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「ディーノ」が7500万円! フランス女優が愛した美しすぎる「246GTS」とは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2022 Courtesy of RM Sotheby's

フランスの国民的女優が秘蔵したディーノ

 2022年5月24日、F1モナコGPコースの「ポルティエ」コーナーからほど近い大型の見本市会場、グリマルディ・フォーラムを舞台として開催された「MONACO」オークションに出品されたディーノ246GTSは、1973年型のアメリカ仕様車。

 主に北米市場向けのオプションだったという「デイトナスタイル」の本革シートと幅広のホイールアーチを与えられ、246GTSでは望ましいとされる「チェア&フレア(Chairs and Flares’)」仕様の一台である。

 1973年5月に工場で完成したこの車両は、新車時から「ロッソ・コルドバ」と名づけられた濃いワインレッドで仕上げられていた。このボディカラーは非常に珍しいもので、すべてのディーノ246GTおよびGTSの中でも、新車時からこのカラーでオーダーされたのは約50台に過ぎないという。

 また、これも新車時からエアコンやパワーウィンドウなどの装備が充実しており、マグネシウム製のカンパニョーロ社製ワイドホイールに14インチのタイヤが当初からオプション装着されていた。ちなみに「フレア」フェンダーは、このホイール+タイヤを納めるためのものである。

 マラネッロ工場での完成後、ウィリアム・F・ハラーの経営する西海岸におけるフェラーリ輸入代理店、ネバダ州リノの「モダンクラシック・モーターズ」社がアメリカ合衆国に輸入。カリフォルニア州ロサンゼルスに住むファーストオーナーに引き取られた。

 フェラーリの世界的権威であるマルセル・マッシーニ氏の調査によると、この246GTSはアメリカ国内でさらに3人の所有者のもとを渡り歩いたのち、1994年ごろにヨーロッパへと帰還。モナコのディーラーから、売りに出されたとされる。

 そして、フランスのスーパーモデルにして国民的女優とも称されるレティシア・カスタ氏の署名入り申告書により、このディーノ246GTSの所有権が2006年1月から2017年3月の間には、彼女のもとにあったことが証明されている。

 面白いことに、レティシアは運転免許を取得していないため、このディーノを一度も運転したことがないとのこと。ディーノの流れるような曲線としなやかなデザインに惹かれて、ただ身近な場所に置きたくて購入したと考えられているようだ。

 それでもこの間、2012年から2018年までの請求書が残っていることから、フランス・パリ近郊の「ミシェル・メルシエ・オトモビル」社で保管・管理されていたものと推測。この間、ボディおよびメカニカルパートに大規模な改修が行われたことが判明しており、今回の出品に際しては、前述のドキュメントともにワークショップでの様子を撮影したフォトアルバムも添付されていた。

相場よりも高額なプライスで落札

 そして5月24日に執り行われた競売では、53万9375ユーロ(邦貨換算約7500万円)で落札されたのだが、この落札価格は近年5000~6000万円くらいで取り引きされる事例の多いディーノ246GTSとしては、かなりお高めである。

 希少なカラーリングとオプション装備が新車時代から維持されていること。ラインオフ以来、現在に至るヒストリーが判明・証明されていることも重要な要素である。

 しかしとりわけ大きな理由として挙げるべきは、日本での知名度こそ高くないものの、フランスでは国民的な人気を誇る女優が10年以上にわたって所蔵していた車が、フランスに隣接するモナコで競売にかけられたことだったに違いない。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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