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オヤジ世代むせび泣き! 乗ってわかった幻のロータリースーパーカー「マツダRX500」の真実

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了、日本自動車工業会

マツダのお家芸「ロータリーエンジン」とそれを支える足の中身

 それではRX500の基本パッケージをボディから見ていきましょう。ミッドシップにエンジンをマウントするプロトタイプカーらしく、フレームは鋼管で組まれたスペースフレーム。コックピットの両サイドには幅広いサイドシルが設けられています。アルミモノコックならばツインチューブで剛性を確保するのですが、鋼管スペースフレームではこのように太く(幅広く)なるのは仕方なかったのでしょう。例えるならメルセデス・ベンツの300SLがそうだったように。

 それもあって左右のドアはフロントバルクヘッドの上部と、フロントウインドウ上部の2か所にヒンジを持ったバタフライドアとなっています。これもスーパーカーには必要な演出となっていました。

 ミッドシップに搭載されるパワーユニットはマツダお得意のロータリー・エンジン(RE)で、公式的には初代カペラ用に開発された573cc×2ローター(=1146cc)の12Aを搭載していると発表されていましたが、実際にはレース用に開発されたペリフェラルポートを持つ、491cc×2ローター(=982cc)の10Aが搭載されていました。このREと組み合わされるトランスアクスル(ミッション一体式デフ)は、マツダ初の前輪駆動車となったルーチェ・ロータリークーペのフロントアクスルを転用搭載していました。

 言ってみればこれはフィアットがX1/9で実践した前輪駆動のパワーユニットを、そのままミッドシップに移植するというコンセプトに通じる手法でしたが、フィアットX1/9が直4エンジンを横置きマウントしたフィアット128のパワーユニットをトランスアクスルごと移植して製作、結果的にエンジンが横置きであるのに対して、ルーチェ・ロータリークーペはエンジンを縦置きにマウントしており、そのユニットを流用したRX500も当然ながらエンジン縦置きのパッケージとなっています。 サスペンションは前後ともにダブルウィッシュボーン式が採用されています。一般的な乗用車と違い、フロントに5.10/950-15、リヤには5.50/10.80-15という、きわめて幅広いレーシングタイヤを装着しているため、ジオメトリーの設計に自由度の高いダブルウィッシュボーンが選ばれたのでしょう。

 もう少し詳しく紹介するなら、フロントが上下ともに変形Iアームとトレーリングアームを組み合わせたAアーム式で、リヤはアッパーのIアームとロアの逆Aアームを上下2本のラジアスロッドで引っ張るスタイルで、当時のレーシングカーの世界では“ブラバム式”と呼ばれたコンベンショルなデザインを採用していました。ブレーキは4輪ともにディスク式でローターはベンチレーテッドでキャリパーは対向4ポットが奢られていました。この辺りもスーパーカーと呼ぶに相応しいスペックとなっています。

スーパーカーたるべきボディデザインとサイズ

 ボディデザインは3種類のスタイリングが提案されたと伝えられています。その3つとは(1)グランツーリスモ(2)レーシングマシン(3)ロードスポーツクーペで、風洞試験を効率よく繰り返すため、クレイでできたスケールモデルのボディ後半部分は3つのユニットに交換が可能になっていたようです。結果的にグランツーリスモのデザインが選ばれてモーターショーに向けて制作されました。

 このプランが選ばれた理由は空力的に優れていたから。最高速度250km/hを実現するためにはCd値(空気抵抗係数)は無視できません。そこでボディ後半部のマスを稼ぎ、リヤエンドでスパッと切り落とす手法が用いられました。当初は0.312だったCd値は0.11にまで改善されたと言われています。

 その背の高いリヤのエンジンフードは、デ・トマソ・マングスタのように“背骨”をヒンジにしてガルウィング式に開くことができました。エンジンフードが高いところについていることに加えて、そもそもロータリー・エンジンそのものがコンパクトに仕上がっているので、エンジンルームのスペースには十分すぎるほどの余裕があります。前後方向に少し延ばすと3ローターや4ローターのマルチロータリーだって積み込むことは可能です。

 RX500のボディサイズについても触れておきましょう。1970年の東京モーターショーに展示された際に発表されたスペックは僅かで、全長×全幅×全高のスリーサイズが、それぞれ4330mm×1720mm×1065mmでホイールベースは2450mm。車両重量が850kgというから初代RX-7(サバンナSA22C)と比べても、全長と全幅を一回り大柄にした程度で、全高は約20cm低く(!)、車両重量は約150kg軽く(!!)仕上がっていました。

 だから現在のレベルで考えると充分にコンパクトだと思えるのですが、そもそもは初代コスモスポーツ(スリーサイズは4140mm×1595mm×1165mmでホイールベースは2200mm)の後継として考えられていましたから、あまりにも大きすぎると判断されることになったのです。

 ちなみに、長い間国産モデルで最上級とされてきたトヨタのクラウン(当時は3代目のS50系)もこの時代には“5ナンバー枠”に縛られていて全幅は1690mmでしたから、RX500の全幅1720mmという数字は、時代背景からしても大きすぎたのかもしれません。

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