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イサム・ノグチがデザインした車があった! 元祖「宇宙船地球号」の「ダイマクション・カー」とは

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: 長尾 循/Auto Messe Web編集部

日系彫刻家イサム・ノグチがデザインに参画

 フラーの考案したダイマクション・カーは、フロント2輪、リヤ1輪の3輪車。車体後部にフォード製のV8エンジンを搭載し、フロントの2輪を駆動するという「リヤエンジン・フロントドライブ車」だ。操舵は駆動を受け持たない後輪1輪で行う。全長約6.1mの大きなボディは空力を意識した流線型で、乗車定員は11人。燃費12.8km/Lで、公称最高速度は190km/hと発表された。

 また、日本のわれわれにとっても興味深いのは、ロサンゼルス生まれの日系アメリカ人彫刻家、イサム・ノグチがボディ・デザインを検討する段階から、このプロジェクトに参画していたこと。戦前から戦後にかけて、アメリカと日本を行き来しつつ世界的に活躍していたアーティストが、同時代の発明家とともに「未来の自動車」のプロジェクトに参加していたとは、なかなか素敵な逸話ではなかろうか。

1932年にイサム・ノグチが製作した石膏スタディ(Photo:F. S. Lincoln)

シカゴ万博に出展するも不幸な事故で幻に終わる

 燃費の向上にも有利な空力特性に優れたボディで、多くの乗員をより早く遠くまで移動させる。ステアする後輪を最大に切れば、自身の全長と同じスペースで旋回できる小回りの良さ。発明家リチャード・バックミンスター・フラーが考案し、日系アメリカ人彫刻家イサム・ノグチもボディ・デザインに関わった未来の自動車「ダイマクション・カー」。

 その1号車は1933年のシカゴ万国博覧会に出品され大きな話題となったが、あろうことか会期中のデモ走行の際に追突事故に巻き込まれ焼失してしまう。また、保守的な銀行家たちはその前衛的なコンセプトを理解しようとせず、量産化の計画も頓挫。ダイマクション・カー・プロジェクトは3台の試作車を作った時点で潰えたのだった。

 ダイマクション・カー・プロジェクトこそ実現しなかったものの、リチャード・バックミンスター・フラーもイサム・ノグチも、その後それぞれの分野で長きにわたって活躍を続けることとなったのだが、それはまた別の物語である。

全長6.1mの11人乗り

 

12
  • リヤにフォード製V8エンジンを積みフロント駆動
  • ダイマクション・カーのビザール製1/43ミニカー
  • 全長6.1mの11人乗り
  • 空力を重視したティアドロップ形のボディ
  • 1932年にイサム・ノグチが製作した石膏スタディ(Photo:F. S. Lincoln)
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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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