体となってクルマ作りを行うことができるようになり、これからのトヨタにとって良い影響となっています。

 またクルマは専門のレーシングドライバーやテストドライバーでテストを行いますが、私も素人代表としてテストに加わっています。そこでブレーキやアクセルの位置を指摘したり、ヒール&トゥがやりにくいなどの声を伝えてます。

由美 素人代表と言いつつ、レベルは高そうですね。ちなみにその時は何名ぐらいで行われますか?

友山 7~8名です。レーシングドライバーをはじめ、社長も加わりますが、むしろ今までなぜそういうことができなかったかが不思議です。レースの世界ではすぐに何かあるとフィードバックしてクルマ作りに生かすのは当たり前のことですが、これまではクルマ作りにそれが生かされていませんでした。そのあたりも変わりました。

由美 この先、トヨタやガズーが目指すことは何ですか?

友山 たとえば2030年に車は社会の中でどんな存在なのか?というビジョンを考えてみます。カーシェア、ライドシェア、自動運転が社会にどれぐらい取り込まれているかを考えてみると、移動用のクルマは自動運転の馬車、しかし個人のクルマはファン・トゥ・ドライブできるようになると思います。つまりコネクティッドは自動運転の馬車、そしてガズーレーシングは愛馬となります。

 たとえば100年前にT型フォードが登場したとき、1000万頭の馬が必要なくなったと言われています。しかし競走馬や馬好きの人のための馬は変わらず必要とされています。スポーツカーは魅力的で楽しいものです。それは自分で運転することができるからです。馬は、操縦する人の意思とは関係なく、たとえば穴が目の前に合ったら自分の意志でそれを避けます。それが愛馬。つまり自動運転とはそういうことだと思います。そこで愛馬と愛車の差別化ができると思います。

由美 なるほど。まさかこんな話から「愛馬」と「愛車」の話になるとは。

友山さん、興味深いお話をありがとうございました。

 WEC富士は、TOYOTA GAZOO Racing8号車 トヨタTS050 ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組)が1位。2位も7号車でトヨタ1-2フィニッシュ。しかも「サクセス・ハンデキャップ」の中、去年より2周も多い232周でのゴールで、トヨタの開発は私たちが思っている以上に頑張って行われているようです。 

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