増加する高齢者ドライバー問題!交通インフラの充実化させる転機となるか

増加する高齢者ドライバー問題!交通インフラの充実化させる転機となるか

65歳以上の高齢ドライバーは22.6%と増加中

 アクセルとブレーキの踏み間違えや高速道路での逆走など、このところ高齢者ドライバーによる事故がクローズアップされるようになった。特に死亡事故に占める75歳以上の後期高齢者ドライバーの割合が右肩上がりで増加し続けている。

 我が国が高齢化路線まっしぐらなのは衆知の通り。全免許保有者数は8230万人(平成30年度)だが、65歳以上の高齢者ドライバーは2018年末現在で約1863万人(22.6%)もいる。この中には団塊の世代(1947〜1949年に生まれ合計出生数は約806万人)も含まれ今後70歳以上のドライバーが急増すると予測されている。

 

75歳過ぎの高齢者ドライバーの死亡事故が増加

 日本では自動車の死亡事故自体は減っている。平成初期に1万人を超えていた死亡者数は、飲酒運転の厳罰化等による反響もあって平成29年には3694人と4000人を下まわった。しかし、死亡事故に占める高齢者の割合は増えているのが実情だ。免許人口10万人当たりの死亡事故件数は75歳で増加し始め、80歳から急速に増加する傾向を示している。

 これまで高齢者の事故件数は免許人口が減るため絶対数は多くはなかった。また、高齢者ドライバーはおしなべて安全運転であり、事故件数それ自体は決して多くはなかったのである。しかし、今後75歳以上の後期高齢者ドライバーの総数が増加すると件数も増えると考えるのが自然だ。死亡事故も増加が予想され安全対策は急務となっている。

 

クルマを制御できずに重大化する事故を予防

 高齢者ドライバーの事故はなぜ起きてしまうのだろう。警察庁のデータにみる高齢者特有の事故原因は操作ミスだ。操作ミスは自動車を制御から解放してしまう。アクセルとブレーキの踏み間違えという単純なミスでも、制動と加速ではエネルギーがまったく異なる。ゆえに重大な結果を導いてしまうことにつながっている。

 自動車は誕生以来、その制御を人間の手に委ねてきた。自動車は単純にいえばボディのシャシーにエンジンとギアを載せタイヤとブレーキとステアリングを与えたものに過ぎない。その基本構造は250年間ほとんど変わってこなかった。しかし人間はミスを犯す。交通事故はもはや社会全体の課題であり、より積極的なアクティブ・セイフティ導入へと舵を切る必要があった。コンピュータやAI等の性能向上により、自動車の制御を人間の手から安全運転支援デバイスへと進化させる時代をようやく迎えようとしているのが現在だ。

 

サポカーの推進で社会全体の交通事故を減らす

 こうした高齢者ドライバー問題に国は、政府の交通対策本部を中心に対策を進めてきた。

 75歳だから、80歳だからと年齢で一律に危険因子が増加するかのような論調には疑問も残るだろう。実は高齢者ドライバー対策には警察庁のみならず総務省(通信)、国交省(公共・代替交通)、総務省(地域コミュニティ支援)、厚労省(介護と輸送)、経産省(サポカー)などが取り組んでおり、省庁間に跨がる幅広い社会制度やインフラへの視点も求められているのだ。

 安全運転サポートデバイスはスバルが数年前から投入しているステレオカメラのアイサイトあたりから知られるようになっていったが、こちらはドライビング環境検知に優れ、警告シグナルを発してくれる。

 近年は他デバイスの性能の向上も著しく、各省庁と自動車メーカーが参加し、踏み間違え防止や衝突軽減ブレーキ、車線維持や逆走防止といった事故要因を低減する安全運転サポートデバイスの開発も続けられている。

 これら「サポカー」の推進によって安全運転のスキルが低下していく高齢者を補うことで、社会全体の交通事故を減らしていくことは十分期待できる。

 また、ADAS(先進運転支援システム)というより高次元なサポートシステム開発に官民連携で取り組んでおり、自動運転を視野に入れた協議も行なわれている。これは道路の情報化というインフラ整備とADASの連携により、安全で効率的な交通を実現していこうとするものだ。交通事故は高齢者だけが起こすわけではない。サポカーの推進は社会全体の悲劇の減少に寄与するはずである。

 

EUではビジョン・ゼロという安全対策が進行中

 スウェーデンでは早くから交通問題に熱心で1997年頃から『ビジョン・ゼロ』という安全体系を提唱した。これは、人間はミスを犯すという前提に立ち、安全を運転者の自己責任から社会全体の責任へとした発想の転換に基づいている。道路や交通システム、クルマの安全性といった交通に関わるすべての事業者で責任を持つという安全思想だ。

 このビジョン・ゼロの基本概念はEUの交通政策に採択されている。代表的なものにラウンドアバウト交差点がある。日本でも試験導入され話題になったが、こうした安全思想は国際的に参考にされている。

 交通事故は高齢者だけが起こすわけではなく、非高齢者の事故率も決して低くはない。また安全運転支援デバイスは全車搭載が望ましいことはいうまでもないだろう。有識者会議からは高齢者のサポカー限定免許を検討すべきとの提言も出されたが、すべてのクルマに安全デバイスが義務づけられれば限定する必要性も薄くなっていく。未来の話ではあるが、自動運転車なら免許の必要さえ無くなってしまうのかもしれない。

 日本の高齢者ドライバー問題は、これまでの我が国の交通政策・制度・システムを再考察するチャンスでもある。また高齢者ドライバーの増加は「安全運転・事故減少」という新しい経済市場と捉えることもできる。クルマと人と社会とが利便性を享受し、悲劇をなくす取り組みこそフルスロットルで加速したい。


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