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「シートが呼吸している」メルセデス・ベンツは長距離乗っても疲れない! その真意は?

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: ダイムラーAG/ウエスタン自動車製作カタログ/妻谷裕二/Auto Messe Web/写真AC

疲れないペダルを踏む角度は120度

 ドライバーズシートに座って、ペダルを踏む最適な角度を見出してみよう。しかし、意外とわからないものだ。メルセデス・ベンツではドライバーの膝の曲がる角度を120度になるよう設計し、疲れないもっともペダルを踏みやすい角度としている。座る面が膝の裏まで長いと「血液の循環」が圧迫され好ましくないからだ。とくにロングドライブの場合、血液の循環は重要である。

ペダルイメージ

 しかし、このメルセデス・ベンツのシート設計の話はすでに古い話かもしれない。現代では、すべてがコンピュータ設計へと進化し、快適で安全性の高い革新技術が開発されている。その意味でもメルセデス・ベンツのシートはエンジニアたちが如何にして人間を中心に設計してきたのか、そして語り継いできたかを言い表している。

メルセデス・ベンツの名句「シャーシはエンジンよりも速く」

 ロングドライブで疲れないのは、シートだけが理由ではない。メルセデス・ベンツのエンジニアたちがつねに心に打ち込んできた名句、「シャーシはエンジンよりも速く」が語り継がれている。つまり、「走る・曲がる・止まる」という自動車の基本性能を永年に亘り研究と開発を重ね、メルセデス・ベンツのエンジニアたちが到達した独自の走行安全設計哲学だ。

走る・曲がる・止まるのテスト風景イメージ

バランスが取れた走行安全性

 メルセデス・ベンツの走行安全性は、ひと言で言えば、「シャーシはエンジンよりも速く」の設計哲学。メルセデス・ベンツがいう高性能車とは、ただ単にエンジンパワーが強すぎてコントロールの難しいクルマではなく、バランスのとれたクルマ。つまり、エンジン性能をフルに発揮し最高速度で走っても、シャーシを構成するサスペンション、ステアリング、ブレーキ、タイヤなどすべての要素は十分余裕を持たせた設計をし、つねに誰にでもコントロールできるクルマであるということを第1条件としている。

ハンドリングのテスト風景

「走る性能・曲がる性能・止まる性能」がそれぞれ確実に効果を発揮するバランスの取れたクルマ、言い換えればクルマと人間がうまくマッチした「トータルセーフティ・ファッション」だ。

 ポルシェには「ポルシェを着る」と言う言葉がある。一度思う存分ポルシェを裸にすれば、目に見えない隠れた所まで美しい仕上げと塗装が入念に施してあると言われている。メルセデス・ベンツは強いて言えば、「メルセデス・ベンツを履く」。ハンドルを握りドライビングしなければ、つまり、履いてみなければメルセデス・ベンツの安全な運転のしやすさは理解できないだろう。「リヤシートに座っているだけでは到底その真価が解らない」。これはベテランのSクラスオーナーの名言だ。

走る・曲がる・止まる性能は誰にでもコントロールできる

 筆者は1972年に見せられたメルセデス・ベンツの「セーフティ・ファースト」というフィルムに、次の印象的なシーンを今も鮮明に記憶している。当時のダイムラー・ベンツ社トレーニング資料で、今となっては貴重な16mmフィルムだ。

フィルムのイメージ

1:1台のメルセデス・ベンツが2車線の道路を高速でぶっ飛んで走ってくる。
2:突然、大型トラックが脇道から飛び出してくる。
3:メルセデス・ベンツはとっさにブレーキを踏み、急ハンドルを切って隣の車線に逃れる。
4:しかし、もう目前には対向車が迫ってきている。
5:正面衝突の危険を避けるために、またしてもハンドルを急に切って元の車線に走り込む。

 メルセデス・ベンツは、この複雑な「走る・曲がる・止まる」操作を腕の良いテストドライバーではなく、誰にでも簡単にコントロールできるよう独自に設計している。

乗用車からバス・トラックまで徹底的に走り込んで開発

 筆者は現役セールス時代、ユーザーからメルセデス・ベンツは「まるでレールの上を走る」ように、思った通り「走り・曲がり・止まる」とよく言われた。つまり、思い描いた通りコーナリングができ、ブレーキは踏力に応じて利き、狙い通りの個所でピタリと停止できる。しかも高速になるほど、足まわりが路面に吸い付き安定すると……。

 そこで、この意味することは何であるかをよく考えると、まずメルセデス・ベンツの足まわりは「シャーシはエンジンよりも速く」の通り、長い伝統と経験を基にその硬さ、ステアリング、ブレーキ、タイヤの選定など「すばらしいバランスで接地性能」を仕上げている。

 とくに、1931年には世界で初めて四輪独立懸架を量産小型車「170モデル」に採用。当時のレース専用技術だった四輪独立懸架がこの小型車に採用された理由は、「乗り心地や安全性がおろそかにされがちな小型車にこそ、新技術を最優先に採用すべきである」というメルセデス・ベンツ設計者たちの強い意志があったからだ。

170

 また、開通当初のアウトバーンを借り切って繰り返し行われた世界最高スピードへの挑戦(1936~1938年)や総合性能力を試す貴重なテストコースとして、この高速アウトバーンがよく活用され、その性能を鍛えた。メルセデス・ベンツが「アウトバーン育ち」と言われる理由でもある。この時代に、メルセデス・ベンツのエンジニアたちは「エンジン性能を上まわるシャーシ性能こそ、スピードと安全の追求に欠かせない」という事実を確信。研究と革新技術の開発を重ねてその名句、「シャーシはエンジンよりも速く」という独自の設計哲学を確立した。

アウトバーンの最高速イメージ

 第2次大戦後、早々にウンタートウルクハイム本社工場内に巨額を投じて総合テストコースを設置。とくに1967年には「高速コーナー90度バンク」を増設し、正に絶壁に沿って走り込んでいくバンク。しかも乗用車やバス・トラックまでテストされ、これがメルセデス・ベンツは総じて高速になればなるほど足まわりがしっかりしている、と言われる理由でもある。さらに、メルセデス・ベンツのエンジニアたちは「コーナリング時はニュートラルに近い弱アンダーステアがもっとも好ましい」と、はっきりと言い切っている。

乗用車からバス・トラックまでテストコースで走り込んで開発

クルマの基本がしっかりしてこそ優秀なシートで快適性が生まれる

 1970年には滑りやすい路面での急ブレーキ時にも、タイヤがロックしないように各輪の制動力を自動的にコントロールするABS(アンチロック・ブレーキングシステム)を開発。

ABSテスト

 1982年には革新的なシャーシとして、13年の歳月をかけてマルチリンク式リヤサスペンションを完成させた。この年に発表された190シリーズに搭載し、まさに革新的な操縦性と快適性を実現。以来、世界の自動車のベンチマークとなっているシャーシ技術だ。

マルチリンクサスペンション

 また最新の走行安全運転支援システムは、メルセデス事故調査の結果から学んだシステム(人間の弱点であるうっかりミスと各個人の技術差を支援)。どんな路面状況においても、タイヤの接地具合、クルマの方向安定性を正確にドライバーに伝えるのがメルセデス・ベンツの足まわりの特徴であると昔から言われている。

 いずれにしても早速、マイカーで試してみてはどうだろうか。しかも、ロングドライブで……。そうすれば、疲れないための秘訣はシートだけでなく、クルマ全体の好バランスにあることがきっとわかるはずだ。

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