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EVタクシーの現状をドイツ第2の都市「ハンブルク」からお届け…急速充電ステーションの値上げで危惧されることとは?【みどり独乙通信】

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TEXT: 池ノ内みどり(IKENOUCHI Midori)  PHOTO: Aral/池ノ内みどり(IKENOUCHI Midori)

  • ドイツの代表的なタクシーといえばメルセデス・ベンツのEクラスでした。しかしすでにメルセデス・ベンツはタクシー事業からは撤退しています
  • 近所に停まっていた中国のNIOのタクシー
  • 自宅近辺のタクシースタンド。EV充電設備はまだありません
  • 近所のEV充電ステーション
  • ドイツの大手ガソリンスタンドチェーン「Aral」もハンブルク市の未来タクシーに賛同し、協力している

ドイツ第2の都市「ハンブルク」のタクシーはEV普及率が上昇

北ドイツ・ハンブルクは、地球温暖化防止、排ガス削減に精力的に取り組んでいる都市です。EVの助成金を得られる制度などが整っていることもあり、未来タクシーと呼ばれるEVや水素自動車700台あまりが都市を走っています。ハンブルクのタクシー事情について、レポートします。

EVタクシーを補助金制度でお得に購入できる

2025年1月初旬、とあるデンマーク人の元レーシングドライバーの方とのインタビューのために、北ドイツ・ハンブルクへ初めて訪れました。インタビュー後にはハンブルク中央駅近辺のホテルに宿泊し、翌早朝に再び空港へ向かうという短時間のスケジュール。市内の観光はまったくできなかったのがとても残念でした。

ところでハンブルク市のタクシーが、2025年1月からエミッションフリー車だけしか新規登記できなくなったそうなのです。また、8~9席あるような大型車両のタクシーは一般のタクシーより2年の猶予期間があり、2027年からこのルールが適用されるとのこと。ハンブルクは地球温暖化防止、排ガス削減に精力的に取り組んでいて、2023年12月6日にハンブルク議会は気候保護強化法案を可決し、このようなタクシーの規定をドイツの中で最初に政令として開始した都市です。「未来タクシー」と称したEVや水素自動車ですが、2021年に開始した当初はEVタクシーの登記はわずか5台からのスタート。いまや約700台あまりと大成長しました。

現在のハンブルク市で登記されているタクシーは約3000台。その中でEVはすでに約700台にも上り、水素自動車は25台が稼働中とあり、全体の約5分の1がエミッションフリータクシーということです。タクシー会社にはEV補助金が段階的に導入されており、タクシー買い替えを計画中の企業には、早い段階でスイッチするとその分ハンブルク市の補助金を利用して、安く購入できたそうです。

2024年末でその補助金は打ち切られましたが、2024年の1月~9月に新規登記されたハンブルクの新車タクシーはEVが110台、内燃機関は362台で、かなりの数のEVが購入されたことがうかがえますね。しかし、ハンブルク市は新たな助成金制度を開始し、内燃機関からエミッションフリータクシー車への買い替え資金援助制度を打ち出しました。2025年2月1日から申請を開始し、同年11月30日までに認可を受ける必要があります。この制度を利用すれば、最大5000ユーロ(約80万円)の助成金を得られる可能性もあるとのことです。

急速充電ステーションが値上げ……利益の低下を危惧

タクシーEV化に向けて、ハンブルク市内6カ所のタクシー専用充電ステーションの建設用に22万5千ユーロ(約3600万円)の予算を計上し、今後80基まで充電ステーションの増設を予定しており、約3000台分の充電を賄えるようにすることを目標としています。

しかし、これまでは公共の急速充電ステーションでは、1kWhあたり30セント(約49円)で充電することができたのですが、インフラやエネルギー価格の上昇で、現在は50~60セントまで上昇しているようです。民間企業の設置する充電ステーションで充電した場合にはさらに高い料金を支払うことになり、ハンブルクのタクシー運転手組合は利益の低下を危惧しているようです。

ハンブルクからベルリンへの約300kmをタクシーで長距離移動するという需要が高いこともあり、十分に充電の残量が残っていない限りは内燃機関のようには気軽に長距離の大口顧客をその場で受け入れられない可能性も。タクシーの運転手さんにとって、長距離顧客を逃がすのは死活問題になりかねません。

電気自動車の価格は内燃機関車に比べて割高で、さらにタクシー専用に改造する費用も必要となってきますので、タクシー会社や個人タクシーにとってはかなりの痛い出費となります。

このタクシーのEV化で、ハンブルクでは2025年2月1日から乗車料金が4.8%も値上がりとなりました。長距離や病院送迎など、前予約の固定料金には適用されないようです。ハンブルクといえば、ドイツの中でもかなり裕福な方が住んでおられる市でも有名ですので、料金を気にしない方も中にはおられるでしょう。しかし、大概の方がやはり運賃の値上げは厳しいと感じられるのではないでしょうか。

>>>ドイツ在住池ノ内みどりさんのクルマにまつわるコラムはこちら

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  • 池ノ内みどり(IKENOUCHI Midori)
  • 池ノ内みどり(IKENOUCHI Midori)
  • ドイツ ミュンヘン市在住 フリーライター&コーディネーター。東京で学生生活を謳歌した後にオーストリアのザルツブルグで再び学生生活を謳歌し、なんとか卒業。三度目の学生生活を謳歌しにミュンヘン大学入学を機にドイツへ。ミュンヘン大学在学中の現地広告代理店でのアルバイトがきっかけで、モータースポーツに魅せられて大学を中退し、モータースポーツ業界へ飛び込む。愛車のBMW M240iカブリオレを駆り、ヨーロッパ各国のサーキットへ取材に向かう。趣味はアルプスの峠越えドライブと蚤の市めぐり。好きなサーキットはニュルブルクリンクとスパ・フランコルシャン。ヨーロッパ生活はもう少しで30年。
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