輸入車あるあるのトラブル「天井落ち」って何?
近頃は少なくなったようだが、輸入車トラブルのひとつに「天井落ち」がある。国産車ユーザーには「天井が落ちてくるの?」と不安に駆られそうだが、その症状は天井生地(ルーフライニング)が落ちてくるというトラブルであり、応急処置はできてもDIYでの完治が難しいことから、輸入車オーナーたちを悩ませている。筆者は国産車と輸入車を問わず20〜30年前のクルマをこれまで複数台所有していたが、幸い天井落ちのトラブルに見舞われたことがなく、近年では少しずつ減ってきている印象だ。
天井落ちは日本特有の高温多湿の気候が原因か?
天井落ちの原因を探ると、おそらく日本の高温多湿が原因のひとつだと思われる。現在、日本で発売されている輸入車の多くは、世界各地で製造され、さまざまな仕向地で販売されている。なかでも日本の夏は東南アジア並に多湿であり、その影響は大きい。
自動車販売店などで聞いた話を総括すると、最近では少しずつ減ってはいるが天井落ちのトラブルはゼロではないという。もちろん車種や年式、車体色による差はなく、落ちるものは落ちるだろうし、落ちないものは落ちない。また落ち方にも違いがあって、中心部分が弛んでくる場合や車内の前後が剥がれる(弛んでくる)場合など、症状はまちまちだ。ただ、確たるエビデンスはないのだが屋根付きの車庫で保管されている車両については、天井落ちのトラブルは少ないのではないか? とも言われている。
そうなると日本特有の気候(雨量や高温多湿)や保管方法(駐車場)、使われ方がポイントになりそうだ。天井落ちの原因は、長期に渡る高温多湿が加水分解(※ポリウレタンが水分に反応し、分解生成物が得られる反応のことを指し、 H2O〔水分子〕がポリウレタン上でH〔プロトン成分〕とOH〔プロトン成分水酸化物成分〕に分割し、取り込まれることで劣化する)という現象で発生するらしく、ようは湿度が悪さをすることになる。
静粛性を高める吸音材のスポンジ劣化が天井落ちを招く
安価なモデルはさておき、輸入車の多くはボディ外側のルーフと室内の間に吸音効果のためにスポンジ状のクッションが入っており、大雨の際に高架下などで停車して大きな雨粒がルーフを打ち付けてもバタバタと屋根を打つ大きな音が吸収され、走行中の室内を静かに保つ効果がある。試乗していて大きな雨音がした場合には「ここにコストがかけられていないな」と判断できる要因になるのだが、加水分解の劣化でスポンジが劣化することで天井落ちが起こるのだ。
予防策としては、アクリル板をルーフライナーの下に渡す手法がある。これはアクリルの板を湾曲させてはめ込むだけ。スポンジが剥がれるといっても全体が落ちるわけではないので(劣化したスポンジのカスが落ちてくる)、アクリル板ではなくても湾曲させてはめ込める板状のものがあれば、見映えの問題は別にして応急処置としては有効だ。ホームセンターで必要な長さにカットしてもらい、その板をはめ込めば問題解決となる。
ただし、この方法はあくまでも対処療法であり、万が一板が外れて視界を遮るようなことがあれば非常に危険。DIYで補修するか、修理工場などに車両を持ち込んで張り替えを行うことで見映えもよく、新車時のようにきちんと直すこともできる。
また画鋲などで固定する人もいるそうだが、これは止めておいたほうが良いだろう。複数の経験者に話を聞いたところ、天井が落ちるのは接着が弱くなったためではなく、ルーフと天井の間にあるスポンジ状のものがボロボロになって、結果的に天井が落ちるのである。厚みはおおよそ5mmぐらいのものがボロボロになるのだから、画鋲で固定しようとしても暖簾に腕押し状態だ。同様に強力な両面テープを上手く使うこともできるだろうが、その後に本格的な修理を行う場合、手間が増えて工賃が余計に掛かってしまうこともあるので判断には注意が必要だ。