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もはやドライバーも免許も不要? クルマの自動運転はどこまで進化するのか

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: アウディ、BMW、メルセデス・ベンツ、Auto Messe Web編集部

目の不自由な人がクルマで自由に外出できる環境に

 世界の自動車メーカーが、自動運転を目指している。その理由は、安全性の向上であると、各自動車メーカーとも異口同音に語る。しかしそれだけでない効果が期待できる。

 自動運転がどのようなものであるか、クルマの自動運転へ向けた取り組みを5段階に区分けした定義から読み取ることができる。

 国土交通省は、レベル5と呼ばれる水準が最終的な自動運転と位置づけ、「常にシステムがすべての運転操作を実施する」としている。つまり、人はまったく運転に介在しないということだ。その手前に、レベル4があって、「特定の条件においてレベル5の機能を使える」とする。たとえば、限定された地域内や道路条件でのみ、システムによる運転操作を行えるとするものだ。つまり、あらゆる交通状況に対してはまだ万能でないので、自動運転を安全に行える場所だけで使えるようにするという意味である。

 レベル3は、レベル4にやや近く、特定の条件においては自動運転に任せてもいいが、それでも万全ではなく、人がいつでも運転を交代できるように待機していなければならない。

 それ以外の、レベル1~2は、自動運転ではなく運転支援にあたる。ある走行状況においてはクルマが自動的に操作を行える機能は持つが、万全ではないので、人が運転するうえでの補助的な役割を担う。すでに実用化された、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC=車速/車間制御機能)や、車線逸脱防止支援システム(LKAS)、自動ブレーキなどはそれにあたる。これらの運転支援機構が、あらゆる交通の場面で人の手を借りず実行できるようになれば、自動運転に近づいていくことになる。

 レベル1~3は、万一の事故などに対して運転者(人)が責任を負う。レベル4~5では利用中の事故などに対する人の責任は問われない。この点も、自動運転か運転支援かの境を分ける目安になる。

人間のミスが交通事故を誘発する

 交通事故の原因の9割は、人間の不注意や運転操作の失敗によるとされている。自動運転化によってその9割がなくなれば、クルマはより安全な移動手段になる。したがって、世界の自動車メーカーは、交通死亡事故および重傷者がゼロになることを目指しているので、自動運転の実現へ向けて運転支援機能の高度化を進め、消費者の理解も得ながら自動運転を実用化させようとしているのである。

 そしてクルマが人の手を借りずに安全な乗り物になってゆけば、より多くの人々が利用できるようになる。たとえば、運転免許証を返納しなければならない高齢者や、体に障がいを持ち運転免許証を取得できない人たちにも、利用しやすい移動手段となる可能性を持つことになるわけだ。安全向上はもちろんだが、個人の都合で自由に移動することのできるクルマが、はじめて健常者のためだけでなく万人のためになるのである。その意味は大きい。

自動運転で環境負荷を低減

 究極の目標は、目の不自由な人でも一人で外出できる自動運転車両の実現だ。現在のクルマでも、カーナビゲーションに目的地を設定すれば、そこまで案内をしてくれる。途中に渋滞や事故などの情報が入れば、リルートして新たな道順で目的地を目指せるように支援。しかも、音声入力ができる時代であるから、画面へのタッチ操作などしなくても、音声で入力するなら目の不自由な人、あるいは体に障害を持つ人でも目的地を設定できるわけだ。

 こうなると、運転免許証の必要もなくなるだろう。逆に、運転免許証無しでも利用できるものにしていかなければ、本当の自動運転の実現とはいえない。

 さらに、自動運転の実現は、交通の効率化、すなわち迅速な移動の手助けになると考えられる。クルマ同士の位置関係や走行状況が情報網でつながり、互いに認識できるようになると、交差点などの信号を無くし、安全かつ自在にクルマが交差点を通過できるようになるかもしれない。たとえば、スクランブル交差点で人がぶつからずに横断できる様子を想像してほしい。

 これが実現できれば、赤信号によって停車させられることがなくなり、移動のための平均時間を早めることができる。たとえ停止する場面があっても、信号が赤から青へ変わるまで無駄に待つ必要がなくなり、交差する道の交通が空けば走りだせるのである。移動途中の停車時間を減らすことができれば、平均速度が高まる分、早く目的地に到着できる。

 このことは、燃費向上にも効果を生む。クルマは、発進の時にもっとも燃費が悪くなる。理由は、1~2トンもあるようなものを動かすには大きな力がいるからだ。しかし一度動き出してしまえば、少ない力で速度を維持できる。したがって、自動運転の実現は環境にも有効なのでる。

 こういう話には、必ず「運転の楽しみが奪われる」といった声が出てくる。しかしすでに、世界的に人口が増加し、都市の混雑によって渋滞が増える傾向にあるなかで、運転を楽しめる場面は減っている。

 たとえばポルシェは、エクスペリエンスセンターと呼ばれる施設を、ドイツをはじめ世界的に展開しはじめており、日本にも来2021年をめどに開所する予定だ。馬でいえば、乗馬クラブの開設のような話である。

 すでに時代は、世界的に運転を存分には楽しみにくい交通状況になっている。そうしたなかで、健常者だけでなく、高齢者も障害を持つ人も万人が自由に移動できる自動運転の実現は、多くの人に移動の幸福をもたらし、運転を楽しみたい人は乗馬クラブならぬエクスペリエンスセンターで存分に汗を流す時代になっていくのだろう。

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