ブーム後押しの要因にある「世間の目」
その流れが大きくなるにつれ、先述したハスラーや軽バンからのオーダーだけでなく、ネイキッドのようないわゆる旧モデル、さらにはコペンやアルトワークス、ミライースといった、アゲたスタイルを想像しにくいユーザーからの問い合わせも来たという。「少し前にはとある県の消防署にも納品しましたね」。
ではなぜそこまで「ちょいアゲ」が支持されたのか。そこには「世間の目」が確実にあるという。
「若い頃に本気でシャコタンに乗ってた人って、年取ってもノーマルのクルマに乗るのが嫌なんですよ。ちょっとタイヤとホイール買えようかな、ノーマルよりは車高落としたいな、ってなる。かといって車高調入れてまで本気になる気もほどでもない。じゃあ中途半端に2〜3センチ落ちてるなら、アガってた方がおしゃれなんじゃないかな、って。車高の低いクルマって、変な緊張感があって疲れるんですよ(笑)」。
「あと…これをメーカー側の自分が言うのもどうかと思いますけど、自分の歳くらいになって買った軽自動車をゴリゴリの『どシャコタン』にして、それを同級生に見られた時……なんていうか、恥ずかしいというか、やっぱり痛い感じが少なからずします(笑)。世間体が悪いというか。でもそれがアゲだと、不思議とオシャレなクルマ乗ってます、っていう感じになるんです」。
確かに車高短はどうしてもワルっぽいイメージがあり、そこがまた魅力ではあるのだが、年齢を重ねると共に仕事や周囲の環境にそぐわなくなることも多い。
「リフトアップ車ってトゲトゲしくないから、一般の人から見ても抵抗感が少ないんだと思う。不良っぽいタイプのドレスアップカーとはまた違って、やり方によってはちょっとオシャレな感じに見えると思うんですよ。ウチなんかでも車高短のデモカー撮影している時と、ちょいアゲのデモカー撮影の時だと、周囲の人の視線が確実に違いますからね(笑)」。
足まわりだけでそれっぽく見える手軽さも魅力
アゲブームのもう一つの理由は、その手軽さにもあるのではないかと前出の川原サンは言う。
「少しだけ車高を上げて、タイヤ&ホイールを変えるだけで雰囲気が出る。そこからキャリアを付けたり、シートカバーを付けたりっていうプラスαで十分楽しめるから、無理せずドレスアップが出来るんです。しかも車高短にしてピョンピョン跳ねて、しかも行ける場所が限られるようだと家族からもクレームがつきますが、ちょいアゲならそこもほぼ問題ない。お小遣いの範囲で出来るから、結婚している人でも出来ちゃうと思います」。
足まわりだけで完成する仕様だからこそ、タイヤ選びは重要なポイントとなる。4WD系の「ボコタイヤ」が主流だが、あえてラジアルタイヤにしたり、ホワイトリボンやホワイトレターといった選択肢もある。少し前まではサイズ的に限りがあったのだが、トーヨーや横浜ゴムといった主要メーカーからも軽自動車用サイズの4WDタイヤがリリースされ、色々選べるようになったのもブームへの追い風となっている。
車高短同様、どうせやるならとことん上げたいという人もいるだろうが、同社が推奨するのは、あくまで車検対応内で出来る「ちょいアゲ」。
「もちろんもっと上げたいという問い合わせは頂きますが、うちはあくまでも純正ショックのストローク量で賄える範囲で、構造変更もいらない範囲でのリフトアップを提案しています。それ以上になると、敷居もグッと上がるし、それはプロショップさんの仕事になってくると思うので。ダウンサスでローダウンするのと同じぐらいの感覚で、オシャレに楽しめる。そのぐらいの『ちょいアゲ』がオススメです」。