「乗り降りがラクで便利なクルマ」感覚でOK! 「普通車戻し」も可能なイマドキ福祉車両事情

「乗り降りがラクで便利なクルマ」感覚でOK! 「普通車戻し」も可能なイマドキ福祉車両事情

高齢化社会の福祉車両 地域と期間と値段の模索に

 日本自動車工業会(JAMA)が発表する2019年の統計資料によると、福祉車両の販売台数は過去6年間で約4万4000台という大規模の安定した推移となっている。なかでも軽自動車が特に伸びているが、その背景にあるのは登録車に比べ軽自動車の方が安い、という価格の面もあるだろう。

 社会的背景として高齢化があり、高齢者の人口が増えるなかで家族の介護が必要になって福祉車両を買い求める状況があるはずだ。市場はどう推移していくのだろう。

地域密着バリアフリーの一助へ

 福祉車両といっても機能がいくつかある。たとえば助手席が回転して乗降を補助できるだけでも、力が弱ったり、体がうまく動かせなくなったりした高齢者の助けになる。

 同時にまた元気な高齢者もいる。ダイハツはそうした高齢者向けの新車を開発しようと『地域密着プロジェクト』を立ち上げ販売店や自治体、理学療法士などと協力して、高齢者が乗り降りしやすかったり乗車中に体が安定する手すりを設けたりする研究開発をおこない、その成果を新型タントに採り入れた。

福祉車両の販売台数は大規模で安定しているが高齢者用の対応車両はまだ伸び悩んでいる

 体の柔軟性が衰えてきた高齢者には、軽自動車で人気のスーパーハイトワゴンの室内の高さが有効になる。新車購入時には必要と感じなかった乗降時のステップであっても、販売店であとから付けられる車体構造を新型タントは採り入れている。手すりなども販売店で後から取り付けが可能な純正オプション品を用意した。

 福祉車両には回転シート車、昇降シート車、車椅子移動車があるが、それらをさらに容易に使うため、新型タントのアピールポイントである助手席側のミラクルオープンドアの存在も大きい。前のヒンジドアと後ろのスライドドアとの間の支柱(センターピラー)をなくし、前後のドアを開けると大きな開口部を得られる仕組みだ。

福祉車両の販売台数は大規模で安定しているが高齢者用の対応車両はまだ伸び悩んでいる

 さらにダイハツは福祉車両を試乗体験できるフレンドシップショップの展開を、全国の直販店約720店舗中251店舗で行っている。フレンドシップショップとは店の作りがバリアフリーになっていて、専用駐車スペースのほか車椅子でも店へ入りやすく段差をなくし、バリアフリーのトイレもある。福祉車両取扱士の資格を持つ営業担当者がいる。福祉車両を店内に並べ、試乗を含めた確認を実車でできる。

 今回は手ごろな価格を視野に軽自動車を中心に紹介しているが、登録車ではトヨタが福祉車両を充実させており、近年は日産やホンダも力を入れている。

役割を済ませたのち「普通のクルマ化」へ

 それでも、福祉車両の購入に悩む事例がある。JAMAの販売統計でも福祉車両の販売台数がほぼ安定。伸び悩んでいるのは障害を持つ人や福祉施設などにはある程度行き渡ったが、増加する高齢者にはまだ普及が進んでいない実態があるからだ。

 というのも、高齢者の場合はこの先何年福祉車両が必要になるかわからないという事情がある。寿命をまっとうし亡くなられたら、福祉車両を所有する必要がなくなる。それも何年か利用した後なら中古車として手放せばよいが、短期間で不必要になったらどうするかとの懸念が、介護する側の家族の心情として購入を迷わせる。福祉車両の販売台数は大規模で安定しているが高齢者用の対応車両はまだ伸び悩んでいる

 その心配や懸念を打開するため、トヨタは「福祉車両の普通のクルマ化」という取り組みを行っている。車椅子で乗り込める福祉車両で、その機能が不要になった際に座席を後から取り付けられるよう、一部の車種で新車開発段階から元へ戻せる構造を備えるように設計しているのだ。

 そのうえで中古の福祉車両について通常の中古車販売店で対応しており、ほかの中古車同様、認定車両を設けている。また中古車サイトのGAZOO.comで、福祉車両(約200台)をまとめて検索することも可能だ。
 下取りについては、相場情報をもとに福祉車両の機能ごとに値付けできるようにしている。福祉車両について永年力を注いできたトヨタらしい、体系づくりとなっている。福祉車両の販売台数は大規模で安定しているが高齢者用の対応車両はまだ伸び悩んでいる ダイハツでは新車と中古車を多くの店で併売しており、新車購入と同じように福祉車両についても安心して相談できる。現状1万5000台の中古車在庫のうち、100台が福祉車両という比率であるとのことだ。台数は限られるが、ディーラーの信頼を頼りに探すことができるだろう。

 メーカー以外の街の中古車店でも、福祉車両を得意としているところがある。福祉車両への要望は体の調子によって千差万別であり、そうした個別の期待に応えられるかどうかは豊富な経験が後ろ盾となる。

 いずれにしても、中古車であれば軽自動車か登録車かを問わず、購入の価格差は縮まるのではないか。手に入れる際の資金的負担が少なくなり、もし短期間で手放すことになったとしても、使えた時間の家族の喜びは大きな思い出となるだろう。もちろん、介護する家族の負担も軽減される。

 福祉車両のレンタカーも選択肢としてある。ただし、福祉車両は日々の生活で活かされることが多いだろうから、価格を抑えた福祉車両を所有する方が現実的ではないか。福祉車両の販売台数は大規模で安定しているが高齢者用の対応車両はまだ伸び悩んでいる とはいえ、年に数度の家族旅行などで祖父母など高齢者と一緒の外出であれば、レンタカーは便利なはずだ。その際は、普段扱い慣れない車椅子の積み降ろしや、回転シートなど座席の取り扱いをよく理解して利用する必要がある。

 ことに下肢の不自由な人は足で踏ん張ることができないので、運転するときには加減速やカーブでのハンドル操作を穏やかに、滑らかに行うことを心掛けないと、せっかくのドライブも体を支えるだけで疲れてしまうことになりかねない。

 購入や借り入れだけでなく、乗降や運転のしかたも多少の慣れが介護者には必要になるだろう。

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