精緻極まる金属加工が走りの本能を呼び覚ます
クルマが好き、メカが好き、走るのが好き
エンジニアでありCAE代表でもあるクリスチャン・アウ氏は根っからの走り好きであり、メカ好き。エッセンに生まれ育った彼が、免許を取って最初に乗ったのはオペル・カデット・クーペ。
近くにオペルの工場があり、もっとも身近な存在だったからだ。そのクルマはわずか半年で事故で潰れてしまったが、またすぐに買い直したという。マニュアルギアボックスの操作性を改善すれば、もっと気持ちよく走ることができると考えたのはその頃のことだ。
ひとつのシフターを組み立てるのに必要な部材はなんと70個。作業スペースのツールボックスを開くと、各パートに分類されたパーツがずらりと並んでいた。整理整頓された仕事場から優れた商品は生まれる。
「気持ちいいと感じさせるのは、ハンドルとシフト。このふたつのインターフェイスこそが大事です。シフトノブが動く距離を縦と横で揃え、正方形の中に収まる動きにすることが一番気持ちいい。すべてのウルトラシフターはそのように設計されています」。
秘密は縦軸と横軸の作用点を分けてあること。こうすることで、前後左右の移動距離を揃えることができるのだ。トラス状のボディを組んでハイマウントにしているのは、もちろんその距離を短くするため。
このコンセプト自体は、友人の乗るVWタイプ1用にショートシフターを作った20年前から今に至るまで変わっていないという。
やがてサンデーレーサーたちの間で話題となり、口コミで評判は広がっていった。早い時期からウェブサイトを立ち上げたことで、海外からの注文も入るようになったが、独立したのは2013年のこと。それまでは本業の傍らシフターを作り続けてきた。
「20万キロ走った友人のE46の320dに装着しましたが、そのクルマはそこからさらに20万キロ故障せずに走っています。耐久性でも問題ありませんね」。CNCで丁寧に削り出された70ものパーツを組み上げていく。必要な部材はすべてCAEが拠点を置くエッセン近郊で加工されたもの。顔を突き合わせて部品ひとつひとつを検討し、作り上げていくさまはまさにマイスターそのものだ。
完成品やパーツが並ぶストックヤード。手狭になってこの場所に移ってきて2年。すでにここもスペースが足らなくなってきているようで、ガレージに駐まっていたカデットは売却されてしまうようだ……。
「M2用のウルトラシフターは製品化までに4回作り直しました。今は納得の出来映えです」。改善すべきところを見つけたら、それを解決しなければ気が済まない。そんな職人気質のクリスチャン氏。
使うヒトのことを常に考え、モノにヒトが合わせるのではなく、モノを徹底的にヒトに合わせていく。使うヒトのことを無視しない彼らのモノ作りの姿勢こそがCAEの真髄。ほんのわずか手首を動かしただけで変わるギア。この快感をぜひとも味わって欲しい。
現在のデモカーであり開発車両でもあるM2。HREのホイールやアクラポビッチのエキゾーストなどでスポーティにカスタマイズされている。もちろんウルトラシフター導入済みだ。
CAE RACING
https://cae-racing.com
[リポート:オートファッションimp編集部]